Colabo不適切な経費計上も玉虫色の監査結果

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。

 一般社団法人「Colabo(コラボ)」(仁藤夢乃代表理事)への公金支出をめぐり、東京都監査委員は1月4日、監査結果を公表した。不適切な経費計上があり、東京都の福祉保健局に対して、経費の再調査を求め、過払いがあった場合には、同法人に返還請求をすることを求めた。(元記事は&ENERGY・「『Colabo不適切経費支出事件』の解説」)

◆委託事業に不適切な支出

東京都の対応には疑問が残る(撮影・松田隆)

 この団体の主催者と応援団が、過激な政治的発言を繰り返し、共産党などの支援があったため、多くの人の反感を集め、ネットで騒ぎになっていた。ただし、メディアは沈黙している。コンテクスト(背景文脈)が多すぎる話だが、報告の内容に絞り客観的にまとめ、私の論評を加えてみようと思う。

 私は27年の記者歴でずっと行政文書を読んできたが、行政監査の書類を読むのは今回が初めてだ。ズレた所があるかもしれず、またより問題に詳しい人がいるだろう。それらを参照いただきたいが、この記事は問題を概観する際の覚書として使っていただければと思う。

 「東京都若年被害女性等支援事業について当該事業の受託者の会計報告に不正があるとして、当該報告について監査を求める住民監査請求監査結果」の監査概要は1ページだが、本報告は25ページもあって、普通の人が読む暇はないだろう。

【監査内容のポイント】

ポイントは以下の2点と思う。

(1)請求した男性、ネットのハンドルネーム「暇空茜」氏によるコラボの不当、違法な請求があるとした主張の大半は退けられている。

(2)監査委員は支出に不適切な内容のものがあり、報告がおかしいと指摘した。そのため、都に適切な報告を、該当団体に行わせることを求め、不当な支出がある場合は返金を求めた。結論部分を直接コピーしたものを示す。(報告24ページ)

 以下、感想を箇条書きで述べてみたい。

報告24ページ

1、こうした住民の監査請求が認められるのは珍しい。たいてい門前払いになる。これは事業に問題があったということだ。しかし、この請求は制度の妥当性を決める、違法性を認定・追及する、正義を実現するという制度ではない。税金支出が正しいかを判断するだけのものでしかない。コラボの批判者が「腰抜け」「拍子抜け」などとしているが、この結果は仕方がないと思う。そうした制約の中でも、都に正しい請求を出させろと命じる形で、コラボの活動は批判されている。

2、私は監査制度に限界を感じた。問題になっているのは性暴力や虐待などに遭った女性らに対し、居場所の提供や夜間の見回りといった支援を行うという事業だ。この事業で女性は救われているのか。この種の支援を求める人は何人いて、どれほど救われ、どの程度の効果があるのかという根源的な問題には触れていない。東京都議会、都の行政当局は、ぜひ、その点からの検証をしてほしい。

3、この文書を読んで、住民監査制度は、かなりいい加減なものとの印象を受けた。どのような支出があったかの事実を精査するのではなく、書類が適切かどうかの判断が繰り返されている。支出の中身を精査していないまま、暇空茜氏の主張の多くを退けている。制度と検証方法を見直してほしい。

◆コラボは、なぜ税金を使うことへの感謝がないのか

4、コラボの関係者と弁護士は、前述のポイント1で違法性がないと指摘されたことから「勝った」と主張しているが、それはおかしい。勝ち負けの問題ではない。ポイント2で示したとおり、その行動と支出に問題があるされている。だから反省し、正しい報告をして、事業を見直す必要がある。

 コラボとその関係者の人たちからは、東京都民の税金を使っていることについて、納税者への感謝と事業を行うことへの責任感が全く見えない。それどころか、この人たちのSNSを見ると批判者への攻撃一色だ。なぜ感謝と反省の言葉がないのか。こうした態度は人々の信頼を失い、争いが続くだけだ。私はうんざりし、都税を納める気が失せてしまった。

5、ポイント2では、高額なホテル代やレストラン代など妥当性が疑われる使い方があったと監査委員は指摘している。経理も使い方も杜撰で、コラボは猛省してほしい。

6、監査委員には、小池百合子都知事に近い人、小池知事の与党である都民ファーストの都議会議員が入っている。公正性は担保されるのか。

7、監査の結論は玉虫色だ。東京都の責任は「コラボの行動において不適切な公金の使用がある」こと「報告がおかしい」ことに限られる。一方で、請求者の主張をほとんど認めていないのに、最後のところでコラボに問題があるような前述の文章をおく。明言していないが、コラボが悪いと、読み手に印象を植え付けるものだし、それを狙っているのだろう。

◆「転んでもただでは起きない」役人たち

 ここからは筆者の推測だ。この監査文書は、東京都の事務当局に有利な形になっている。この団体に対して、左派政治活動をする弁護士、日本共産党、立憲民主党の国会議員や都議会議員が支援に動いていた。以前から、そうした勢力による東京都の担当部局への圧力が強かったようだ。この文書が出たことで、そうした人たちの動きは封じられ、圧力もなくなるだろう。そして、この形の結論では、都政を統括する小池百合子都知事にも悪影響は及ばない。都の事務当局への批判は最小限だ。さらに、このコラボについて違法性はない、事業に問題はないとしながら、この文書は批判をしている。都は今後はこの団体を切り捨てやすくなる。そして都の担当者が左遷され、この問題の蓋が閉じられるのかもしれない。

