光差すサトノシャイニング 武豊V7へ東京優駿

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 明日6月1日、東京競馬場でG1東京優駿(芝2400m)が行われる。サトノシャイニング(牡3、栗東・杉山厩舎)がG1皐月賞5着から巻き返し、武豊騎手に7度目のダービー制覇をもたらすことが期待される。

◾️シャイニングとクロワのワンツー決着か

皐月賞走破タイムとラップ

 今年のダービーは前哨戦でこれまでの勢力分布を一気にひっくり返すような強力な新勢力は出現せず、唯一可能性があるように思われたエネルジコが回避となって、皐月賞上位組の再戦の色彩となっているように見える。東京優駿を占う上で、今年の皐月賞は過去の同レースに比べて珍しい展開であったことは念頭に置かなくてはならない。

 皐月賞は前半1000mが59秒3とスローで流れ、後半1000mが57秒7という急流となった。前半1000mの方が後半1000mより遅い場合を「スローな展開」と定義する。過去10年の皐月賞を見ると、スローな展開であったのは2025年を入れて4回。前半1000mから後半1000mのタイムを引いた数値で最も大きかったのが2025年の1秒6である。他の3年は後半の方が速くなったとはいえ、その差は最大で0秒7でしかない(2022年)。今年の1秒6も速くなったのは非常に珍しい例と言っていい(表・皐月賞走破タイムとラップ参照)。

 こうした珍しい展開となったことが、レース結果に影響を及ぼしている。一般にスローな展開の場合、上がりの決着となりやすく、「用意ドン」の位置取りがそのまま着順に反映されやすい。つまり、「用意ドン」の時点で位置的優位を持つ馬が、そのまま流れ込むパターン。極端な例が「行った、行った」の競馬と言っていい。

 実際、最近10年、皐月賞でスローな展開での優勝馬の4角での位置取りは、アルアイン5番手、サートゥルナーリア7番手、ジオグリフ3番手と前目につけている。それが今年はミュージアムマイル10番手と、過去10年のスローな展開の皐月賞優勝馬では最も後方に位置していた。

 この事実が、今年の皐月賞の性質を示している。つまり、スローな展開とはなったが、後半があまりに速すぎたために、早めに動いた馬が差されたのである。2着クロワデュノール2番手、5着サトノシャイニング7番手は、通常のスローな展開なら勝ちパターンの位置取りであるが、あまりに速すぎる後半の流れに飲み込まれてしまった。

 逆にその2頭より仕掛けをワンテンポ遅らせたミュージアムマイル(4角10番手)が優勝、直線勝負に賭けたマスカレードボール(同13番手)とジョバンニ(同10番手)が3、4着という結果になった。

 この事実から導き出される解は、強い競馬をしたのはクロワデュノールとサトノシャイニングであり、展開に恵まれたのが1、3、4着の3頭と言い得る。他路線組による大勢逆転が難しいとなれば、今年の東京優駿はクロワデュノールとサトノシャイニングの1、2着の公算が大と言っていいように思う。

◾️サトノシャイニングに2度の不利

写真はイメージ(撮影・松田隆)

 それではクロワとシャイニングではどちらが上位に来るか。クロワデュノールは皐月賞で単勝1.5倍の断然人気であった。これだけ人気が被った上にスローな流れであれば、ジョッキー心理としては早め早めに動き出さざるを得ない。自身で競馬を作って最後は差されるも2着死守は相当な地力の高さである。

 もっともサトノシャイニングは道中、過怠金が科される出来事での被害馬として2度、不利を受けたと認定されている(JRAレース結果 第85回皐月賞・競走中の出来事等参照、クロワデュノール陣営も不利を受けたとするが被害馬として認定されていない)。

 それにも関わらず、クロワデュノールを負かしに行き、5着とはいえ、その差は0秒1しかなかった。思えば昨年のG2東京スポーツ杯2歳Sでも0秒1差の2着となっており、この2頭の実力差は0秒1しかないというのが正当な評価と思われる。

