連邦最高裁命令 郵便投票無効への布石か
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
最新記事 by 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)
- 見えてこない導入の必要性 分娩費用の保険適用化 - 2024年11月18日
- 検討会で弁護士暴論「産科医は医療安全に前のめり」 - 2024年11月16日
- ズレてる安藤優子氏 窓際指定席を外国人に「どうぞ」 - 2024年11月12日
混迷の度を増す米大統領選で11月6日(日本時間同7日)、米連邦最高裁のサミュエル・アリート判事がペンシルベニア州での開票について、11月3日以降に届いた郵便投票を別個に集計するように命じた。この命令は、投票日後に届いた郵便投票が無効とされる可能性を秘めていると考えることができる。ハワイ州のアーロン大塚弁護士に聞いた。
■州最高裁の決定に対する連邦最高裁による判断
連邦最高裁アリート判事の決定は、ペンシルベニア州で11月3日以降に届けられた郵便投票の集計を即時差し止めるよう求めた共和党の訴えを退けた。集計を継続する判断を示したことで、日本での報道ではトランプ大統領側の訴えが認められなかったことに焦点が当てられている。
しかし、事態はそう単純なものではなさそう。なぜなら、連邦最高裁はただ単純に訴えを退けたのではなく、郵便投票を別個に集計するように命じているからである。この点は少し話が複雑なので、整理が必要であろう。
発端は9月27日、ペンシルベニア州最高裁が投票日までの消印があれば、最大3日後までに届いた郵便投票を集計に入れて良いという判断を示したことにある。これに対し、トランプ大統領の共和党は異議を申し立て上訴。連邦最高裁は10月28日、優先審理を行わない判断を示したことで、ペンシルベニア州最高裁の決定が当面、維持されることになったのである。
ここで注目したいのは、連邦最高裁はペンシルベニア州最高裁の判断を正しいと認めたのではなく、正しいかどうかを判断するための審理を優先的に行わないことで、当面、州最高裁の決定を維持させた点である。
■11/3以降の郵便投票を別個集計命令の持つ意味
そのような状況で、ペンシルベニア州での11月3日以降に届いた郵便投票を別個集計することを命じた意味は小さくない。その点をハワイ州のアーロン大塚弁護士は、以下のように語った。
アーロン大塚:私見であるが、アメリカ合衆国最高裁判所(※筆者注:連邦最高裁)はペンシルベニア州最高裁判所の投票日を事実上3日延長させた宣言判決の違法性に注目していると思う。9月17日、ペンシルベニア州最高裁判所が投票日を3日延長したことは連邦法に抵触して違法であると思う。何故ならば連邦法(3 United States Code, U.S.C.)1条に「大統領と副大統領の選挙人は、各州で、11月の最初月曜日の次の火曜日に、大統領と副大統領の選挙の4年目ごとに継続して選任する」とあるから。原文では「Shall」となっているため、11月3日に必ず選挙が行われなければならない。従って11月3日以降の投票は無効であるという解釈が普通である。
※連邦法(United States Code, U.S.C.)1条:The electors of President and Vice President shall be appointed, in each State, on the Tuesday next after the first Monday in November, in every fourth year succeeding every election of a President and Vice President.
アーロン大塚弁護士の解釈では、9月17日のペンシルベニア州最高裁の宣言判決が違法である、即ち11月3日以降の郵便投票は無効とされる可能性があるということ。連邦最高裁もそう考えているため、郵便投票を別個集計する命令をしたという推測である。同弁護士は続ける。
アーロン大塚:連邦管轄のことは連邦法が州法より優先するというプリエンプション(Preemption)の原則があるため、ペンシルベニア州裁判所は連邦法(3 United States Code, U.S.C.)で規定された選挙の日を変える権限はない。
■日本の報道は正確に事実を伝えているのか
繰り返すが、連邦最高裁はペンシルベニア州最高裁の宣言判決の違法性について、優先審理を行わないという決定をしたに過ぎない。今回の事態を受け、実際に審理を行って、それが違法であるということを判断する可能性はある。
違法と判断した場合、11月3日以降に届いた郵便投票の無効とするためには、別個に集計させておく必要がある。その可能性を考えての連邦最高裁の決定という判断である。
アーロン大塚:今回のペンシルベニア州最高裁判所がしたことは、別の国の裁判所が他国の法律を変えるような侵害行為である。更に言えば、裁判所が立法で作られた法律を変えるというのは三権分立の観点からでも違憲である。裁判所が宣言判決という形で選挙日期限を延ばしている。法律を解釈する立場である裁判所が、現実には法律を作っている。
米国の弁護士の判断を聞くと、日本の大手メディアの報道とはかなり意味合いが違うことがお分かりいただけると思う。