女子トイレ盗撮の書記長除名 共産党県委に聞く

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 駅の女子トイレで盗撮したとして逮捕された日本共産党千葉県委員会書記長の大西航(わたる)容疑者(42)が1月13日、除名処分とされた。同日午後6時に開催された党千葉県委員会の総会で決定されたもの。任命責任が曖昧、処分が早すぎるなど、様々な疑問が残る決着は党の粛清体質、トカゲのしっぽ切り体質を思わせるものとなった。処分に関する問題点を中心に同党千葉県委員会に聞いた。

■逮捕翌日に最も重い除名処分

写真はイメージ

 共産党千葉県委員会の大西航書記長は12日に建造物侵入と県迷惑防止条例違反(盗撮)容疑で逮捕された。逮捕容疑は「2022年10月23日、千葉市中央区のJR西千葉駅の女子トイレに侵入し、個室の上から10代の女子高校生をスマートフォンで盗撮したとしている。」(毎日新聞電子版・駅の女子トイレで盗撮容疑 日本共産党県役員を逮捕 千葉、2023年1月14日閲覧)というもので、大西書記長は容疑を認めていると各メディアで報じられている。

 逮捕のきっかけは、「昨年11月21日にJR千葉駅で女性の後ろ姿を盗撮したところを目撃者に110番通報された。」ことであるとされ、「そこでスマートフォンから今回の事件の動画が見つかり、被害者の特定などを経て逮捕に至ったという。」(産経新聞電子版・盗撮容疑で共産党千葉県委幹部を逮捕 過去に衆院選出馬、2023年1月14日閲覧)と報じられた。

 これを受け、逮捕翌日の13日に千葉県委員会は最も重い処分である除名としたことを発表した。当然の措置とはいえ、刑事事件は推定無罪の原則があることから、起訴前に有罪であることを前提の処分とするのは人権を軽視しているのではないかという疑問が残る。また、政権与党の不祥事には任命責任を叫ぶ同党が任命責任には一切触れていない点も、国民への説明はもちろん、被害者の心情を考えれば釈然としないと感じる人は少なくないはず。

 そうした点について処分者である千葉県委員会に直接、電話で取材した。

■いかなる処分も受け入れる

 千葉県委員会に電話をかけ、取材の趣旨を伝えると担当者が応答してくれた。

松田:大西航書記長について、逮捕翌日に除名処分といういことで、随分と処分が早いと感じましたが、その点について県委員会としてはどのようなお考えなのでしょうか

担当者:早いということは機敏に対応したということです。ことがことで、共産党が政策として打ち出しているものに、真っ向反対の事件を起こしている、と。痴漢撲滅とかジェンダー平等などを実現していくとか運動している経緯がある中、今回、幹部が盗撮するなどという、あってはならない事件が起きたということに鑑みて、(その上、)盗撮の内容が警察等の調べで証拠となるものが押さえられていて、本人も「事実である」、「やりました」と認めているわけです。本人は勾留中なのでそれ以上聞き取れていませんが、弁護士を通して接見し、その結果、本人が事実と認めています。ですからやったことは間違いないと判断できるので、直ちに処分する必要があるということです。

松田:抗議などは寄せられてますか

担当者:皆さんから、お叱りの電話をたくさんいただいています。そういう点からも今回の事態に対して、早急に対応しました。本人が事実を認めていない場合は簡単には処分はできないのですが、事実を認めた以上、党としてはこれは許せない行為、党だけでなく国民にとっても許されない行為ですから、それは党として早く対応をすることは必要だと思います。

松田:本人(大西容疑者)は除名されることは分かっているのでしょうか

担当者:(具体的な処分として)除名となることは分かっていないかもしれませんが「いかなる処分を受けることについても、了解せざるを得ないです」ということは言っています。

■任命責任はどこに? 曖昧な責任の所在

大西航容疑者(2017年総選挙立候補時のポスターから)

 ここで問題になるのは、本人を除名したのはいいが、任命責任について一切、明らかにされていない点である。岸田内閣で閣僚の不祥事が続いた時には、同党の志位委員長は任命権者としての首相の責任を強く求めていた。ところが、共産党では刑事事件の被疑者として逮捕されたにもかかわらず、誰も任命責任を全うしようとしていない。それは個人に責任を押し付け、蜥蜴のしっぽ切りで事態を乗り切ろうとしているように見える。

 まず、党千葉県委員会の書記長を決めるのは誰かという点について聞くと、複雑であるが、概ね以下のような説明であった。

 県党会議を招集し、投票で役員を決定する。選出された役員の中で、互選で県委員を決め、さらに互選で県常任委員を決定する。県常任委員の中から委員長、副委員長、書記長など指導部を選出するというシステム。他党に多い委員長などのトップが書記長を任命するシステムとは異なる。そして、その結果が県党会議(党大会)で承認されるという。

