榊英雄氏「猛省し悔い改める」で済むのか
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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俳優で映画監督の榊英雄氏(51)が映画への出演をもちかけて女優らと性的関係を持ったことが報じられ、新作映画「蜜月」の公開中止が3月9日に決定した。この件で榊氏は猛省し悔い改めるといった内容のコメントを発表したが、それで済むような内容とは思えない。一連の事件を報じた週刊文春の記事を見ても、刑事責任を免れようとする意図が感じられる。
■特に悪質なA子さんへの行為
週刊文春3月17 日号が報じた榊氏の醜聞は衝撃的な内容を含んでいる。A子、B子、C子、D子の4人の女優と性的関係がもったと報じられており、特に悪質と思われるのがA子さんに対する行為。
ワークショップで出会ったA子さんを後日、渋谷・道玄坂の居酒屋に呼び出し、店を出た後に襲い掛かった。マンションの駐車場の奥に連れ込み、「やめてください」と声を出し、強く抵抗するA子さんの耳元で「騒いだら殺すぞ」と凄み、そのまま下着を引きずり下ろして避妊もせずに性交した。行為が終わると「じゃ、またね」と言って、A子さんをその場に残したまま立ち去ったという。
これは映画等への出演をチラつかせて性行為を求めるといったセクハラ・パワハラといった事件性の薄い表現をしていい行為ではなく、明らかな強制性交(刑法177条)である。A子さんが被害を申し出なかったのは女優を続けるため事件にしたくなかったという事情による。しかし、今回A子さんは「私のような被害者を出したくない。あんな人を野放しにしてはいけないと思い…」取材に応じることとしたと説明する。
これに対して榊氏は「肉体関係があったことはなく、ましてや『騒いだら殺すぞ』等と脅したこともありません」と事実関係を否定した。
当事者2人の言い分が180度異なっており、両者の言い分を聞くだけでは、どちらが真実なのかは分からない。ただ、A子さんの言うことが虚偽であれば、榊氏は名誉毀損で告訴なり、民事で提訴するなりのアクションを取るべき。週刊文春の取材にそのようなことは一切答えていない事実は、榊氏の主張の信憑性を否定する方向へ働く。
それだけでなく、所属事務所のファミリーツリーを通じて発表したコメントでは「記事の内容につきましては、事実であることと、事実ではない事が含まれて書かれておりますが、過去のことをなかった事には出来ません。それをしっかり肝に銘じ、これからの先へ猛省し悔い改めることを誓い、人を、日々を大事に生きていきたいと思っております。」とし、4人の女優に対して行った行為について事実も含まれていることを認めている。
B子さんも道玄坂の居酒屋で飲食をした後に路地裏で口腔性交を強制されており、居酒屋での飲食後、人通りのない屋外での行為という点でA子さんの主張する被害と類似点はある。しかも榊氏はB子さんについては「一部、指摘のような性的な行為があったことは事実」と週刊文春の取材に対して認めている。そうした事情も含めA子さんが全くの虚偽を言っているとは考えにくい。
■刑事責任を免れるため?
それでも榊氏がA子さんとは肉体関係はなく、脅したこともないとあくまでも否定するのは、刑事責任との関係を考えれば、分かりやすい。
A子さんが榊氏と出会ったのは、週刊文春によると2013年12月頃に行われた榊氏のワークショップでのこと。参加費用を支払って演技指導などを受け、そこで榊氏から映画などへの出演依頼を受けることがあるため、新人女優にとってはチャンスの場でもある。
A子さんはワークショップの後で個人的に呼び出された時に被害に遭ったとしているため、その時期は2013年12月から2014年1月頃と思われる。当時は強制性交罪は強姦罪という名称であった。この強姦罪の公訴時効は10年(刑事訴訟法250条2項3号)と定められており、時効が成立するのは2023年12月から2024年1月となる。もし、A子さんが今から被害を訴え出て、榊氏が起訴され有罪となれば3年以上の懲役となる(現在は懲役5年以上であるが、刑法6条で改正前の旧法が適用される)。
【刑法6条(刑の変更)】
犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。
榊氏がA子さんの言い分を認め、捜査が始まれば刑務所に行く可能性がある。A子さんが取材に応じて被害を公表してきた事実から、この後、被害届を提出し、捜査が開始されるのを恐れたのではないか。そのため、この時点で「脅して、無理やり肉体関係(=性交)を結びました」とは言えなかったとの推測が可能となる。