 実は私の多少詳しいエネルギー問題でも、似たことがあった。この問題の背景はリベラル色を打ち出した岸田内閣の旗振りで、男女共同参画予算が2022年度の国の予算で8兆円もついたことにある。誤解が多いが、これまでの予算が女性の権利拡大の名目も兼ねて二重計上されているにすぎず、予算そのものは大きく増えていない。しかし、その名目で税金が出やすくなったことは確かだ。

 同じように1997年の京都議定書が成立した後で、温暖化対策予算が増えた。1998年度に環境NPO予算が政治的に作られた。3億円だったと記憶している。NPOのことなど当時の環境庁(当時)の役人は知らないため、民間に委託した。ところが、その選定者に日本共産党系の人物が入り込み、おかしなバラマキをした。

 私を含めた記者が気づき調べ始めた。すると、1999年度に環境庁は外郭団体を作り、そこに権限を集め、資金配分を管理した。関係局長と課長は飛ばされ、退職に追い込まれたが、組織として環境庁は失敗を隠し、焼け太りをした。今回も東京都は失敗を隠し、転んでもただでは起きないと焼け太りをしているのかもしれない。

◆税金を納める意欲がまた失せた

代表理事のツイッターから

 このコラボ事件は、関係者の姿が奇妙だ。「税金を食べる人」たちの気味悪い動き、ネットワークが見え隠れしている。この事件の関係人物が、いろいろな政治運動に関わり、怪しい政治家が登場し、女性保護をめぐる制度の創設と予算支出を求めている。困っている女性たちが救われるのならば、多少はそうした行動の意味が認められるだろう。けれども、本当にそうした人たちが救われるのか。これまで救ってきたのか。この騒ぎからは、それは見えない。

 この団体の代表の女性は、なぜ批判を受けているのかわかっていないようだ。このTwitterの書き込みの文章は、感情を吐露するだけで論理性がなく、攻撃的で、あまりにも幼い。この問題では、普通の日本国民が税金の使い方について批判をしているのだが、そう受け止めていないようだ。ミソジニー(女性憎悪)で語っている人はほとんどいない。

 メディアは、1月4日23時時点でほとんど報道していない。行政報道に強い時事通信が事実を淡々と短く伝えただけだ。この程度の報道に止まるだろう(JIJI.COM・委託事業で不適切経費 若年女性の支援巡りー東京都監査委員) 私が記事「なぜメディアはColabo問題に沈黙するのか」で予想した通りになった。メディアに正義の実現を求めることは無理そうだ。彼らは面倒なことから逃げている。

 焼け太りをする役人。税金を食べる人たち。逃げるメディア。この事件でそれらの姿を見て、私は税金を納める意欲が、またなくなっている。今、政府は防衛費をめぐり増税の検討をしているが、その前に、支出の面でやることがたくさんあると、改めて思う。

 ※元記事は石井孝明氏のサイト「&ENERGY」に掲載された「『Colabo不適切経費支出事件』の解説」 タイトルをはじめ、一部表現を改めた部分があります。

"Colabo不適切な経費計上も玉虫色の監査結果"に1件のコメントがあります。

  1. もう生理的にムリ より:

    おおむね常識的な正論だと思います
    ただ、16日に世に出すには、少し時事的に遅れているというか、裏どりなど必要な内容は薄い割には、またネットでの発信という点も鑑みれば、どうしても時事性・方向性で物足りなさを感じました
    とはいえ、触れようともしない既存マスコミwやジャーナリストwが多い中の発信は感謝します
    ご指摘の段階での問題の内、個人的に疑問なのは、所謂表3の問題です
    監査請求の内容に対し、それを見た後に対応した内容の修正を出し、それを以って指摘が当たらない、という結論を出した一連の流れ
    これが許されるのかどうか、また許されるなら、監査請求など全く意味がない
    どころか、これが許されるなら、私も今後の税金の申告はこの方法でいきますよ
    Aという問題の指摘に対して、Aの部分を修正しました、の再提出が許されるのか
    また再提出という事は、最初の提出したものは捏造、最低でも要修正のモノであったという事
    この時点で、追徴・許認可見直し、等の処置があるべきではないのか
    正直既に、業界?すべてと言えるまでに延焼状態で、この4日の報告など半分埋もれてしまっているが、この段階でColaboの不正かどうかなどという矮小な話ををとっくに超えて、監査請求の在り方自体の修正が必要なレベルになっていたと思う
    筆者指摘の監査側の人選含め、あまりにも全てが歪み過ぎており、正直話にならない
    増税との絡みはまさにそうで、これでは納税への「納得」が失われるのは当然であり、そういった動きはモラル・社会の崩壊へと繋がると危惧する
    役人は既得権益保護と前例踏襲の生き物であり、自ら改革など絶対に出来ないしやらない
    今こそ政治家の役目なのだが、、小池・岸田、正直役人と変わらない体質のトップに見える、方向性はともかく安部菅の優秀さが際立つのは悲しい処

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