武田塾の倫理観欠如 ”生徒見せもの動画”にダンマリ

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 人気英語講師モリテツ(森田鉄也)氏が生徒を見せもののようにして動画配信している問題で、同氏と契約関係にある武田塾は黙認する姿勢であることが明らかになった。森田氏が障害を持っているように見える生徒を自身のYouTubeの番組に出演させ、その虚言癖と思われる言動や、反応速度の遅さ、模擬試験の低得点などを見せて再生数を上げる手法に関し、その見解を同塾の運営会社(株式会社A.ver)に問い合わせたが、回答を拒否。同社は武田塾以外にも就労移行支援事業者リバーサルの運用を通じて障害者の就労支援事業を行なっており、その一方で同社のEnglish Directorという地位にある森田氏の、何らかの障害を持つようにも見える人を見せもののように扱う動画配信を見て見ぬフリをする姿勢は企業倫理の欠如を指摘されても仕方がない。

◾️武田塾English Director

梅宮社長(左)と、設立者の林氏(フランチャイズチャンネル画面から)

 武田塾は株式会社A.ver(本社・東京都文京区、代表取締役社長・梅宮小百合)が運営する学習塾で「授業をしない塾」というキャッチフレーズで急成長を遂げた。森田氏は武田塾English Directorという肩書きを有し、同塾が運営するYouTubeの番組にもたびたび出演している(武田塾チャンネル・【絶対やれ】『1カ月で攻略!共通テスト英語リーディング』が改訂されるぞ! ほか)。

 同塾の英語の責任者という重い立場にあり、どのような契約関係かは明らかにされていないが、経営に不可欠の人物と言っていい。そのような森田氏に指導される学生、短大休学中とされる男性のX君は演出でなければ過去の言動から虚言癖があると見られ、学力もコミュニケーション能力も通常人より劣る印象。何らかの障害を有しているようにも見えるにもかかわらず、入学できるはずがないレベルの大学を目指すとして模擬試験等を受けて絶望的な成績を公開している。

 同じく指導役の教育系YouTuberの松原一樹氏によると、X君が出演、公開を希望しているとのことであるが、当サイトではX君は、動画出演が将来、自身に不利に働くことを正確に予見できるとは思えず、結果として数々の公開動画がデジタルタトゥーとなり、X君の将来を傷つけかねないとして警鐘を鳴らし続けている(参照・教育系YouTuber松原•モリテツ氏 生徒”見せもの” ほか)。

 森田氏には今年5月にその意図を問う質問を投げかけたが回答がなく、今回、あらためて同じ質問を出したが、指定した期限までに回答はなかった。

◾️株式会社A.verへの質問

 次々とX君の動画がアップされていくことは、デジタルタトゥーを量産し続けることに他ならず、X君の将来受けるであろう被害が日々拡大していくことと同義と考えられる。この点について森田氏の雇用主と思われる、少なくともで契約関係にある武田塾(を運営する株式会社A.ver)は不適切な動画と考えれば、それを止める社会的道義的責任があるのは明らか。

 まして、同社は武田塾以外にも、就労移行支援事業者リバーサルという法人も運営して障害者の就労支援事業を行っている。そのような支援事業を実施しながら、グループ企業のキーパーソンである人物が障害を持つかもしれない学生を見せもののようにして再生数を稼いでいるのを黙認することは、企業倫理に反するのは明らか。

 そのため、当サイトでは株式会社A.verに対して、以下の質問をした。

Q01:御社は武田塾での活動を通じて、どのように社会に貢献することを考えているのでしょうか

Q02:森田氏のような、御社と契約関係にある者が情報発信を行う際には法令遵守、倫理に反しないなど、一般的な注意事項を守らせるための仕組み(契約に盛り込む等)は御社において存在しますでしょうか

左が森田氏、右はX君(同氏動画画面から)

Q03:森田氏がX氏を自身のYouTube番組に出演させ、X氏自身が勉強の成果が上がらない、それに対して時に揶揄するかのような言葉を発する、実現が困難と思われる目標(医学部への合格等)を設定し、また、X氏が虚偽と思われる事実を述べていると思われる部分をそのまま配信することで、多くの視聴者がX氏を批判、非難するなどの状況が発生していると、御社においては認識されていますでしょうか