 G3きさらぎ賞を2着に3馬身差をつけて制したサトノシャイニング。その時の2着馬リンクスティップは後のG1桜花賞3着、G1優駿牝馬5着と上位に入っている。3着ランスオブカオスは後のG3チャーチルダウンズC優勝馬、4着ショウヘイは後のG2京都新聞杯優勝馬、10着ウォーターガーベラは後のG2チューリップ賞2着馬と、相当レベルが高い。そこで楽勝劇を演じていることからも、地力はクロワデュノールとそれほど差はないと思われる。

◾️武豊騎手はどう乗るか

 今回、西村淳也騎手から武豊騎手に乗り替わる。サトノシャイニング自体は折り合いの難しい馬で、後方で折り合えるか不安が残り、逃げるか、そこまでではなくても先行するのではないかと予想する声もある。たとえば、細江純子氏は「単騎で行く気がしていて…皐月賞見ても、返し馬見ても、抑えきれないと思うの」とする(カンテレ競馬【公式】・【絶好調!先週カムニャック推奨!】「馬場の適性は…」クロワデュノール、ミュージアムマイル、マスカレードボール・・・日本ダービー(GⅠ)を元ジョッキーの細江純子さんが徹底解説!)。

 元騎手の話だけに一定の説得力はある。しかし、武豊騎手は5月21日の1週前追い切りに騎乗した際に「もっと乗り難しい馬を勝手に想像していましたが、すごくいい方向にイメージを修正することができました。」としている(Take a Chance!・気持ちは早くもダービーへ)。この言葉は(折り合いをつけられない馬ではない)と言っているに等しい。

 さらに「さすがにいい馬です。…7勝目を狙います。」(同)と続く。これはどう乗っても足りないから大逃げしたり、離れて後方につけたり、展開に恵まれるのを期待して極端な競馬をしなければならない馬ではなく、正攻法の騎乗でもチャンスはあると考えての発言であろう

 大外枠から内の様子を見ながら、クロワデュノールの外か直後につけるのではないか。理想は勝負どころで外からクロワデュノールを封じ込め、直線で先に仕掛けて、相手に外に切り返すロスを負わせる展開か。もちろん、北村騎手もそうはさせじと騎乗してくるとは思うが。

◾️道悪を追い風に

東京競馬場(撮影・松田隆)

 レース前日の5月31日、府中は朝から雨が降り続き、芝は稍重から始まり、途中、重馬場となった。芝コースの水捌けはいいとされるが、東京優駿では欧州で言うところの堅良のようなコンディションになるとは思えない。場合によっては稍重での戦いとなる可能性はある。

 皐月賞上位組は良馬場での経験しかないが、サトノシャイニングは稍重のきさらぎ賞を制しており、道悪の実績があるのも心強い。もちろん、クロワデュノールもキタサンブラック産駒で道悪は苦にしないと思われる。

 以上の状況から考えると、最有力は◎サトノシャイニングで、相手筆頭が○クロワデュノールと考えられる。3番手は皐月賞の決め手の鋭さから▲ミュージアムマイル。その後は△マスカレードボール、△ショウヘイに、手替わりの△ファウストラーゼンあたりまで。

 3戦3勝のファンダムは戦ってきた相手のレベルが気に掛かる。それなら、道悪もこなしたイスラボニータ産駒の△ニシノエージェントに期待をかけた方がいいのかもしれない。

    "光差すサトノシャイニング 武豊V7へ東京優駿"に1件のコメントがあります

    1. nanashi より:

      親子三代でダービー制覇というのは、中々出来ない記録でしょうし、鞍上が同一騎手ともなれば、ギネス級だと思います。
      血統的に米系の血の強い血統構成ですが、馬場が渋ればワンチャンあると思います。
      また、牝系は多数の活躍馬を輩出しているAffectionの牝系であり、その中でもBourtaiと言う牝系になるそうです。
      CCAオークスなどを制したLeveeが8代母に入り、この一族からは日本で種牡馬となったジェリや2011年の桜花賞を制し、繁殖牝馬としてもラストドラフト、ヒートオンビートの2頭の重賞勝ち馬を輩出したマルセリーナがいます。

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