川口市在住クルド人に聞く(後編)

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 川口市在住のクルド人男性、ユージェル・マヒルジャン氏(31)に聞く連載の後編をお届けする。地域との共生の考え方、日本への思い、そして、入管法改正についての考えを聞いた。「日本に来て悪いことをする人は国に帰ってほしい」という衝撃的な言葉も飛び出た。

◾️地域との共生のための行動

会社の周囲で草取り(写真提供・マヒルジャン氏)

  現代の日本ではしきりに多文化共生の重要性が強調されている。多くの外国人が日本にやってきてコミュニティーを形成することで、地域の住民との軋轢が生じることは避けられない。そうした時に、違いを理由に排除するのではなく互いの文化を認め、理解し、尊重することが多文化共生とされる。

 そうした相互理解のためには生活エリアでの法令だけでない地域のルールを遵守し、文化の違いは内包しつつも良き地域住民となることが前提なのは言うまでもない。残念ながら現在、川口市や蕨市ではそうした地域のルールが一部の外国人には守られていない現実がある。マヒルジャン氏は地域との共生についてはその点の解消に心を砕いていることを強調する。

ーー地域との共生のために、どのような活動をしていますか

マヒルジャン氏(以下、マヒルジャン):会社(株式会社マヒル、本社・川口市)の人と毎週、蕨市でゴミ拾いをしていました。会社の周囲のゴミ拾いや草取りもしています。

ーーこうしたことをするのは、地域への貢献のためですか

マヒルジャン:もちろんです。近所の方も見てる人は見てくれています。近所の方に頼まれて(私道と思われる)道路の補修をすることもありますし、お中元やお歳暮をご近所に配っています。ただ、そうやって地域のための活動をしても、マナーの悪い外国人が1人、2人出ると、外国人全体が悪い評判になってしまうのは残念です。

ーー他の外国人の方はそういうことはやっているのでしょうか

マヒルジャン:やってないと思います。ウチだけでしょう。昔、僕のじいちゃんが「私が亡くなっても、私という風がここを通ったことを思ってほしい」と言いました。「自分の地元、住んでいる場所に何かを返したいという思いがあるなら、お金をつかうのではなく、人間(自分自身)をつかいなさい」とも言いました。それらの言葉の印象が強かったのが、そういうことをする理由の1つです。

◾️「何度、喧嘩したことか…」

 こうした地域との共生、共存は、ただ一人、マヒルジャン氏だけが心がけていれば実現する問題ではない。現実問題として同市ではクルド人による迷惑行為があると一般に思われており(マヒルジャン氏はトルコ人によるものとする)、川口市に住むトルコ国籍の住民1382人(第2次川口市多文化共生指針 改訂版 2022年1月11日現在、住民票のある者に限る)の多くの人に意識してもらわないと川口市民は安心することはできない。

 もちろん、マヒルジャン氏1人ができることは限界があるし、また、同氏が1人が全責任を負うべきものではない。その点を聞いてみた。

ーー川口市にいるクルド人やトルコ人の方には注意しているのでしょうか

マヒルジャン:色々と言ってます。「子供を学校に行かせなさい」、「公園に遊びに行かせる時は遅くまでいないようにしなさい」、「公園で大声を出さないようにしなさい」、「コンビニの前でたむろするのはやめなさい」。トルコでは日本のように居酒屋で飲む習慣がありません。みんなビールを持って(公園や仲間の家の前に)集まって飲む、それが当たり前ですから、日本でもやってしまいます。「そういうのはやめろ」と言いますが、それで何度、喧嘩したことか…。「ここに座るな」「ここでタバコを吸うな」と言っても「お前には関係ない」「お前は警察官ではないだろう」などと言い返してきて喧嘩になります。

ーー言う相手はトルコ人ですか?

マヒルジャン:そういう細かいマナー違反みたいなのはクルド人もトルコ人もいますが、トルコ人が来るようになってから増えました。2015年あたりからです。ただ、新たにできた(トルコ人、クルド人の)店にも集まるようになったので、少なくなってきているように感じます。

◾️教えていくことの重要性

トラックには大きな日の丸(写真提供・マヒルジャン氏)

 こうした呼びかけは男性に対してだけではない。今後は週に1回、女性に子供と一緒に公園の掃除をするように呼びかけていくプランがあるという。とはいえ、地域との共生はそう簡単ではない。

ーー残念ながら、今、川口市ではクルド人かトルコ人か分からないけれども迷惑な行為があって市民が困っているわけですが、どうやってなくしていけばいいのでしょうか

マヒルジャン:地域にはルール、マナーがあります。トルコ人もクルド人も一緒になって地域の人とコミュニケーションをとり、行動することだと思います。そのためには教えることが一番大事です。日本に長くいる僕たちが、日本や地域のルールをクルド人、トルコ人に教えていくのが一番いいと思います。

会社の屋根にも日の丸(写真提供・マヒルジャン氏)

 取材の途中、株式会社マヒルの周囲を2人で歩いた。その間、マヒルジャン氏が近所の住民と親しげに挨拶をする光景を複数回、目にした。近所付き合いから地域での生活、共生が始まることを知り、実践しているのはそうした点からも想像がついた。

  地域との共生を図る延長線上にあるのか、マヒルジャン氏の日本に対する愛は特別なものがある。会社の屋根には大きな日の丸が描かれ、Googleマップで見ると一目で分かるようになっている。

