共同通信報道に元教師の怒り ”全くの虚偽”

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 共同通信は3日、写真家の石田郁子氏(47)が中学生の頃から教師による性的被害を受けていたとする記事を公開した。石田氏の話を全くの虚偽とし、免職処分の取り消しを求める訴えを提起した元教師の鈴木浩氏(仮名)は、怒りを露わにしている。一方の言い分だけで記事を作成・公開し、結果として鈴木氏の名誉を毀損する行為は報道倫理の観点から見逃せないだけでなく、違法性を帯びる可能性もある。

◾️石田氏の言い分のまま記事に

石田郁子氏(Brut画面から)

 共同通信が今回公開した記事(以下、当該記事)は札幌市で2021年1月に中学校の教師だった鈴木氏が免職処分となった原因とされる事案を、被害者と称する石田氏が現在の状況をまじえて語ったものである。

 10月3日に「47NEWS」で「卒業式前日に教員から性被害を受けた女性。『普通の学生生活を過ごしたかった』」というタイトルで公開され、Yahoo!等にも転載されている。共同通信の稲本康平氏の署名が付されている。

 もともとの事案の概略は当サイトが2021年6月からの連載の中で明らかにしている(参照・免職教師の叫び(1)「ワイセツ教員じゃない」)。当該記事の内容に取り立てて目新しいものはないが、石田氏が2019年2月に鈴木氏と札幌市に対して提起した損害賠償請求訴訟の訴状とは異なる部分がある。

 たとえば、最初にキスをされた時の状況について、当該記事では「作ってもらった温かいうどんを食べ、一緒に画集を見終えて雑談をしていると、いきなり口が近づいてきた。」とあるが、訴状にはうどんを作った、食べた等の記載はなく、「画集を見るなどし、その最中に、突然、原告(筆者註・石田氏)にキスをしようとした。」(石田氏の提起した裁判の訴状から)となっている。

 その時点で話の信憑性について疑問符がつくが、稲本記者は訴状で明らかにされた事実との違いについて何の疑問も感じなかったのか、おそらく石田氏の話すまま、地の文で確定した事実であるかのように記載したのであろう。

 また、オコタンペ湖で撮影したとする2人が写った写真を「教員とドライブで湖を訪れた高校3年の石田さん(提供写真)」という絵解き(キャプション)を付けて紹介。当サイトがこの写真は合成されたフェイクであるとし、フェイクである証拠を集めて札幌地裁に報告書を提出しているにもかかわらず、それが真正であるかのように扱っているのは、故意であれば相当悪質である(参照・札幌教師免職取消し訴訟 当サイトが報告書提出)。

◾️裁判の書面「デッチ上げ」と表現

 鈴木氏の免職処分の取消しを求める裁判では、原告準備書面(1)の中で石田氏のこれまでの発言について、以下のように記している。

「原告(筆者註・鈴木氏)は被害者と称する訴外石田の虚偽事実の申告により重篤で悲惨な社会的境遇に陥れられている。本件処分(同・免職処分)は虚偽の非違行為なるデッチ上げを不当にも事実とする前提のもとで行われた違法かつ不当な処分」

「被告の主張する平成5年3月14日の本件対象行為(同・室内でキスをしたこと)につき、その存在も内容も全て原告は強く否認する。被告が主張する「本件非違行為1」(原告は以下、「本件対象行為1」という。)は全くの虚偽である。」

鈴木浩氏(2022年8月撮影)

 このように両者の言い分が全く異なるため、これまでこの事案をめぐる報道では、事実関係について双方の言い分が掲載されていた。

「教諭はわいせつ行為を否定し、市教委はわいせつ行為は認定できないと判断していた。」(朝日新聞DIGITAL・28年前わいせつ、スピード処分 札幌市教委が教諭免職、2021年1月29日)

「市教委は過去の調査では『被害の事実を確認できない』としていたが、高裁判決を受けて今月、教諭から聞き取りを行うなど再調査を実施。教諭は改めてわいせつ行為を否定したが、市教委は判決の認定を覆すに至らないと判断した。」(讀賣新聞オンライン・28年前のわいせつ行為を認定、56歳教諭を懲戒免職、2021年1月28日)

「しかし教員は、教育委員会の調査に対し、わいせつ行為を否定。教育委員会は『わいせつ行為を事実として認定することはできず、現時点において懲戒処分はできない』と石田さんに回答しました。」(NHK・石田郁子さん “懲戒免職処分が終わりではない”、2021年2月12日)

 ところが当該記事は鈴木氏の言い分は全く伝えず、石田氏の言い分を事実として確定しているかのように報じ、それを前提に石田氏が「自身の被害を踏まえ、教員の性暴力を社会に問い続けてきた。」(当該記事より)としている。

 こうなると何らかの政治的意図をもって作成されたプロパガンダ記事の類と思えるほどで、「極めて悪質な印象操作」と言うしかないレベル。報道倫理上、問題になるのは当然で、鈴木氏に対する名誉毀損が成立する可能性もある。

◾️沈黙する共同通信

 当該記事を読んだ鈴木氏は「共同通信から私に一切、連絡はありませんでした。私からの意見を一切聞かずにやってもいなことをやったと決めつけています。非常に腹立たしいです」と怒りを露わにする。

 当サイトでは共同通信及び、署名のある共同通信・稲本康平氏に対してメッセージ等の連絡方法で以下の質問をした。

(1)石田氏の主張する事実を元教師が否定し、処分の取り消しを求めて裁判が係属している点について一切触れていないのはなぜですか

(2)元教師はこの件を「冤罪」であると主張していますが、当該記事は冤罪の被害を助長すると考えませんか、理由を付してご回答ください

(3)当該記事は元教師の名誉を毀損すると考えませんか、理由を付してご回答ください

(4)当該記事で「教員とドライブで湖を訪れた高校3年の石田さん」とのキャプションのついた写真が掲載されていますが、その写真は合成されたものであるとの報告書が係属している裁判に提出されましたが、その事実を把握した上で記事を公開されたのでしょうか

(参考:https://reiwa-kawaraban.com/justice/20240420/

 共同通信・稲本記者ともに、当サイトが設定した回答期限までに回答をしなかった。

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