松田:大西書記長の任命責任についてはどう考えますか

担当者:集団で選んでますので、他党は任命責任は委員長(トップ)となりますが、共産党の場合は委員長が決めるわけではありません。委員長が常任委員に「この人事でどうでしょうか」と諮って採決で決めます。ですから、指名責任はというと、常任委員会です。

松田:それでは常任委員会が責任を取るということはないのでしょうか

担当者:それはないですね。やった行為自体は本人の問題ですから、本人を処分すると。で、なぜ、そういうことが防げなかったのか、なぜそういう事態が起きたのかということについては私たちも反省すべきところだし、今後、起きないようにどうすればよいかということは当然、分析が必要ですが、だからといって書記長が不祥事を起こしたから委員長は責任をとってということは、共産党はなりませんね、認定の仕組みから言っても。

 幹部を選出する過程で任命責任を個人が負うシステムになっていないから、任命責任は問われないと言いたいようである。逆に言えば、任命責任が問われないように、トップを守るために責任の所在を曖昧にしていると言えないか。責任の所在がはっきりしないシステムを作り上げているということは、不祥事を起こし「被害者に真摯に謝罪する」「二度とこのようなことを起こさないと担保する」人はいないということになる。

 トップは権限を有するものの責任は負わなくていいという組織が、モラルハザードに陥るのは自明。共産党に国民の支持が広がらないのは、そうした無責任体質による部分が大きいと思われるが、そのような意識はないのかもしれない。

■一刻も早く大西問題を…

国会議員団と地方組織は別という認識

 大西書記長が除名された13日、奇しくも日本共産党国会議員団が政府に対して「受験生をねらった痴漢の加害防止と被害救済の強化に関する申し入れ」を行なっている(しんぶん赤旗電子版・「受験生をねらった痴漢の加害防止と被害救済の強化に関する申し入れ」、2023年1月14日閲覧)。

 これは受験生がわいせつ事件の被害に遭っても試験に遅れるわけにはいかないため、電車などでわいせつ行為が横行することを防ぐことが目的である。

松田:処分をした同じ日に、「受験生をねらった痴漢の加害防止と被害救済の強化に関する申し入れ」をされていますが、…

担当者:処分は千葉県委員会の独自の対応によるものですから、国会議員団がやっている活動と付合させながらやっているわけではありませんので、たまたま一致したということだと思います。我々が今、言ったような責任上、一刻も早く大西問題というのは党としての対応を発表する必要があるという判断で、早期処分をしたということです。

 党員をわいせつ行為をしたとして処分しながら、同時に「痴漢の被害をなくすように努力しろ」と政府に申し入れるのは悪い冗談としか思えない。政府が何と答えたのか分からないが「まず、共産党がそうした行為をやめろ」と言われても仕方がない。多くの市民は「共産党は今後、痴漢をしませんと約束するのが先で、その後に痴漢をなくすと申し入れしたらどうだ」と考えるのではないか。

 話を聞くと被害者に対する真摯な謝罪の言葉はなく、ツイッターでは被害者と家族に深くお詫びとしているが(日本共産党千葉県委員会・2023年1月13日21時10分投稿)、党としてどこまで女性の被害に思いが至っているのか分からない。党としてのメンツや政策の遂行のために、都合の悪い人間を粛清した、それ以上でも以下でもないように思える。共産党の支持が広がらない原因の一端が、そこにあるように思えてならない。

"女子トイレ盗撮の書記長除名 共産党県委に聞く"に2件のコメントがあります

  1. 匿名 より:

    「国民への説明はもちろん、被害者の心情を考えれば釈然としないと感じる人は少なくないはず。」
    まさに記事にある通りに感じています。

    常日頃、なにかにつけ「説明責任」「任命責任」といったものを政治・政府に追及すると断言し実行しているはずの共産党が、いざ己が追及される側になるとこのような体たらくになるようでは、その言動は軽く薄く、虚しく響くだけでしょう。

    いま現在、国民の耳目を大いに集めている、NPOを利用した公金横領、及び一度成されれば他者には決して干渉されず認知もされないような極めて悪質な全国規模の公金横領システム展開の企てという疑義についても同様です。

    現状判明してきている情報を鑑みれば、不要とはとても思えない「積極的な説明」を一切行わないどころか、各情報の主要な発信源に対して一方的かつ高圧的な、恫喝ともとれるような接触や働きかけとしか思えない直接的・間接的言動を繰り返しているとされるような有様です。

    結局のところ、共産党は共産党。
    己が不可侵のルールそのものであり、日本の金と権力の全てを掌握し、これまで存続してきた日本社会を破壊することによって己の王朝を打ち立てたいだけ。
    日本国民にはそのようにしか思われないのではないでしょうか。

  2. 匿名 より:

    今後、共産党が「任命責任」と追求した場合、国民が選挙で選んだ議員なので、任命責任は「国民」にありますで 解決するのでは?

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