台湾熱狂 WBC敗退も「打出台灣的精神」

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。

 日本でも盛り上がっているWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)、台湾は2勝2敗、失点率で5位となり、1次ラウンドでの敗退が決まりました。しかし、久々の国際試合、選手の闘志溢れる戦いぶりに国民は熱狂しました。

■練習試合10戦10勝で本番へ

台湾代表に熱い声援が飛ぶ(撮影・葛西健二)

 台湾(中華台北)は1次ラウンドでグループAに入り、オランダ、キューバ、イタリア、パナマとの対戦となりました。代表には、CPBL(中華職棒大聯盟)から打撃四部門でリーグトップとなった年間MVP獲得の林立、防御率2.33で台湾投手として8年ぶりにトップに輝いた黄子鵬(ともに楽天モンキーズ)、今季シーズン11連勝と大活躍し、年間優勝の立役者となった呉哲源(中信ブラザーズ) などリーグを象徴するような選手が、海外組は、MLB所属の張育成(ボストン・レッドソックス)、鄧愷威 (サンフランシスコ・ジャイアンツ)や鄭宗哲 (ピッツバーグ・パイレーツ)など実績ある選手が選ばれました。

 また、日本野球機構(NPB)所属からは宋家豪(楽天イーグルス)、張奕、呉念庭(ともに西武ライオンズ)、王柏融(日本ハム・ファイターズ)の四選手が代表メンバーに名を連ねています。

 監督は現役時代13年間で129セーブ(CPBL最多)の偉業を達成、2020年に統一ライオンズの監督としてチームをリーグ優勝に導いた林岳平氏が就任、コーチ陣ではアジア人史上初の最多勝利の快挙を成し遂げた台湾の英雄、元ヤンキースの王建民氏のブルペンコーチを筆頭に、日本でも知名度が高い元西武ライオンズの許銘傑氏が投手コーチに就任しており、豪華な顔ぶれとなりました。

 2006年の初回大会から4大会連続でWBCの出場となる台湾代表ですが、1次ラウンド開幕前の強化試合は10試合全勝の好成績で終えました。林監督は「チームは万全な状態に仕上がっている」とし、「抬頭挺胸去面對所有事情 (胸を張って全ての事に臨む)」と意気込みを語りました(中央通訊社 2022年3月6日

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年越しの国際大会参加となる台湾ですが、練習試合全勝、そして地元台湾での1次ラウンド開催に、人々の注目と期待は大いに高まりました。昨年末の時点で、1次ラウンド計9試合が行われる台中市のインターコンチネンタル野球場の一塁三塁内野席の6列目まではすでに70%が売れる人気となっていましたが、台湾代表戦4試合のチケット(外野席1000元(約4400円)から内野席前方エリアの3200元(約1万4000円))合計8万枚は、3月8日午前中には完売となりました(台中市政府HP 2022年3月8日)。

■チュンチュンさんのステッカーも販売

応援に力が入る經典女孩(台湾チアリーディングチャンネル画面から)

 WBC開幕に合わせ国内では様々なキャンペーンが展開されました。大手コンビニエンスストアでは数量限定で野球ボール型ステッカーを販売、王建民、彭政閔等台湾野球界に名を刻む選手がプリントされた「中華英雄記念」ステッカーの他に、林襄さん、チュンチュン(呉函峮)さんやYuriさん、瑟七さん等台湾プロ野球の各チアリーダーで結成された台湾代表チーム「經典女孩 (クラシックガールズ)」のステッカーも同時販売されました。

 私が近所のコンビニエンスストアで目にしたところでは、クラシックガールズの記念ステッカーは選手のステッカーよりも売れ行き好調なのか、残り数が少なくなっていました。台湾チアリーダーの人気の高さを感じました。

 大手ピザチェーンでは、WBCの試合観戦のお供にピザを、とWBC開催中のキャンペーンを実施、12インチのピザが199元(約890円)の特価となっています。その他スーパーではビールの期間限定特売が行われ、台北市内のスポーツバーでは「指定ブランドのビール大ジョッキ一杯でもう一杯無料」といったイベントを打ち出し、一大イベント開催のムードを盛り上げていました。

 そして10年ぶりのWBC開催となる台中市では、台中市政府のホームページにWBC観戦専用サイトを設置、台中での開催試合生中継や各グループの試合経過、最新情報の提供等がおこなわれました。台中市政府前には大型スクリーンが設置され、盧秀燕台中市長もファンとともに試合を観戦しました。3月11日に行われた対オランダ戦では5000人以上の観衆が市政府前のパブリックビューイング会場に詰めかけ、台湾代表に熱い声援を送りました( LIFE 生活網 2023年3月12日)。

■目指すは東京 一次ラウンド突破なるか

 注目のグループA台湾対パナマでは、呉念庭(西武ライオンズ)が3安打2打点の活躍を見せるも5-12で敗れてしまいます。若手選手主体で編成された台湾代表については以前からピッチャーの経験値の少なさやプレッシャーを不安視する声が挙がっていました。ネットでは、この試合でそれが露呈したとのコメントが多数見られました。また、