Q04:私(松田隆)は、森田氏がX氏を番組に登場させることで、それがデジタルタトゥーとなりX氏の将来を傷付けるものであるからやめるべきであると考えていますが…略…、御社においては森田氏がX氏を番組に登場させ続けることは問題ないとお考えでしょうか、理由を付してご回答ください

Q05:森田氏のX氏を起用してのここまで制作された番組からして、その制作方法、表現の手段は武田塾English Directorとして適切とお考えでしょうか

Q06:御社は就労移行支援事業者リバーサルの運用を通じて障がい者の就労支援事業をされていますが、学習障害や発達障害を有すると思われる者に、その能力の低さ、倫理観の欠如などを動画で示し、当該人物のデジタルタトゥーとすることが、その者の将来にとって好ましいこととお考えでしょうか

◾️こちらとは全く関係ない

 上記6つの質問に対して、株式会社A.verは「回答を控えさせていただきます」とのことであった。

 もっとも、質問は同社ホームページの問い合わせから送り、その後、直接電話して、電話を取った女性とやりとりをしている。

ーー昨日、御社運営の武田塾と契約関係にある森田鉄也氏の動画の公開について御社のご見解をうかがいたいとしましたが、ご回答いただけますでしょうか

女性:差し支えなければ内容を軽くおうかがいしてよろしいでしょうか

ーーお送りしたものに全て書きましたが…(以下、上記の質問などを説明)

女性:かしこまりました。YouTube、森田さん、勝手に書いたっていう形になりますので、こちらとは全く関係のないものになってきますので、そちらに関しては分かりかねてしまうんですけども。

ーーそれが御社の回答ということになりますが、よろしいですか?

女性:そうですね、そうしましたら、ちょっと確認させていただいてよろしいでしょうか…こちらから担当者の方に申し伝えさせていただきますので。

 結局、担当者から電話はなく、回答期限とした時刻の直前に当サイトより架電し、上記の「回答を控えさせていただきます」とノーコメントである旨を聞いたという経緯である。

◾️学習塾を経営しながら違法賭博

 奇しくもこの日23日には、森田氏が新たな動画を公開している。X君が最初に登場した時の令和の虎受験生版に出演していた細井龍医師(ドラゴン細井)をゲストに招き、X君の状況を説明しながら話をするというもの。

 細井氏は「まだ症状が残っていそう」など、X君が精神的な疾患を抱えていることを前提に話をして、両者で医学部受験に向けてのX君の絶望的な状況を大笑いしながら話すという、信じ難いものであった。

 障害を持つ、もしくは疾病に苦しむ者を笑いのネタにして番組を成立させる、そのホスト役が武田塾の英語の責任者であるというのに、運営する株式会社A.verは事実上、黙認している。グループ内企業が就労移行支援事業を行っているが、障害者を嘲笑いつつも金を産むツールとして利用しているのかと疑われても仕方がない。そこに企業としての社会的使命を果たそうという思いは全く感じられず、それどころか中学校のいじめの構図をビジネスに持ち込む、虫酸が走るような企業風土である。

森田氏(左)と細井氏(Morite2 English Channel画面から)

 武田塾の創設者の林尚弘氏は、現在でも筆頭株主と言われている。武田塾の経営から身を引いたのは、2022年に賭博容疑で書類送検されたことが原因(IT media・学習塾「武田塾」運営元の林尚弘社長、違法賭博発覚で辞任)。学習塾の経営をしながら、違法なポーカー賭博を行っていたというのであるから、会社の設立者・元経営者の遵法精神の欠如は著しく、それが現在の同社のモラルハザードに繋がっているのかもしれない。

 実際に武田塾は、フランチャイズの塾から130m離れたところに直営校を開校させようとしたことが報復目的であるとして差し止め仮処分を下されている(読売新聞オンライン・武田塾フランチャイズ、本部ともめたら130m先に直営校…報復目的と認め開校差し止め仮処分)。

 こうした企業に対して社会的責任を果たすように求めるのは、八百屋で肉を求めるに等しい。モラルを欠いた企業と人によってX君のデジタルタトゥーは増えていく。

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