台湾人から安倍首相へ「ありがとう」
葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼
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安倍晋三首相が8月28日、持病の潰瘍性大腸炎の悪化を理由に辞任の意向を表明したことは、台湾でもトップニュースで報じられました。安倍首相のこれまでの日台関係への心配りは多くの台湾人を喜ばせており、それも当然でしょう。
■台湾首脳がねぎらいの言葉「最も台湾に友好的な首相」
安倍晋三首相の辞任表明を受け、台湾の首脳はSNSで次々と体調を気遣うメッセージを日本語で発信しました。蔡総統は自身のTwitterで「台日関係に多大なる貢献」をした「台湾にとってもっとも大事な友人」と表現。賴清德副総統は台湾への支持により「台日友好が更に深まった」、鄭文燦桃園市長は「台湾に対するご支持に感謝の意」、謝長廷台北駐日経済文化代表処代表「台日関係を深めたその功績は大きく」「最も台湾に友好的な首相だった」として、首相の労をねぎらっています。いかに安倍首相が台湾で信頼されていたかが、これらのことから分かります。
メディアは次期首相と今後の日本の外交政策についても注目しています。台湾国策研究院は「安倍閃辭對日本國內外局勢之衝擊 (安倍首相突然の辞職が日本国内外の局勢に与える衝撃)」という名の緊急座談会を開き、専門家によるディスカッションを行いました(自由時報2020年9月1日付)。
大手新聞社「中国時報」は「可以向安倍學習的事 (安倍首相から学び取れること)」という社説を掲載。アメリカ、中国、ロシアの三大国に対してバランスを取りながら日本の「自立外交」を進めたこと、中国との外交を維持しながら「親台」の姿勢を表したことは、国際社会が今後「中国」か「台湾」かの二者択一ではなく、双方を尊重する道もある、ということを示したとして評価しています(中国時報 2020年9月6日付)。
また「自由時報」では今後日本の外交政策について専門家や政治関係者の分析として、台湾との友好的な関係は継続されるという予想を掲載しています(自由時報 2020年8月29日付)。
■民主党政権の無礼と安倍首相のはからい
台湾での安倍首相への高い評価は、今から8年前の事件がきっかけになりました。2012年3月に日本政府が開催した「東日本大震災1周年追悼式」で、台湾代表として出席した台北駐日経済文化代表処の羅坤燦副代表を、当時の日本政府(野田佳彦首相)は各国と国際機関代表の席ではなく、企業や団体関係者らと共に一般席に座らせるという対応をしました。台湾代表は「指名献花(献花前に各国代表の国名が読み上げらる)」からも外され、一般参加者としての献花となりました。
台湾の人々の心が込められた義援金は約200億円、どの国の支援をもはるかに超える額でした。このような冷遇に中華民国外交部も「非常に遺憾である」ことを表明、メディアはこの日本政府の行為を「失禮」「傷了台灣人民的心 (台湾人の心を傷つけた)」と大きく報じる事態となりました。中華テレビはこれを「太失禮 (礼を大いに失する)」と強い語調で指摘する内容のニュースを報道しました。(華視ニュース2012年3月12日付)。
同年末に自民党が政権を奪還、第2次安倍内閣が発足。2013年3月11日に行われた「東日本大震災2周年追悼式」では、日本政府は台湾代表に外交団向けの来賓席を用意、指名献花の対象に加えました。安倍晋三首相は2日後の3月13日、自身のFacebookにて、昨年の台湾代表の取り扱いに非礼があったと述べ、台湾に対し感謝の意を込めて「指名献花」をしてもらうことにしたこと、これに対して中国が代表を送らなかったことは残念であるとしながら、台湾を「大切な日本の友人」として、感謝の念を表明しました。
この投稿は大きな反響を呼び、約3時間で1800件以上のコメントが寄せられたということです。また台湾各メディアもこれを大きく報道、安倍首相の評価が高まるきっかけとなりました。なお以降の台湾は日本政府からの招待を受け、毎年東日本大震災追悼式典に出席しています。
■安倍首相の台湾重視の姿勢
2013年10月インドネシアで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、馬英九政権の特使として出席した蕭万長前副総統が安倍首相と会談。首相はFacebook上で「日本の友人である台湾の代表」として蕭氏とのツーショットを掲載するなど、第二次内閣発足から台湾との関係を重視する姿勢を示しました。
台湾メディアはAPECでの蕭氏との会談を「強化台日合作 (台日協力関係の強化)」(中国時報 2013年10月8日付)「加強雙邊經貿及文化等各層面合作 (双方の経済貿易及び文化等各方面での協力強化)」(大紀元 2013年10月8日付)として大きく扱いました。
最近では、新型コロナウイルス禍に見舞われる日本に対して蔡総統が自身のTwitterで日本語の励ましと共に日本との協力姿勢を示したツイートを投稿、安倍首相はこれを受け、繁体字中国語で謝意を表明、「日本台灣一起加油 (日本台湾ともに頑張ろう)」と述べています。
■安倍首相の施政方針演説に「鳥肌が立った」
台湾での評価を更に高めたのが、今年1月20日、衆参両院本会議での施政方針演説中、岩手県野田村が台湾のホストタウンになったことを紹介した際に「台湾」という言葉を使ったことです。
「一つの中国」を原則とする中国との関係を考慮した上で首相が敢えて公の場で「台湾」を強調したことに台湾は大いに沸き立ちました。蔡総統もTwitterでこれを歓迎、メディアも「国会演説で『台湾』と発言した」ことを評価、ネットにも称賛の声が多く寄せられました(以下)。
謝謝日本首相 (ありがとう日本の首相)
聽到別的國家稱呼我們為臺灣,而非中華台北,真的令人非常感謝及感動 (他の国が我々をチャイニーズタイペイではなく台湾と呼んでくれるなんて、とても感動した)
說出台灣的時候、我超激動 (「台湾」と言ったとき、ものすごく感動したよ)
讓我雞皮疙瘩 (鳥肌が立った)
日本是我們台灣永遠的「朋友」 (日本は台湾の永遠の友だ)
また安倍首相は世界保健機関(WHO)など国際機関への台湾の参加を支持する立場を繰り返し示してきました。このことに対しても台湾では高い評価がなされています。
日本では辞任表明後支持率が上昇しているようですが、台湾では辞任表明前から高い人気を誇っていたのです。安倍首相の示した「親台」の姿勢は日台友好に大きな役割を果たしました。今後も両国の良好な関係が維持されていくことを願っています。
安倍前総理が辞任する時、感謝の言葉がSNS上に上がったことに対して「安倍さんって、モリカケのイメージしかなかった」とツイートした若者がいます。度重なる野党やマスコミの報道により、そのイメージしか持てなかったのでしょう。
もちろん安倍さんの政策に、賛否両論はあるでしょう。でも少なくとも、台湾やアメリカとの関係は良くなったと思いますし、そしてそれが、とても大きな意味を持つことは、今、実感している国民も多いと思います。だからこそ、今、第三次安倍内閣を望む声もあるのだと思います。
安倍さんが総理になる前まで、私は「誰が総理になっても同じだ」と思っていました。でも安倍さんは違いましたね。とにかく、存在感のある、総理大臣でした。お元気になられたようで、本当に良かったと思っています。
名無しの子様
コメントありがとうございます。
台湾大手の新聞でも、今回の日本からのワクチン供給に際して
安倍前総理の果たした役割について特集記事を組むなどしており
台湾での安倍氏の評価は肯定的・好意的なものが多いですね。