もし、A子さんと何らの物理的な接触がないのなら「そのようなことは一切しておらず、A子さんの狂言である」「法的措置を含め対処する」といった趣旨のコメントをするはず。それを「肉体関係があったことはない」という表現で否定しているのは、少なくとも何らかの接触があったことは認めているに等しい。
榊氏は週刊文春の取材について文書で回答したとされているが、当然、弁護士からのレクチャーを受け、4人の女優の行為に対する回答を決定したはず。榊氏にとって最も危険なのはA子さんであることは説明を受けて理解しているであろう。A子さんによる狂言と主張すれば、相手を挑発するようなもの。そこで被害届を出させないように、一部を認め、反省している様子を見せて交渉の余地を残したのではないかと考えられる。
強制性交罪は刑法の改正で非親告罪となったとはいえ、被害者の被害届がなければ実質的に捜査はできない。それらを考えてのコメントであるのではないか。
■榊氏の行為は不倫なのか
榊氏の週刊文春への回答で気になる部分がある。「不倫行為については妻にも謝罪し、許してもらっております」という一節である。
週刊文春の記事のメイン見出しは「女優4人が覚悟の告白『人気映画監督に性行為を強要された』」。性行為を強要された、すなわち強制性交罪や強制わいせつ罪であれば、妻に謝罪するより、まず、相手に謝罪すべきである。ところが榊氏は自らの行為を「不倫」と表現。このことに違和感を覚えた人は少なくないと思う。
しかし、明らかな強制性交のA子さんについては「肉体関係はない」と否定することで、榊氏の立場からすれば残る3人についてはまとめて「不倫」と呼ぶことができるのである。
B子さんについては、口腔性交があったことは認めていると言っていいが、それは強制されたものではないという主張なのであろう。実際にB子さんは口腔性交の後、2人でバーに行き、別れ際に金銭を受け取っている。その部分を根拠に榊氏は「お互い合意の上でした」と週刊文春の取材に答えているものと思われる。
C子さんは榊氏が「彼女の方から私に近づいてきて、関係をもちました」としており、事件性は全くないとする。このC子さんと思われる女性は自身のブログに榊氏との関係について書いており、ブログ主とC子さんは同一人物と見られている。当該ブログでは「今のいままで私は、この出来事を『対等な関係で行われたセックスをした話』だと認識していました。」「私は彼に一切抵抗や拒否をしていません。」(C子さんと思われる人物のブログから)と明言している。さらに命じられて裸の写真や動画を数回送るなどを明かしており、書かれたことを読む限り強制性があったと言うのは極めて困難。
D子さんについてはワークショップの後で事務所を訪れ、そこで性的関係を結び、さらに後日、居酒屋で飲んだ帰りにも性行為をしている。榊氏は「相互に好意を持って行われた普通の男女関係であり、彼女が性交渉を拒否していたとの事実はありません」と回答している。日をおいて2度性交を行った事実は、強制性交ではなく交際での性交とされる余地はある。
榊氏にすれば、A子さんとは性交はしておらず、残る3人とは合意の上での性行為であるから、自らの行為は不倫であると言いうる。そのため、家族に謝罪するということも榊氏の言い分に沿って考える限り、成立するのである。
■今後の鍵を握るA子さん
榊氏がこの先、俳優・映画監督として続けていけるかどうかは、A子さんが鍵を握ることになる。水面下で交渉をしているのか分からないが、A子さんも名乗り出た限りは相当な覚悟をもってのことと思われる。
もし、A子さんの言うことが事実であるのなら、安易に妥協せず、刑事責任を負わせるようにしていただきたいと思う。また、榊氏は4人以外にも女性と性的関係をもっていた、強要したとも言われており、4人以外にも被害者がいるのであれば、それらの人々も泣き寝入りしない方がいい。
刑事責任を問われなければ、榊氏は一連の行為を「不倫」で片付け、「猛省し悔い改めた」後に、再び映画の世界に舞い戻ってくるのは確実。そこで新たな被害者が生まれるかもしれない。
悪いことをしたら罰を受ける、当たり前のことが行われる社会であってほしいと願う。
控え目に言ってこういう男は何もかも失って欲しい。
事実関係を徹底的に調べて欲しいと願います。
告発が事実なら、厳罰がふさわしい。
一生刑務所に入って欲しいくらいです。
ただ、芸能界では役と引き換えに関係を迫るという慣わしがけっこうあります。
昔、プロデューサーをしていた方から、名前は伏せますが、某女優さんがある映画に出る為に、監督と一夜を共にしたと直接聞いたことがあります。
映画は大ヒット、日本アカデミー作品賞も取り、女優さんは、大出世しました。
今もきっと似たようなことがあるのでは。