妊産婦への支援 決着は保険適用化+現金給付へ
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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分娩費用の保険適用化問題は、保険適用と同時に現金給付も実施することで最終的な決着となる見通しが示された。26日に厚生労働省の社会保障審議会は「議論の整理」を公表。「新たな給付体系において、分娩1件当たりの基本単価とは別に、全ての妊婦を対象とした現金給付を設けることが適当である。」と明記した。
◾️保険適用化+現金給付
発表された議論の整理においては、以下の点が示された。重要な点を抜粋する。
★保険適用化:現行の出産育児一時金に代えて、保険診療以外の分娩対応に要する費用について、全国一律の水準で保険者から分娩取扱施設に対して直接支給することにより、現物給付化を図るべきである。
★妊婦の負担ゼロ:出産独自の給付類型を設けた上で、妊婦に負担を求めず、設定した費用の10割を保険給付とするべきである。
★施設の体制・役割により加算:分娩1件当たりの基本単価を国が設定した上で、手厚い人員体制を講じている場合やハイリスク妊婦を積極的に受け入れる体制を整備している場合など、施設の体制・役割等を評価して基本単価に加算を設けることが適当である。
★新たな現金給付:新たな給付体系において、分娩1件当たりの基本単価とは別に、全ての妊婦を対象とした現金給付を設けることが適当である。
★新給付体系への移行時期:当分の間、施設単位で現行の出産育児一時金の仕組みも併存し、可能な施設から新制度に移行していくことが適当である(以上、厚生労働省・社会保障審議会医療保険部会における議論の整理)。
従来の現金給付(出産育児一時金=現行50万円)から、保険適用による現物給付の新給付体系へと移行するが、新たな現金給付を加えたことで旧給付体系の利点も引き継ぐことになる。これは帝王切開する場合や個室利用などの場合には妊産婦の自己負担が発生するため、その軽減が目的とされる。
また、施設の体制・役割による加算をすべきとしており、このことで一律になる保険料給付によって構造的に赤字が予想される手厚い人員体制を講じている施設などを救済を意図した措置といえる。
そして、新給付体系は可能な施設から移行していくことになり、当分の間は現行制度の仕組みと併存することになる。実施は2027年度からと見られる。
◾️そもそもの目的は少子化対策
今後は、現金給付の額に注目が集まる。もっとも従来の出産育児一時金でカバーされていた部分の多くを現物給付化するため、現行の出産育児一時金の50万円からは大幅な減少が予想される。
議論の整理を見ると現金給付を一部とはいえ維持し、また可能な施設から移行、施設によって加算をするなどの措置をとる見通し。それだけ配慮するのであれば、そもそも新体系に移行する必要があるのか、現金給付額を通常の物価水準の上昇に合わせて自動的に上昇させるシステムでも妊産婦の負担は軽減できたのではないかという疑問が残る。
また、妊産婦の支援のための給付体系移行という趣旨は理解できても、分娩費用の保険適用化はそもそも岸田内閣で閣議決定されたもので、その目的は少子化対策にあった(こども未来戦略 2023年、p15)。しかし、11回行われた「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」では、保険適用化が少子化対策になる理由、データは一度も示されなかった。
妊産婦の負担を減らすことは少子化対策にはマイナスにならないことは確かであるが、直ちに出生率上昇、少子化解消に寄与するかまでは見通せない。仮に新給付体系導入で地域の周産期医療体制が先細りになった場合、「お産難民」の誕生等で、結果として出生率のさらなる低下に繋がらないとは言えない。
その点、議論の整理の中で「地域の周産期医療提供体制の確保を前提としつつ、」と明記されているが、その点を重視するなら、給付体系を変えるリスクを負う必要があるのかというのは多くの関係者が抱く疑問であろう。
結局、閣議決定されたために「できません」とは言えず、現場の反対を押し切って保険適用化を実現したものの、現場の反発を抑えるために様々な留保をつけたように見えてしまう。
◾️周産期医療体制の維持
出産費用の保険適用化については「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」で議論が重ねられ、さらに社会保障審議会でも議論が続けられた。保険適用化に反対する日本産婦人科医会、日本産科婦人科学会と、あくまでも導入を目指す健康保険組合連合会や連合(日本労働組合総連合会)の意見が対立していた。
双方の接点が見出せないまま暗礁に乗り上げた形になっていたが、12月4日の社会保障審議会で厚労省は分娩費用の保険適用化を提案。さらに12日の同審議会では妊婦本人に対する現金給付を提案していた。
今後は新たな体系での現金給付の具体的な金額や、手厚い人員体制を講じている施設などへの加算がどの程度になるかが焦点となるとみられる。そのことは、当然、世界で最も安全とされる日本の地域の周産期医療体制が揺らがないことが前提となる。







