5分余で手取り12億円 ”ウマ娘”リヤドの夜

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ウマ娘でおなじみのサイバーエージェント社長・藤田晋氏(51)が22日、サウジアラビアで行われたレースで2勝2着1回の成績を収め、手取り賞金12億円余を手にした。メーンのG1サウジカップをフォーエバーヤングで、G2ネオムターフカップをシンエンペラーで制し、さらにG3サウジダービーではシンフォーエバーが2着に入る健闘を見せた。

◾️サウジカップ仰天のパフォーマンス

サウジC優勝の坂井騎手(JCSA_Racing画面から)

 首都リヤドのキングアブドゥルアジーズ競馬場で開催されたサウジカップデーは”シン”の冠で知られる馬主の藤田晋氏が断然の主役となった。昨年からG1に昇格したメーンの9Rサウジカップ(ダート1800m)は、フォーエバーヤング(牡4、栗東・矢作)が直線で香港2023/24シーズン年度代表馬ロマンティックウォリアーに2馬身近く先行を許すも、残り200mで差し返す仰天のパフォーマンスで制した。2着馬とはクビ差だったが、そこから3着馬(ウシュバテソーロ)には10馬身半差をつけ、力の違いを見せつけた。

 この日は3RのG3サウジダービー(ダート1600m)にシンフォーエバー(牡3、栗東・森)が出走、勝ったゴールデンヴェコマから1馬身4分の3差の2着に入った。日本ではデビュー戦を勝ったものの、その後は5戦続けて勝利がない1勝馬の身分であるが、初めてのダート戦で変わり身を見せた。

 6RのG2ネオムターフカップ(芝2100m)では昨年G1東京優駿3着、G1ジャパンC2着のシンエンペラー(牡4、栗東・矢作)が逃げ切っている。

 藤田オーナーは所有馬3頭を中東に遠征させて2勝2着1回という、パーフェクトと言っていい成績を収めた。

◾️馬主の手取り額は

 稀に見る成功を収めた藤田オーナー、リヤドの夜の手取り額はどの程度なのか。日本の場合、獲得した賞金の80%が馬主の取り分で、調教師10%、騎手と厩務員が5%となっている。サウジアラビアでの賞金配分は馬主70%、調教師・騎手・厩舎が各10%である(ジャパン スタッドブック インターナショナル・2023 サウジカップ開催施行競走 登録要綱)。

 各レースの賞金配分も微妙に異なる。まず、総賞金の50%が1着馬に、20%が2着馬の関係者に支払われる。ただし、スポンサーがついているレースについては、1着馬60%、2着馬18%で、1着には自動車などのスポンサーからの賞品が入り、2着から5着まではスポンサー提供の賞金を割ることになる。そのうち2着の取り分は50%。

 さらにメーンのG1サウジカップは政府がスポンサーになっているが、1着馬50%で、10着馬まで賞金が出るようになっている。計算が複雑になるが、上記のジャパン スタッドブック インターナショナルが端的に賞金額を表記している(ジャパン スタッドブック インターナショナル・2025 サウジカップ開催施行競走 登録要綱)。

 今年度の登録要綱によると、3頭が稼いだ賞金の藤田オーナーの手取り額は以下のようになる。

★サウジダービー:30万ドル

★ネオムターフカップ:120万ドル

★サウジカップ:1000万ドル

 以上の合計の70%がオーナー取り分となることから、1150万ドルの70%で、805万ドル。これを直近のドル円相場(1ドル=149.24円)に当てはめると、12億138万2000円となる。レース3クラに要した走破タイムはおよそ335秒、5分35秒と少しであるから、この短い時間に藤田オーナーは12億円を稼いだことになる。競走馬に加算される賞金額は予め年初に定められたレートに基づき、今年は157円程度であるが賞金の支払いは米ドルで行われ、それを円に変える場合は両替するときの実効レートとなる。

 快挙を達成した藤田オーナーは「ヤバい。流石に興奮しました 日本からの応援、ありがとうございました」とXに投稿した(2025年2月23日午前2時45分投稿)。

◾️ジャパンC3クラ同時優勝とほぼ同額

 3頭を遠征させて馬主に12億円入るというすさまじい利益率。これを日本の競馬で1日で稼ごうと思えばどうなるか。最も賞金が高いジャパンC、有馬記念で1着賞金5億円であり、その80%は4億円。つまり、ジャパンC、もしくはを3クラ同時に勝たないとこれだけの賞金は得られない。

