CoCoKARA酷い国語力「当て込む」左フック

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 総合情報サイト「CoCoKARAnext」の6月3日公開の3本の記事に、間違いが多く含まれている。単純な日本語のミスもあれば、記事の内容と一致しない表現を使用するなど、看過できない誤りも含まれていた。ネット媒体が多く登場する昨今、内容はもちろん、表現手段である日本語のレベルの低下も著しいことを象徴するような、お粗末な記事の連続である。

◾️謎の言葉「言動不一致」

岩越亮氏(Sports Workers 好きなスポーツを仕事に 画面から)

 CoCoKARAnextは、アスリート・マーケティング株式会社(本社・東京都港区、岩越亮代表)が運営するメディアで、サイトのヘッダーには「アスリートと一流仕事人に学ぶ ココロとカラダを整えるマガジン」とある。

 アスリート・マーケティング社のホームページによると、代表取締役の岩越亮氏はプロ野球の楽天の広報担当を務めた後、2011年にスポーツ選手のマネジメント事業やメディアの運営、競技団体の広報やマーケティングのコンサルタント業務を行うソスニック・コブ・スポーツ・ジャパン株式会社を設立し、2016年に現在の社名に変更している。2017年にCoCoKARAnextを創刊し、web版はYahoo!などに記事を配信している。

 その記事を見る限り、媒体を標榜するにしてはあまりにお粗末な日本語が使用されている。目についた限りでピックアップし、何がおかしいのかを指摘していく。

それでも監督の座に居座り続けるのは、「言動不一致」と言われても致し方ない状況にあります。

→「言動不一致」という表現は通常使用されない。「言行一致」が正しい用法で、「言行一致せず」「言行不一致」などとすべき。

いったん口から出た言葉は、絶対に取り返しがつかない。だから発言には、より慎重にならなくちゃいけない。現在、パ・リーグの最下位に沈む楽天の石井一久監督も、かつての自身の発言に苦しめられていると言っても過言ではないでしょう

→「だから」は「そのため」、「ならなくちゃ」は「ならなくては」。媒体掲載の記事では用いるべきではない、くだけた表現が使用されている。さらに当該部分は「だ・である」で書かれているが、その直後から「です・ます」になっている。「だ・である」「です・ます」を混在させないという文章の基本を守れていない。

(以上、2023年6月3日公開・低迷する楽天・石井一久監督に東北のファンから「異議」が申し立てられる理由 背景にある「過去の発言」

◾️「当て込む」の意味を知らないのか

 前の記事と同じ6月3日に公開された記事にも、明確な間違いがある。ボクシングの井上尚弥選手の記事である。

クローズアップされた動画は、井上の力強さを物語るものだった。この時に対峙したスパークリングパートナーがロペスであるかは不明ながら、接近戦で強烈な左フックを当て込むと、力なく足から崩れ落ちているのだ。

→「当て込む」は「当てる」。

 井上選手のスパーリングに関する記事であるが、左フックを「当て込む」とはどういうことか。「当て込む」は「よい結果を見込んで期待する。また、そのような見込みで行動する」(広辞苑第7版)という意味である。使い方の例として「ブームを当て込んだ店」(同)が示されている。この記事を書いた人間は「当て込む」には「当てる」という意味が含まれていると思っているのかもしれない。

 さらに言えば、左フックを当てたのは井上選手、力無く足から崩れ落ちたのはスパーリングパートナーであり、主語が明示されないまま、行動の主体がクルクルと入れ替わっている。もし、書くなら「この時に対峙したスパークリングパートナーがロペスであるかは不明ながら、接近戦で強烈な左フックを当てられると、力なく足から崩れ落ちているのだ。」とすべき。同じ記事からもう1箇所。

