史上最低水準のドバイワールドカップ

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

最新記事 by 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)

 UAEドバイで3月27日、ドバイワールドカップデーが開催される。メーンのG1ドバイワールドカップ(ダート2000m、発走28日1:50)は過去に例を見ないほどの低調なメンバー構成となった。これなら日本から参戦するチュウワウィザード(牡6、栗東・大久保龍志厩舎)でも何とかなってしまいそうな雰囲気である。

■ドバイワールドカップと思えないメンバー構成

メイダン競馬場(メイダンレーシングのTwitterから)

 ドバイワールドカップは世界的には1年の前半の古馬最強を決める戦いという位置付けと言って良かった。欧州はシーズン開幕前に早めに始動する馬が目標とし、米国も前年秋のG1BCクラシックを終え、海外遠征しやすく、もちろん、地元UAE勢はここを最高目標にするため、例年ハイレベルな戦いが繰り広げられてきた。

 過去の優勝馬を見ても、古くはシガー、シングスピール、ドバイミレニアムと伝説級の名馬の名前が並び、最近でも2016年カリフォルニアクローム(米二冠ほか)、2017年アロゲート(BCクラシックほか)などは米国の最強クラスであった。

 ところが今年は出走14頭で、豪ブックメーカー・ジャストホースレーシングの前売りオッズを見ると、1番人気は世界的には全く無名の米国のミスティックガイド(牡4、M.スティッドハム厩舎)。G1勝ちはなく、前走G3レイザーバックH(ダート8.5f)を勝って重賞2勝目をマークしたばかりである。ゴドルフィンの所有馬ということでこちらに回ってきたのだろうが、過去の優勝馬、1番人気馬に比べると数段格落ちは否めない。

ドバイワールドカップ2021出走表

 2番人気も米国でヘスースチーム(牡4、J.ダンジェロ厩舎)。こちらはG1BCダートマイル、G1ぺガサスワールドカップがともに2着、G1プリークネスSが3着と安定しているが、同時に勝ち切れない詰めの甘さが残る。

 3番人気が前哨戦のG2アルマクトゥームチャレンジR2とG1アルマクトゥームチャレンジR3を連勝中のバーレーンのサルートザソルジャー(騸6、A.デフリース)という顔ぶれになっている。

 この手薄なメンバーであれば、日本のチュウワウィザードでも3着ぐらいはあるかもしれない。ブックメーカーのオッズでは9番手の評価となっている。

■手薄なメンバーとなった4つの理由

 今年はどうしてここまでメンバーが手薄になったのか。考えられる理由は4つである。

(1)新型コロナウイルス禍

(2)昨年、中止となった影響

(3)サウジカップの創設

(4)賞金の減額

 一つ目は言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染症の世界的な拡大によって、人馬ともに国境を超えて移動させることについてさまざまなリスクが考えられることである。国によるが、レース後に帰国検疫で2週間程度隔離され騎乗できなくなるため、「今年は遠征は控えよう」となるのも当然であろう。

 (2)は(1)に関連するが、昨年はレース6日前に中止が決まっており、今回も”ドタキャン”があるのではないかと疑う人がいても不思議はない。帰国して2週間程度の隔離は覚悟の上で遠征したのに中止になったというのであれば、まさに踏んだり蹴ったり。関係者が慎重になるのも分かろうというもの。

 (3)が案外、大きいように思う。米国勢はサウジカップにチャルラタン、ニックスゴーと強力2頭を送り出し、2、4着を占めた。当然、サウジアラビアからUAEドバイに転戦と思いきや、2頭はサッサと帰国してしまった。サウジカップは1800m、ドバイワールドカップは2000mと1ハロンの距離の違いが案外大きい。

 チャルラタンは1800mまでしか距離経験がなく、唯一のG1勝ち鞍のマリブSはダート7ハロン戦である。ニックスゴーもG1勝ち鞍はマイルと9ハロン(BCダートマイル、ペガサスワールドカップ)。どちらも2000mのドバイワールドカップは微妙に長い。これまでなら使っていたかもしれないが、1800mのビッグレース(サウジカップ)に全力投球し、帰国して適距離のレースを選んでいく方がシーズンを戦う上では好都合と判断したものと思われる。

 (4)賞金の減額も若干は影響しているかもしれない。ドバイワールドカップデーは9つのレースで総額2650万ドル(約29億2000万円)の賞金が与えられるが、2020年は3500万ドル(約38億5000万円)だった。新型コロナウイルス禍の影響もあるのだろうが、約24.3%の減少。メーンのドバイワールドカップは総額1200万ドル(約13億2000万円)に据え置かれたが、他のレースがその分、大幅減額になっており、帯同馬を含めて考えれば行く価値が減少したのは間違いない。

■海外で勝つ条件は「行くこと」

 こうした事情があって、ドバイワールドカップが過去に例をみないほどの低調な顔ぶれになったと考えられる。

 チュウワウィザードはサウジカップで9着と惨敗しており、通常の年ならとても勝負にならないであろう。ところが、上記のような事情から少しは楽しめる状況となってきた。これも勝負の綾というもの。

 その場に行った者だけが優勝する資格を得られるのであるから、海外のビッグレースを勝とうと思ったら、まずは行かないと始まらない。どうか日本代表として頑張っていただきたいと思う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。