小池百合子知事ヘタな博打のエネルギー政策

The following two tabs change content below.

石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。

最新記事 by 石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)

 私は小池百合子都知事を政治家として全く評価していない。その彼女が、東京都のエネルギー政策で、また奇妙な行動をしている。2つの意見のぶつかり合う委員会を作って、都のエネルギー政策を進めようとしている。何をしたいのか全く見えず、ただ混乱を招くだけだろう。(元記事はwith ENERGY会議乱立、エネルギー政策での小池百合子都知事の奇行

◆逆方向の会議を2つ作る奇妙さ

小池百合子都知事はバクチ打ち?

 小池百合子知事は6月6日の都議会定例会の所信表明で、エネルギーをめぐり、「『戦略』と『実装』を支える二つの有識者会議を梃子にして、環境に優しく安定したエネルギー基盤の構築を先導してまいります」と述べた。そして発表した行動は奇妙なものだった。5月に作った会議に加えて、もう一つの会議を作るという。

東京都は5月に「東京都エネルギー問題アドバイザリーボード」という有識者会議を作った。この目的を「大局的観点から意見を受け、エネルギー政策の戦略性を一層高める」とする。

 ところが6月にエネルギーをめぐる二つ目の会議を作った。「再エネ実装専門家ボード」 だ。この目的は「技術的、専門的な助言を得ながら、再エネの基幹エネルギー化を加速度的に進める」という。このような会議は構成メンバーで議論の方向がわかる。

 アドバイザリーボードには、安倍政権の首相秘書官でキヤノングローバル戦略研究所の今井尚哉研究主幹、東京大学生産技術研究所の岩船由美子教授、国際大学の橘川武郎副学長、国際環境経済研究所の竹内純子主席研究員などが参加している。この方々はエネルギー問題では現実派だ。急速な脱原発、太陽光など再エネ急拡大に批判的だ。私も何度もお会いした、優れた方々だ。今井氏は安倍政権の後で初の公職となるので注目されている。

 一方、専門家ボードは、自然エネルギー財団のエイモリー・B・ロビンス理事、京都大再生可能エネルギー経済学講座の諸富徹教授らが入る。再エネで夢みたいなことを話している人たちだ。

 小池都知事は、脱炭素を掲げ、太陽光発電の新築住宅の義務化政策を今年決めた。私は散々それを批判した。(with ENERGY東京都の太陽光パネル義務化は「格差拡大政策」だ など)

 それを受けて始まった「アドバイザリーボード」の第一回会議では、太陽光振興策に、やんわりと批判が出た。一方で、6月の専門家ボードでは、「再エネ万能論」的な言説がみられた。

◆思い出す「博打打ち」小泉純一郎氏の政治手法

 相変わらず、小池都知事の行動は意味不明だ。彼女は思いつきで行動する。ただし、もしかしたら、複数の政策を考えさせ、状況によって目立つものを選ぼうとしているのかもしれない。そこで思い出すのが、小泉純一郎元首相だ。小池氏は彼を尊敬して真似しているとされる。

 彼女を首相時代に環境大臣に抜擢した小泉氏は、首相の時に相反する政策を同時に走らせ、状況によって一つを切り捨て、残りにかける政治手法をとった。選挙も「郵政」「金融」、争点を単純化して勝負に打って出て、勝ち続けた。

 私は当時、経済誌で金融の取材をしていた。小泉政権は金融危機を終結させた。小泉氏はほとんど金融のことを知らなかったが、いきなり竹中平蔵氏を抜擢し、彼の政策を実現させて、それが成功した。小泉氏のカンの良さと勝負度胸と結末の見事さに感心した。「博打打ち」かと思った。

 事実、彼の祖父の小泉又次郎は、衆議院議員、逓信大臣になった。しかし前歴は横須賀のとび職人と港湾労働者のボスで、全身に刺青があり、ヤクザと渡り合い、博打も打ったという。祖父譲りだろう。その見事さを評価していた小泉氏が、エネルギー問題で、原発ゼロの変な行動を続けているのはとても残念だ。

◆小池都知事は「ジョーカー」

写真はイメージ

 小池氏の奇妙な行動は、小泉流に2つの相反する政策を考えさせ、状況によって、自分に有利なものを選ぼうとしているのかもしれない。

 小池氏の行動には「博打打ち」のような危うさがある。しかし小泉氏のような鮮やかさを感じない。彼女は状況を混乱させ、後始末をしないことが多いのだが、なぜか政治家として生き残ってきた。博打で例えれば、小池氏は安倍晋三元首相が回顧録で指摘したように「ジョーカー」のような存在だ。ある場面では突破力で切り札になるが、それに関わった人に破滅をもたらしかねない危険な存在という意味だという。

 彼女は自分の利益になる、かっこいい政策探しをしているのかもしれない。しかし、それに振り回される、都民と企業には迷惑だ。政策にはそれに人々が対応するために、予測可能性と明確性が必要だ。彼女はそれに配慮しない。

 太陽光発電での行動で、住宅メーカーと消費者はすでに迷惑を受けている。また小池氏による混乱が広がりそうだ。エネルギー問題で小池百合子都知事は、余計なことはしないでほしい。

※元記事は石井孝明氏のサイト「with ENERGY」で公開された「会議乱立、エネルギー政策での小池百合子都知事の奇行」 タイトルをはじめ、一部表現を改めた部分があります。

    "小池百合子知事ヘタな博打のエネルギー政策"に1件のコメントがあります。

    1. こたつ より:

      エネルギー政策とか環境とかの問題になって来ると、それを政策に反映させる政治家には今まで以上の知識や理解力が要求される時代になって来ていると思う。
      小池さんのその能力はないだろね。
      地下鉄を二階建てにするとか言ってたし…

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です