…これを被弾した男の感覚は狂わせ(られ)、キャンバスにゼリーのように転げ落ちるしかなかった

→「狂わせ」は「狂わせられ」と受け身にしなければ意味が通らない。

 仮に「狂わせ」のままにしたいのなら、「男の感覚は」を「男の感覚を」と、助詞を変更すべき。

(以上、2023年6月3日公開・井上尚弥が練習で見せた“残忍KO”に英紙も愕然「スパー相手の足がゼリーのよう」)

◾️原辰徳氏の「素養」への違和感

 もう少し見てみよう。今度は野球、侍ジャパンの次期監督に現巨人監督の原辰徳氏の可能性があるという話題である。

まだ候補者の面々の中にその名前は浮上していないが、いつお鉢が回ってきてもおかしくない素養を、原監督は備えている。

→本文の内容から、「素養」は「条件」とすべき。

 侍ジャパンの栗山監督が任期満了で退任するのに合わせてのもので、次期監督候補にはMLBをよく知る松井秀喜氏、吉井理人氏、イチロー氏らの名前が挙げられているが、同サイトでは経験が大きくものをいう原氏に注目しているというもの。

 原氏は2009年の第2回WBCを制しており、その経験を重視するのは、まだいい。同サイトではそれ以外の事情を延々と論じている。

 原氏率いる巨人は最近2年3、4位と低迷し、今年も5月31日時点で4位と苦戦している。このままだと進退問題が浮上してくる可能性があり、もし、退任となったら、侍ジャパン監督就任の障害はなくなることを挙げている。さらに、このパターンは日本ハムで3年連続5位に終わり、退任後にすぐに侍ジャパンの監督に就任した栗山監督と同じパターンであるとする。

 また、「侍ジャパンは元来巨人色が強い」(同サイト)ため、原氏が監督就任なら運営面でもスムーズに働くと分析する。

 その文章の流れの後での「…素養を、原監督は備えている。」という表現である。そもそも素養とは「平素の修養。かねてから学びおぼえたこと。かねて養った力。」(広辞苑第7版)のこと。

 原氏は巨人の監督を退くことになりそう、その直後の侍ジャパンの監督就任は栗山氏と同じパターン、しかも侍ジャパンは巨人色が濃い、ということを原氏有力の根拠にしている。原氏の就任はその素養よりも、条件が整いそうであることが本文の趣旨であるのは明らか。そうなると「素養」は「条件」などの単語に置き換えるべきである。

(以上、2023年6月3日公開・侍ジャパン次期監督にいつ浮上してもおかしくない意外な監督とは、かつて世界一に導き実績は十分

◾️これもメディアリテラシーの1つ

WBC開催中の東京ドーム(撮影・松田隆)

 1日に公開した3本の記事に、これだけ修正が必要な部分がある媒体が雑誌を発行し、他媒体に配信しているのは信じ難い。ついでに、もう1つ、挙げておこう。

ベテラン左腕同士の維持が交錯する通算勝利数争いは、

→「維持」は「意地」。

 これは単純な誤変換と思われる。一度見直せば見つかるレベルと思うが、そうしたチェックをしない、あるいは第三者の目を通さないシステムでサイトが運営されているのかもしれない。

(以上、2023年5月30日公開・「通算成績争い」からも目が離せない交流戦、勝利数はベテラン左腕2人、打率はともにメジャー帰りの好打者2人に注目

 このレベルになると、指摘するのも馬鹿馬鹿しくなってくる。新聞、雑誌などの活字媒体は通常、校閲機能を備えており、筆者(松田隆)が在籍していた日刊スポーツでも校閲担当はいた。CoCoKARAnextにはおそらく校閲担当はいないのであろう。そうでなければ、これだけお粗末なレベルの日本語がそのまま記事になっている状況を説明することはできそうにない。

 これはCoCoKARAnextだけの問題ではなく、多くのネット媒体に共通した問題と思われる。記事を読み「この表現は間違っている」「ここは誤変換」など、読み手が気付かなければいけない時代、それもメディアリテラシーの1つになったということなのかもしれない。

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