プラハ発「我是台灣人」に熱狂

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

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京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。
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 チェコのビストルチル上院議長が8月30日、代表団を率いて台湾を訪問、9月3日に国会で印象的な演説を行い、大きな反響を呼びました。

■プラハ市の北京市との姉妹都市解消と台北市との締結

 チェコの首都プラハ市は2019年10月、中国の「一つの中国」という主張を支持しない方針を示し、中国・北京市との姉妹都市関係を解消。2020年1月プラハ市のズデニェク・フジブ市長は「チベットと台湾の独立反対」を強いる合意には署名できないとして、代わりに台湾・台北市と姉妹都市関係締結することになりました。そして8月30日、同国のNo.2でもあるビストルチル上院議長がフジブ市長を含む代表団を率い台湾訪問を果たしました。

 ビストルチル議長は近年台湾を訪問した外国政治家では最高クラスとなるだけでなく、代表団も国会議員や企業関係者ら約90人という空前の規模、当日は呉釗燮外交部部長(外務大臣)自らが空港で一行を出迎えました。空港に現れた訪問団は中華民国とチェコの国旗をあしらったマスクを着用し、またフジブ市長は中華民国国旗を手に出迎えに応える等、両国の友好関係が強調されていました。

 この歴史的な訪問をメディアも熱く報道、中国側の強い反発に対抗する形で行われた訪台を「捷克無懼中共威脅 チェコは中国共産党の脅しに屈しない(三立新聞網 2020年8月31日)」と評価、今回のチェコ代表団の訪問が「象徵台灣在歐洲地區的外交突破 (ヨーロッパ地域における台湾の外交突破の象徴)」(聯合報 2020年8月31日)と位置づけています。

■台湾最高位の勲章を授与

総統府Youtubeチャンネル画面より

 蔡英文総統は9月3日に総統府で行われたビストルチル上院議長との会談で「台灣和捷克一樣,走過反抗威權、爭取民主自由的艱辛道路    (台湾はチェコと同じく、権威に反抗し民主自由を勝ち取る為の困難な道のりを歩んできた)」と評価、「我們以民主經驗為榮,也堅持守護民主防線,致力維護區域的和平、穩定和發展    (我々は民主の経験を誉れとし、民主主義の防衛線を守り抜くことで、地域の平和、安定と発展に尽力していく)」と、東アジア地域に於ける台湾の役割を強調しました(中華民國總統府 総統府ニュース2020年9月3日)。

 また訪台を前に今年1月に亡くなったヤロスラフ・クベラ前上院議長について「為了提升台灣與捷克關係,做過許多的努力 (台湾とチェコの関係緊密化の為に大いなる努力を払った)」として、故クベラ前上院議長に対して「特種大綬卿雲勲章」が授与され、ビストルチル上院議長が代理として蔡総統から勲章を受け取りました。この卿雲勲章は顕著な貢献があった外国人及び民間人に贈られるもので一等から九等に分かれており、「特種大綬」は一等に当たります(中華民國内政部 勲章條例施行細則)。最高位の勲章授与、台湾がチェコとの関係を如何に重視しているかが窺えます。

■「我是台灣人」に込められた思い

「我是台灣人」はトップニュース(画像は三立ニュースから)

 9月1日ビストルチル上院議長は立法院(国会)で演説を行いました。外国の議長が立法院議場で演説を行うのは45年ぶり、人々は大きく注目しました。ビストルチル議長の演説では民主主義国家の団結が訴えられました。そして演説の終盤ビストルチル議長は、ジョン・F・ケネディ米大統領が1963年に西ベルリンで行った演説で、「私はベルリン市民である」とドイツ語で述べ、民主主義の重要性と共感や連帯を示したこと引き合いに出し、中国語(マンダリン)で「我是台灣人」と言い、演説を締めくくりました。

 この言葉に議員は総立ちとなり、議場は大きな拍手と歓声に包まれました。ビストルチル議長はこの言葉に、中国に対する台湾との共感や連帯の気持ちを込めたのです。マスコミはこの演説を言葉の意義とともにトップニュースで伝えました。この台湾へのエールに、人々は大きく反応しました(以下 Facebook,Youtube ,批踢踢實業坊から)

捷克竟敢不顧中共反對! (チェコが中国共産党の反対を顧みないなんて!)

捷克要帶頭在歐盟吹響反支共的號角 (チェコはEUでの中共支持反対の旗頭になるべき)

と、その対中姿勢を称賛する声や、

民主/自由/人權是世界潮流之所趨 (民主/自由/人権 これは世界の時勢だ)

自由萬歲 (自由万歳)

と、民主自由主義を称える声、そして

這句震撼人心。台灣加油,台灣人加油 (人心を震わす言葉。台湾頑張れ 台湾人頑張れ)

捷克人有勇氣承認台灣 真的很高興 加油 台灣 (チェコの人が勇気を持って台湾を認めた 本当に嬉しい 頑張れ台湾)

真的很感動議長發言這麼認同台灣 (議長がこんなにも台湾を認める発言をするなんて本当に感動だ)

と、自分たちの役割に自信を深める声が多数ありました。

 チェコといえば1968年のプラハの春が有名です。共産党の独裁体制に市民が反旗を翻し、ソ連主導のワルシャワ条約機構軍による軍事介入を招いた世界史的事件がありました。東側世界の盟主・ソ連の圧力に屈しなかった当時のチェコスロバキアの人々の勇気が、今、中国の圧力に苦しむ台湾に味方をしてくれていることに人々は胸を熱くしたのです。

■チェコの通販サイト「私は台湾人」Tシャツ 台湾から注文殺到

大人気の「Wo shi Taiwan ren」Tシャツ(politikunatriku.czから)

 ビストルチル上院議長の「我是台灣人」、チェコで政治理念をプリントしたTシャツを扱う通販サイト「politikunatriku.cz」は早速、「我是台湾人」の発音をローマピンイン表記でプリントした「Wo shi Taiwan ren」Tシャツを販売しました。

 このTシャツに台湾からの注文が殺到、同店は「親愛なる台湾の友人へ」として「海外からの注文を想定していなかったため現在対応中」のコメントを急遽掲載するという事態になりました。

 その後、9月13日に「もうすぐ直送できる」とのメッセージが掲載され、台湾の人も一安心です(私もこのTシャツ購入希望者です)。

■台湾人としての自信と台湾人意識の再認識

 台湾は中国という大きな脅威にさらされています。近年台湾との関係を断ち切って中国と国交を結ぶ国が増え、台湾が外交関係を持つ国は世界でわずか15か国に過ぎません。孤立する台湾に対し、中国側の反発を押し切り台湾を訪問したチェコ代表団の訪問、そして自由と民主主義の台湾を支持する立場を示したビストルチル議長の言葉、それは台湾の人々に大きな自信を与え、台湾人意識の再認識に重要な意味を持つと思います。

 台湾も外相自らの出迎え、総統からの勲章の授与と、チェコを重要な関係国と見做していることがわかります。コロナの封じ込め成功もあり世界からの注目が高まっている現在、自由主義国家「台湾」の国際社会での認知度向上と地位向上のチャンスではないでしょうか。

 東西冷戦下の世界を驚愕させたプラハの春から21年後の1989年、ベルリンの壁が崩壊し、23年後の1991年にソ連は解体されました。2020年、プラハから台北に吹いた風で、世界はどう変わるのでしょうか。

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