教練更需要有能力來領導球員與調度 (コーチの指導・調整力には更なる能力が必要だ)

8成責任在教練調度、而且投手只帶14個對中華真的不夠 (八割はコーチの調整能力が問題だ、しかも投手がたった14名では不足している)

 と、コーチ陣の指導、調整不足への指摘やチーム編成を疑問視するコメントも多く寄せられていました。

 続く第二戦のイタリア戦は、逆転に次ぐ逆転の好ゲームが展開され、張育成(レッドソックス)らの活躍により、台湾代表が11-7で試合を制しました。2013年3月3日のWBC第3回大会1次ラウンド対オランダ戦以来約10年ぶり、ようやくの白星にファンからは

總算贏了,鬆了一口氣 (やっと勝てた、ほっとしたよ)

這場真的看得超過癮的 (この試合は痺れたよ)

希望未來兩場比賽,中華隊投手能有自信三振每個打者 (残り二試合、投手は自信を持って対戦打者を三振に打ち取ってほしい)

 と、ようやくの勝利に安堵や祝福のメッセージとともに、次の試合に希望を抱く声もある中、7点を取られた投手陣についてはパフォーマンスの向上を願う声も見られました。

 勢いに乗る台湾代表の第三戦、対戦相手はここまで二連勝のオランダ。2回に林立(楽天モンキーズ)のタイムリーで追いつくと、イタリア戦でも大活躍の張育成が満塁弾を叩き込み、5対1に。さらに3回、4回、8回にも追加点をあげオランダを9-5でくだす快挙。これには普段は辛口なネットユーザーからも感動や祝福の声が多く挙がりました。台湾メディアもこの勝利を大きく報じ、

抗荷成功 保住晉級一線生機 (Yahoo!台湾 2023年3月11日(対オランダ戦成功 2次ラウンドへの望みをつなぐ)

前進東京只差1勝 (TVBS Youtubeチャンネル 2023年3月18日(あと一勝で東京へ)

 と、一次ラウンド突破、10年ぶりの東京行きへ期待を寄せる内容でした。

■ワースト失点31が命取りに

 しかし、12日の対キューバ戦は1-7と大敗。2勝2敗としたものの失点率で1次ラウンド敗退が決定しました。総得点は26点で5チーム中トップでしたが、失点31はワースト。結局、投手陣がネックになり、東京行きのチケットをつかめなかったということでしょう。

 試合後、球場に集まった大勢の観客に頭を下げた台湾代表。今大会大活躍の張育成の目には涙も。健闘の台湾代表に、ファンからは

打出台灣的精神、前途無量 (台湾の精神を見せつけた、前途は無限だ)

謝謝你們真的讓世界看見臺灣 (世界に台湾を知らしめてくれてありがとう)

直到最後都沒放棄 謝謝 (最後まであきらめなかった姿に ありがとう)

プールA最終結果(作成・松田隆)

 と、世界に台湾の健闘を知らしめたことに対して感謝の声が多く寄せられました。そして今回の活躍を契機に、

希望中華職棒更進步更精彩 (台湾プロ野球がさらに進歩、さらに素晴らしくなりますように)

有了新的希望,因為可以把世界的目光目光轉向台灣棒球界 (新たな希望だ。世界の目を台湾野球界へ向けることができるのだから)

 と、国内プロ野球リーグの発展に期待する声もありました(コメントはYahoo!台湾YoutubeFacebookから抜粋。)。

■久しぶりの国際試合に熱い視線と声援

台中でのパブリックビューイング(台中市政府HPから)

  2年ぶりとなる台湾代表の国際試合参戦、そして6年ぶりの台湾開催の今大会に、人々の関心は特に高かったようです。WBC台湾代表4戦を放送した東森テレビでは、一試合の平均視聴者数は130万人、これは前回大会平均視聴者数の1.5倍となりました。

 特に視聴率が高かったのは、負ければ敗退、勝てば2次ラウンド進出の可能性大、「背水一戰 (背水の陣)」(聯合新聞網 2023年3月11日)と形容された対オランダ戦です。土曜日夜7時プレイボールということもあり、同時視聴者数430万人、視聴率は9.36%。これは2021年以降の国内スポーツ試合放送視聴率を塗り替える結果となりました。

 また、瞬間最高視聴率は夜9時50分の7回表、吳哲源(中信ブラザーズ)がオランダの攻撃を抑えた場面で、11%を超えました。この対オランダ戦山場の7回攻防時、私も台北市内のパブリックビューイング会場にいました。対オランダ戦の放送を観に大勢の人たちと一緒に、熱い声援を送っていました。国を背負って戦う選手に皆が一丸となってエールを送りそして歓喜する様に、WBCは台湾代表の活躍が期待できる数少ない国際試合なのだと実感しました。

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