 この時期、近いG1レースにフェブラリーS(ダート1600m)があるが、1着賞金は1億2000万円でオーナーの取り分は9600万円。サウジカップは5着で100万ドル(約1億4900万円)入るため、両方に出られる馬の陣営がフェブラリーSを選ぶ理由は、輸送に弱いなどの理由を除けば考えにくい(以上、JRA・2025年度重賞競走一覧)。

 JRAにしても主催するG1競走が空洞化するのは面白くないと思うが、有力馬が海外に遠征して、それを馬券発売できればフェブラリーSの減収分ぐらいはカバーできると考えても不思議はない。今年のサウジカップの売り上げは22億8763万6000円であった(サンスポ電子版・【サウジカップ】売り上げは22億円超で昨年を下回る)。2024年のフェブラリーSの売り上げは165億9474万7000円であった(サンスポ電子版・【フェブラリーS】11番人気ペプチドナイルが大波乱演出V 藤岡佑介騎手「直線は長かった」)。

 また、競馬サークル全体を見ても、藤田氏が12億円の賞金を手にすれば、それが新たな競走馬の購入費用に充てられることが期待される。稼いだオイルマネーが競馬サークルに還元されれば業界全体の利益となる。

◾️海外ビッグレース制覇は馬主のロマン

写真はイメージ

 筆者が現場で取材していた1980年代後半から1990年代後半にかけては、海外遠征など数年に1回程度であった。海外に行っても賞金は安く、リスクは大きいため行く必要はない、日本の高額賞金を稼いでいればいいという風潮はあった。

 しかし、今の時代、海外遠征に尻込みするような調教師には馬主からの預託は期待できない。海外大レース制覇は経済的にも大きく、種牡馬・繁殖牝馬の価値を上げ、さらに馬主のロマンを満たす。

 そう考えると藤田オーナーにとって矢作調教師は誰よりも稼ぎがいい”会社関係者”と言えるかもしれない。その目が自然と海外に向くのも宜なるかな、である。

    "5分余で手取り12億円 ”ウマ娘”リヤドの夜"に1件のコメントがあります

    1. nanashi より:

      今思えば、奥菜恵さんは何で約1年半で離婚してしまったのでしょうかね。
      藤田晋氏は2009年に元秘書の女性と再婚していますが、離婚をせずに今も夫婦であったら、別の人生を歩んでいたことでしょう。
      IT企業の夫人というのが、彼女にとって水が合わなかったからなのかもしれませんが…。
      それにしてもフォーエバーヤングを最優秀3歳牡馬にしなかったのは、大きな間違いだったと思います。
      芝レースへの偏重、3歳クラシックの王道レース「東京優駿の勝馬」という固定概念でダノンデサイルを選んだ訳ですし、今後もこの事は言われ続けるのではないかと思います。
      ダノンデサイルも古馬となって初戦のAJCCを勝っている訳ですし、決して弱い馬だとは思っていませんが、やはり疑問を呈するものとなったと私は思います。
      最後にネタになりますが、今日の京都の4レースの新馬戦と5レース未勝利馬戦、サウジカップデーに所縁のある馬が勝っています。

      京都4R 3歳新馬:オメガドライヴ
      名前が1980年前半から90年前半にかけて活動をしていた「オメガトライブ」と名前が似ている為、netkeibaの掲示板では「おっさんホイホイ」となっていますが、この馬の母であるエクスプレスレーンの弟が2022年のレッドシーターフハンデキャップを勝ったステイフーリッシュだったりします。

      京都5R 3歳未勝利:レベルスルール
      母は札幌2歳ステークスを勝ったロックディスタウンの息子で、曾祖母にフォーエバーヤングの曾祖母でもあるローミンレイチェルがいます。
      ローミンレイチェルの息子であるゼンノロブロイやフォーエバーヤングのいとこになるSierra Leoneもこの牝系の一族です。

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