「なぜ韓国人はゴルフがうまい」は差別?

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 朝鮮日報日本語版が24日、韓国系女子ゴルフ選手が米国で受けた人種差別とされることに関する記事を掲載した。22日付けのニューヨークタイムズの記事を紹介する形にしているが、「これが差別?」と言いたくなるような内容だった。

■登場する11名中8名が韓国系

リディア・コ選手(同選手Instagramから)

 元記事はニューヨークタイムズ22日付けの記事「Players of Asian Descent on the L.P.G.A. Tour Lift Silence on Racism and Sexism」(電子版、紙面の見出しはWe’re a Target:Golfers Speak Out Against  Anti-Asian Bias in the U.S.)で、それを紹介する形で朝鮮日報電子版が「韓国系女子ゴルフ選手たちが受けた人種差別、米NYタイムズが1面分を割いて報道」と報じている。

 記事内に登場する選手は、既に引退した選手を含め11名で、そのうち8名が韓国系(国籍が韓国なのは朴仁妃選手ら3名)。実際に女子ゴルフで活躍している選手を見ると韓国系が圧倒的に多いから、それは当然なのかもしれない。

【非韓国系】

曽雅妮(台湾)、ミナ・ハリガエ(米国)、馮珊珊(中国)

【韓国・韓国系】

朴城炫(韓国)、崔羅蓮(韓国)、朴仁妃(韓国)、ミシェル・ウィー(米国)、リディア・コ(ニュージーランド)、ティファニー・ジョー(米国)、クリスティーナ・キム(米国)、ジェーン・パク(米国)

 しかし、その内容を見ると、昨今の米国でのアジア人に対するヘイトに関し、自分自身が警戒したり、家族のことを心配したりするもので、韓国系ゴルフ選手に限らず、米国に住む、もしくは米国で仕事をする人、全般に言えることが多い。

 たとえば、台湾の曽雅妮選手は「我が身に起きるかもしれないニュースを見るたびに怖くなる」と、日系米国人のミナ・ハリガエ選手は「私は非常に怖くなり、ネットで護身用のスティックを買った」などとコメントしている。

■米国アナは間違った発音に固執している?

 その中で朝鮮日報日本語版が言うような「韓国系女子ゴルフ選手たちが受けた人種差別」と言えるものは数えるほどしかない。しかも、そのコメントが首を捻りたくなるようなものばかり。同紙が報じたものから挙げてみよう。

 朴仁妃選手:大会を中継するアナウンサーたちは韓国系選手の名前を間違って発音する場合が多いが、いくら直しても間違った発音に固執する人々がいる。

 原文は以下のようになっている。

Park wondered why broadcasters persisted in mispronouncing the names of Asian players even after she had corrected them on social media.

→(朴選手は、アナウンサーがアジアの選手の名前を間違って発音することが多く、彼女がソーシャルメディアで修正しても、それを続けることを不思議に思っていた。)

 そもそも原文は韓国系選手などと言っておらず、しかも朴仁妃選手が個人のSNSで「発音が違うよ」と発信したとしても、それをテレビ局が見て直すことなど考えられない。アナウンサーはそれを正しいと思って発信し続けているのであり、朴選手の指摘などいちいち見ていないと思われる。それなのに、間違いを指摘されても頑なに自分のやり方を変えようとしない意味の「固執する(persist in)」という表現を使用するのは適切ではない。

 そもそも外国人の名前の発音は難しい。日本のアナウンサーも外国人の名前に関して「Ra(ぅラというイメージ)」と「La(ラ)」を全く区別せずに発音している。現地音が基本だろうが、日本語で表現する時は日本語の近い音に変換するのは当たり前の話で、アナウンサーが「ぅライト選手が、ライト方向に強烈な一打を放ち、ぅライト選手は一気に三塁まで進みました。ぅライトのイチロー選手は、ライトが目に入ったのか、打球を一瞬見失ったようです。鮮やかなぅライト選手のライトオーバーの三塁打でした!」などという実況を聞いていたら耳障り。それをしないことが「英語を話す者への差別だ」などという英語ネイティブの人などいないであろう。

 古い話になるが、青木功選手が米国ツアーで活躍していた当時、米国では「エオキ」と呼ばれていたようである。Aokiという綴りをみれば、そのように発音するのが英語ネイティブの思考法なのであろう。それを「差別だ」と騒いだ日本人の話を聞いたことがない。

■「なぜ韓国人はゴルフがうまい?」と聞いたら不適切質問

ニューヨークタイムズ電子版から

 さらに朴選手は以下のようなこともコメントしている。

 朴仁妃選手:ほかの朴という選手たちとは親せきなの?(と質問される)

 韓国は姓が少なく、韓国人の20%以上が「金」姓で、「李」「朴」と合わせて4割を超えるという(参照:中日新聞「もっと知りたい韓国の魅力」なぜ「韓国人の苗字」は種類が少ない?金・朴・李で4割超/朴美姫)。一方で、日本は世界でも最も姓の種類が多いと言われる。そういった特殊な事情があることを、米国のメディアが知らなくても責められないであろう。

 例えば渋野日向子選手に続き、渋野○子選手、渋野▲美選手、渋野◆恵選手が活躍すれば「ご親戚ですか?」ぐらいは日本人記者でも聞くであろう。世界は韓国のことを知らなければならない、韓国に興味をもたなければ差別だとでも言うのか。韓国人の発想は理解に苦しむ。

 ミシェル・ウィー選手は何度も米国人記者から「なぜ韓国人はゴルフがうまいのか」という質問を受けたという。この点について、「今までは『韓国人は練習をいっそう(ママ)懸命やるからだ』と答えてきたが、今後はこういう質問を受けたら『そのような質問は不適切だ』と答える」(朝鮮日報日本語版)としている。

 ウィー選手自身はハワイ出身の米国籍、聞く相手を間違えている類かもしれない。しかし、両親の母国である韓国のゴルファーがなぜいい成績を収めるのかを聞かれ、「その質問は不適切だ」と答えるというのも理解に苦しむ。これが「なぜ、韓国人はいいゴルフ選手が出ないのか」と聞かれたのであれば怒る気持ちは分かるが。これも韓国系女子ゴルフ選手が受けた人種差別だとするのであれば、その発想が分からない。

■無理作りの記事 差別はビジネスとは言わないが

 記事全体として、米国で問題になるアジア系へのヘイトの問題で、アジア系が多い女子ゴルファーに聞いて、その中で特にゴルフの世界での差別と思われる事象を取り上げて問題提起をするという手法。

 ゴルファーが今、話題になっているアジア系ヘイトに関して経験を聞き、それだけでは記事にならないから、ゴルフに関する差別もあると無理作りした結果と言っていい。それに韓国の記者が飛びついて、いかにも韓国系女子ゴルファーが米国で差別に苦しんでいるのかというイメージに仕立て上げた記事と言っていいように思う。

 差別と言えばビジネスになる人たちとは言わないが、ニューヨークタイムズも朝鮮日報もこのレベルかと思わされる。

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