安らかに眠れスキルヴィング 東京優駿回顧

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 第90回G1東京優駿(芝2400m)が28日、東京競馬場で行われ、皐月賞2着、D.レーン騎手騎乗のタスティエーラが優勝した。単勝2番人気のスキルヴィングは17着と敗れ、入線後に急性心不全で倒れ、死亡した。

◾️大激戦の5.1秒後に入線

写真はイメージ

 勝ったタスティエーラを含め、4頭が同タイムでゴールになだれ込む激戦となった東京優駿で、残念だったのは、その接戦の中にいるべきスキルヴィングが不在であったこと。タスティエーラらが入線した5.1秒後に入線(17着)したが、C.ルメール騎手が下馬し、その直後に崩れ落ちるように倒れた。JRAは競走中に急性心不全を発症したと発表。馬は予後不良となった。

 競走馬がレース中に骨折し、予後不良となることは少なくない。急性心不全で死亡というのはあまり例がないと思われるが、こういうこともあるのが競馬。競走馬も騎手も命を賭けて競走に臨んでいることをあらためて実感させられる。

 「幻のダービー馬」と呼ぶのは勝ったタスティエーラ陣営に失礼になるので控えるが、本当に残念。キタサンブラック産駒としてイクイノックスに続くスター候補だっただけに、その点からも惜しまれる早逝となった。安らかに眠ってほしい。

 レースでは後方に控え、タスティエーラとソールオリエンスを前に見て3角から上昇。直線では2頭を捉えられる位置につけて、完全に勝ちパターンであったように見えた。しかし、直線半ばで心不全を発症したのであろう、手応えがなくなり、ズルズルと後退。

 終わってみれば、G2青葉賞で負かしたハーツコンチェルトがタスティエーラから首+鼻差の3着に入っており、レースに「if」はないが、(もし、心不全を発症せずに走っていたら…)と思わせる内容ではあった。

 C.ルメール騎手がG1皐月賞1番人気3着のファントムシーフというお手馬がいながら、チョイスしたということを考え合わせると、タスティエーラ陣営には申し訳ないが、この世代で、この時期に最も強かったのはスキルヴィングだったのではないかと考える人がいても不思議はない。

◾️横山武史騎手は責められない

 タスティエーラは前、前の競馬をして、直線で先頭に立って押し切るという皐月賞と同様の内容であった。皐月賞では前半1000mが58秒5というハイペースで先行勢が総崩れになってソールオリエンスの強襲に屈したが、今回は60秒4という比較的落ち着いた流れの中、上がり3f33秒5の末脚で押し切る形に。相手どうこうではなく、自分の競馬に徹していた。

 逆に横山武史騎手のソールオリエンスは、タスティエーラの直後につけ、完全に(相手はこの馬)と狙いをつけていた印象。左回りなら4角で外に膨れる心配はないから、デビュー戦同様の積極策に出た。上がり3fは33秒3と勝ち馬を0秒2上回る末脚を繰り出したが、最後はクビ差2着。結局、道中の位置取りの差が明暗を分ける結果となった。

 これは横山武史騎手を責められない。単勝2倍を切る1番人気、皐月賞を一気の末脚で差し切ったというのに、東京優駿でタスティエーラと並ぶ位置、あるいはその前につけて末脚が鈍って負けることなど許されない。実際の位置取りは考え得る最善のもので、それで負けたら相手が強かったとファンも納得であろう。

 驚いたのは3着のハーツコンチェルト。この馬に関しては全くのノーマークだった(参照・タスティエーラ勝利は目前 東京優駿)。終わってみれば青葉賞でスキルヴィングに半馬身差まで迫った実力は本物であったということ。この時はスキルヴィングのC.ルメール騎手が権利取りのために大事に乗った結果、際どい勝負になったもので、スキルヴィングとの力の差は大きいと思い込んでいた。

 ハーツクライ産駒のため比較的遅咲きで、距離延長がプラスなど、いくつかの要素が重なったのかもしれない。伏兵として台頭するのはスキルヴィングを除き、皐月賞組と考えていたこともあって、レースを考える上で目に入らなかったというのが正直なところである。

◾️東京優駿上位組の秋は

東京優駿の舞台・東京競馬場

 東京優駿の上位組の秋を考えると、タスティエーラはスパッと切れる脚がない分、長くいい脚を使えるのでG1菊花賞向きと考えられ、G2セントライト記念かG2神戸新聞杯を使って、菊花賞、G1有馬記念というローテーションと思われる。

 難しいのはソールオリエンスで、4角で膨れる可能性がある右回りを使うかどうか。三冠はなくなったのでG2毎日王冠、G1天皇賞・秋、G1ジャパンCと府中で3戦をこなして休みに入り、年明けにサウジアラビア、UAEドバイと中東の左回り高額賞金レースを狙っていく可能性はある。

 ハーツコンチェルトは菊花賞路線が濃厚であるが、今回4着のベラジオオペラはロードカナロア産駒とあり、天皇賞・秋にG1マイルCS、結果次第でG1香港マイルもしくはG1香港Cか。2400mのここはよく走っているが、ゴール前、差し切る勢いであったものが最後に勢いが鈍って4着に終わったのは、距離の限界と思えなくもない。

 東京優駿上位組はこれで夏休みに入る。秋には元気に顔をそろえてターフを盛り上げていただきたいと思う。

    "安らかに眠れスキルヴィング 東京優駿回顧"に2件のコメントがあります

    1. MR.CB より:

      》》ジャーナリスト松田様

      ターフに横たわり動かないスキルヴィングの首筋を、心配そうにさするルメール騎手の姿を見て本当に居た堪れなくなりました。ウイニングランでスタンド前に戻った優勝馬の鞍上レーン騎手も心配そうに視線を送っていました。
      競馬最高峰のレースで起きた悲劇に、改めてジョッキーも競走馬も命懸けでそれぞれの使命を果たしている「競馬」を実感した気がします。
      ルメール騎手も、「昨年からダービーはこの馬と決めていた」とのコメントに、同馬の関係者の皆様の悲しみはいかばかりかと拝察いたします。

      ともあれ、松田さんの予想はほぼ完璧でしたね。お見事です!小生にとっても思い出に残る今年のダービーでした。

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        スキルヴィングの最期を見て、胸がいっぱいになりました。騎手が降りるのを待って倒れたのかという思いで、見てしまいます。こういう悲劇を含めて競馬という競技があるということをあらためて思いました。

        MR.CB様のハーツコンチェルトはお見事と思います。三連単、三連複で的中でしょうか。僕は本文にも書いたように全くのノーマークで、青葉賞のビデオも3、4回見ましたがスキルヴィングしか見ていませんでした。このあたりのズボラさが予想下手な理由かもしれません(笑)

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