感染拡大の台北 買い占め&小競り合い

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葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼

京都産業大学外国語学部中国語学科、淡江大学(中華民国=台湾)日本語文学学科大学院修士課程卒業。1998年11月に台湾に渡り、様々な角度から台湾をウオッチしている。

 国内感染者1500人死者12人と徹底した防疫対策で新型コロナウイルスを抑え込み、世界的に高い評価を受けてきた台湾ですが、ここにきて国内感染者数が急増、緊張が高まっています。

■台北市・新北市 警戒レベル「3」に引き上げ

龍山寺での消毒作業(ETtoday新聞雲2021年5月21日から)

 4月末、中華航空乗組員の間で新型コロナウイルス感染が相次いで確認されました。その後これに関連するであろう感染者を新北市で確認、さらに5月11日北東部宜蘭県で感染経路不明の国内感染者6人が確認されました。これを受け中央感染症指揮センターは、台湾が市中感染の段階に入ったとして、新型コロナウイルス警戒レベルを「2」に引き上げることを決定しました。

 6月8日までの4週間の期間中は外出時のマスク着用義務、屋外500人以上室内100人以上の集会の停止、「実名登録制」の実施、台湾鉄道と高速鉄道での自由席特急券の販売禁止等の感染拡大防止措置が執られます。

 その後も国内感染者は増加の一途をたどります。13日には北部で複数発生したクラスターで13人の国内感染が確認されました。このうち台北市では観光名所龍山寺付近を中心とした区域で複数の感染者が確認されています。同市は同区域を感染高リスク地区に指定、居住民の出入りを制限した上で徹底した消毒作業を行いました。

 しかしこのような防疫措置強化にもかかわらず、国内感染者は日増しに増加、16日時点で206人に達し、過去最多数を更新しています (衛生福利部疾病管制署2021年5月16日)。

 感染者数増加を受け中央感染症指揮センターは北部台北市・新北市の警戒レベルを上から2番目に高い「レベル3」に引き上げることを決定しました。これにより映画館、カラオケボックス、フィットネスクラブやボーリング場などレジャー施設の閉鎖、宗教活動や祭祀活動の停止、スーパーやデパートの屋内入場人数制限、外出時のマスク不着用には3000元(約1万2000円)以上1万5000元(約5万4000円)以下の罰金といった厳しい防疫措置が執られることになりました。

■市長の発言に混乱の人々 買い出しに長蛇の列も

多くの人が買い出しに訪れ混雑する店内(撮影・葛西健二)

 複数のクラスターが発生した新北市の侯友宜市長は12日、ロックダウンの可能性も排除できないとコメント、これを台湾各メディアが大きく報じました。この影響で新北市と台北市では備蓄品購入のため、市民が家族総出でスーパーに殺到、大量のトイレットペーパーやインスタントラーメンを抱えた人々でレジには長蛇の列が続きました。

 私もトイレットペーパーを買うため近所のスーパーを訪れたのですが、売り場では小競り合いが発生、店内の空気も張り詰めたもので、異様な雰囲気が漂っていました。

 混乱のきっかけとなった侯市長の発言に、中央感染症指揮センターの指揮官で、鉄人部長の異名を持つ陳時中衛生福利部部長(参照:コロナを圧倒 台湾の”鉄人部長”支持率91%)は「不曉得他的封城標準為何 (侯市長の言うロックダウンの基準が何なのかわからない)」と冷ややかに対応(自由新報2021年5月16日)、また隣接する台北市の柯文哲市長は現段階で市民の不安を煽るべきではないとして「不要亂喊  (むやみに言わないよう)」との発言をしています (新頭殼newtalk 2021年5月12日)。

買い物客が殺到し、スーパーの棚はほぼカラの状態(撮影・葛西健二)

 台湾では行政がITを積極的に利用、導入しています。新型コロナウイルス関連では全国薬局のマスク在庫量がわかる「マスクアプリ」や予約システム「eMask」によって、マスクの円滑な供給を実現することができました(参照:朝日新聞に在台邦人激怒の理由)。

 12日から飲食店を中心に利用者が入店の際に氏名及び携帯電話番号等の登録が義務づけられる実名登録システムが全国で開始されました。入店客は入り口にある専用QRコードから氏名等必要事項を登録して店内に入ることになります。

 この制度は飲食店だけでなくスーパーやコンビニエンスストア入店の際にも適用されます。台湾では昨年から野球場やコンサート等大型イベントでは観客の実名登録制が導入されており、今回の全国運用に関しても拡大防止に繋がることから戸惑いや不満の声は挙がっていません。

■要請ではなく強制だが…防疫最優先で我慢の人々

 今回の感染者数増加に対し、中央感染症指揮センターは迅速に制限措置を厳格化し、さらに拡大しました。

 私は12日夕、桃園野球場にて飲食の開店準備をしていたところに、開場30分前に突然の飲食提供禁止、続いて6月8日までの無観客試合決定が通達されました。事が事とはいえ、要請ではなく強制的決定にスタッフや開場を待っていた人々も皆やるせない面持ちでしたが、仕方がないといった感じで「これが最善だろう」「感染防止が第一だ」と各々現状を受け入れていました。

 台北市・新北市で実施されているより厳しい防疫措置にしても、市民は不満の声を上げず、危急の事態に対処しようとしています。かつてSARS(重症急性呼吸器症候群)で起きた恐怖と混乱の記憶があるのも一因だと思います(参照:新型コロナウイルスは中国からの”挑戦” 蔡英文総統の徹底した対策に政治の匂い)。

 あの時の体験があるからこそ、政府の厳格な防疫措置を信じ、一人一人が大規模なコミュニティ感染を防ごうと努めているのではないでしょうか。台湾政府の徹底した感染拡散防止措置と人々の防疫意識、注目される感染拡大防止措置実施の4週間です。

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