朝日新聞記者の日記が炎上 隔離目的? ”鎖国”直前の台湾入国の非常識

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 朝日新聞の記者(編集委員)がSNS上で公開している日記が炎上している。台湾政府は3月19日午前0時から原則入国禁止措置としたが、同紙の編集委員が禁止措置の直前の18日に台北に滑り込み。緊張が高まっている現地でホテルに隔離された日々の様子を暢気にレポートし、台湾在住日本人と思われる人々から非難のコメントが複数寄せられている。

■台湾で4月に取材を予定 Skypeでいいのでは?

炎上した「台湾隔離日記」(右)

 問題となっているのはFacebookの朝日新聞アジア・太平洋のアカウント上で連載形式で展開している「台湾『隔離』日記」。執筆しているのは同社の吉岡桂子編集委員で、ツイッター上のプロフィールには編集委員としてバンコクを拠点に日本と中国をウオッチしているとされている。

 「台湾『隔離』日記」の第1回には、台北を訪れる理由が記されている。それによると、同編集委員は当初から台湾で4月に取材を予定していたという。

 しかし、3月17日午後になって台湾政府が19日午前0時から外国人の入境(入国)を原則として禁止する措置を発表。同日以降は事実上の鎖国状態となるため、ビザ免除の最後の1日である3月18日に、到着後14日間の隔離を受け入国することとした。台北到着後、空港を離れるまでの一連の手続きと隔離の日々について「台湾『隔離』日記」で書くこととしたと説明している

 そもそも、4月に取材というが、台湾が鎖国状態にするこの緊急時に行わなければならないのか疑問が残る。今の時代であればSkypeなどを使えば十分に取材が可能であり、取材相手と「今は入国が難しいから、それでお願いします」と言えば済む話である。

■台北まで大好きな俳優が出る映画を観た情報は必要?

 「今、なぜ、台湾?」というユーザー・読者の疑問を残したまま、同編集委員は隔離日記を書き進める。必然性が感じられないまま、その内容は不必要な個人情報を記載するなど、必要な仕事に向かうものとは思えないものになっている。例を挙げると、以下のようなもの。

・とりあえずパソコン2台と書きかけの原稿の資料や着替え、冷蔵庫にあったふりかけや塩昆布などを大小のトランクに詰め込みました。(バンコクの住居を出る際の記述)

・11時すぎに出発し、3時間半。大好きなシャーリーズ・セロンが出演する米国映画「スキャンダル(Bombshell)」を見終わったころ、台湾・桃園空港に到着しました。(バンコクから台北へのフライトに関する記述)

 このような情報はユーザーには不必要であるのは明らか。しかも、台湾政府が国を挙げて防疫体制を強化してウイルスの侵入を防ごうとしている緊迫した状況に入ることを楽しむかのようなイメージを与えかねない。実際、楽しんでいるのだと思うが。

■批判コメント殺到「日本人としてとても恥ずかしい」

台湾在住の人々の声は厳しい(葛西健二氏提供写真)

 この内容に対して、フェイスブックはもちろん、吉岡編集委員のツイッターにも台湾在住日本人と思える人たちから厳しいコメントが並んだ。一部を紹介しよう。

 ★取材のためだか何だか知りませんが結局自己都合でしょう。このタイミングで台湾に来るのは台湾に迷惑を掛けることになるとは思わないのですか。

 ★他国の防疫資源を使って隔離体験してネタにするとか、貴社所属ジャーナリストみんなこんなレベルの人間ですか?

 ★台湾が防疫にどれだけの努力をして、国民を守っているのか、全く理解していませんね。同じ日本人としてとても恥ずかしい。

 ★…こんな緊急事態で世界中が混乱している時に何やってるんでしょう??…台灣は経済的にも政治的にも今回の件で大打撃を追い、島国で、独立も認められていない中で自分たちで必死に身を守ろうとしているんですよ。長期戦の序盤の状況で首突っ込んで隔離日記?を書こうとしたっていうのは、あまりにも浅はかですね。恥ずかしいと思ったほうがいいですよ。

■「隔離のために来たのではない」と釈明

 同編集委員は批判のコメントが多いことを意識したのか、翌3月20日の「台湾『隔離』日記」の第2回では「今は対象の名前を明かせませんが、事前に申し込んでいた取材が4月に予定されているために台湾へどうしても来たかったのです。」と釈明している。

 その上で「『隔離』のためにきたという誤解があるようですが、のちにきちんと取材をした記事を読んでいただければご理解いただけると思います。取材の成果をごらんいただければたいへんうれしいです。」とした。

 Skypeなどが利用できないのか、相手が「直接会わないとダメだ」と言ったのか、どうしてもその時期に直接会って取材をしないといけないのか、多くの人が納得する理由を説明できるとは到底思えないし、実際に説明していない。

 同編集委員に限らず、こうした危機が迫る現場に首を突っ込み、自分がその危機の最前線にいることをアピールしたがる記者は存在する。2016年の熊本地震の際には、毎日放送(MBS)の山中真アナウンサー(当時39)が食料を現地で調達したことを自慢そうに写真付きでツイッターにアップ。それに対し「食料は現地調達ではなく、局で持参しろ」と批判が殺到したことは記憶に新しい。

 個人的には朝日新聞記者としての「自分は特別」という思い上がりを捨てた方が今後のためだと思う。この非常識な日記はこの後も続くようである。

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