 また、ボランティアで支援物資を運ぶトラックにも、大きな日の丸が描かれている。

ーートラックや会社の屋根に日の丸を描いているのはなぜですか

マヒルジャン:日本が大好きだからです。今の僕があるのは、日本にいたからこそです。日本のお陰で家庭も、可愛い子供も持てました。僕は日本に恩返しをしないといけません。一生借金を負っている気持ちです。そういう気持ちを日本に来るクルド人、トルコ人は持ってほしいと思っています。子供たちには、この国の役に立つ人になってほしいと思っています。

◾️2020年渋谷署へのデモ

 こうした言葉に感銘する日本人もいるかもしれないが、それでもクルド人の行動は容認できないと考える人もいるかもしれない。

 2020年5月30日、クルド人男性(当時33)が警察官に押さえ込まれた事件に抗議するクルド人の人々を含む200人が警視庁渋谷署の前で抗議のデモを行った。これらの行為に違和感を覚えた日本人は少なくないと思われる。当サイトでも実際にそのデモを肯定的に扱ったメディアを批判した(参照・渋谷署に聴いたクルド人問題…偏向報道やめろ)。

ーー警察官の正当と思われる職務執行に対して、抗議のために集団で警察署を取り囲んでその業務を妨害するかのような行為は許されないように思います

マヒルジャン:僕たちは(そのデモに)行っていません。逮捕された男は既に事故で死亡していますが、僕たちとはグループが違いました。彼は名古屋在住で、都内で仕事をしていて(クルド人以外の)仲間がたくさんいました。だから「クルド人(だけ)が押しかけた」というのは正しくないと思います。(一般的な話として)僕たちは家族を大事にします。誰かに何かがあると、みんな集まります。なぜなら、僕たちは家族だからです。ただ、その事件でそういう形で押しかけるのは良くありません。(発端の事件が)大きなことではないし、警察官に押さえつけられたからといって集団で抗議に行くのは良くないと思っています。

ーーこの騒動から、日本人の中には(クルド人との共生は無理、価値観が違いすぎる)と感じる人が出てくると思います

マヒルジャン:(逮捕された男の)家族には、法律で戦うのがいいんじゃないか、それが正しいルートだと思うと話をしていました。しかし、事件がネット上で流れて(そうではないだろう)という意識になったようです。

ーーマヒルジャンさんはそのような形の抗議は良くないと考えているのですね

マヒルジャン:(そのようなやり方を)認めてません。

◾️悪いことをする人は国に帰ってほしい

 日本への思いを熱く語るマヒルジャン氏であるが、改正入管法によって、強制退去の可能性はある。見通しを聞くと「厳しいですね」と一言。しかし、周囲には、日本への思いを忘れないように言い続けているという。

マヒルジャン:この法案が出された時に言ったのは「もう、この国にいられなくなる、平和な生活ができなくなる」ということです。本当に日本が好きならルールを守り、言われたことをして、もし、法案に反対するにしても、(デモ等の)許可をとった上で反対するのがいい。子供達は手紙を書いて、思いを伝える。本当にこの国にいたいと思ったら、みんなも努力しなければならないということです。本当にこの国が好きだということを証明しなさい、と言っています。

ーー入管法改正はクルド人だけの問題ではありませんね

会社の前に立つマヒルジャン氏(撮影・松田隆)

マヒルジャン決して特定の地域の人に文句を言うわけではないことは、分かってください。妻が南米出身なので分かるのですが、永住権を持っている南米出身の人で、本当は必要ないのに生活保護を受けている例があるように感じます。彼らは日本に恩返しができているように見えません。永住権もビザもない僕たちは彼らのように恵まれていないのは事実です。僕たちも彼らのように認められたいと思っています。ただ、そのためには「難民だから認めてよ」ではないと思います。ルールを守る、税金を納める、やってはいけないことはやらない、そして、やるべきことをやっていれば入管もきっとそういうところを見てくれるのではないでしょうか。日本に来て悪いことをする人はいりません。そういう人は国に帰ってほしいです。今、入管からクルド人、トルコ人のリストを見せられたら、僕は「この人いらない」「その人も、あの人も」とチェックできます(笑)。日本の役に立たない人は、僕たちもいらないのです。

 マヒルジャン氏は日本人から「あなたのような人がもう、2、3人いればいいんですけどね」と言われるという。周囲からそのように言われる人でも、日本が法治国家である以上、改正入管法の適用で強制退去とされる可能性はある。

 ただ、日本にいる外国人に対してどのような考えを持つにしても、様々な人々の声に耳を傾けることを疎かにすべきではない。多文化共生は相手を知ることから始まる。それは厳格な法の適用と相反する性質のものでないことは認識しておきたい。

(終わり)

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"川口市在住クルド人に聞く(後編)"に6件のコメントがあります

  1. 野崎 より:

    NPO難民支援協会

    クリスチャン、故犬養道子女史が深く関わった団体。
    今は左翼に支配された。

    難民支援協会は主張する。
    以下HPより一部引用。

    ●日本に「偽装難民」がいることは問題?
    「偽装難民」の定義は不明瞭ですが~~~

    就労資格を得たいという理由だけで難民申請をしている人がいることも事実です。そ
    の背景には、人手不足にあえぐ企業の存在がありながら、移民労働者の受け入れを認めてこなかったという日本政府の立場があります。~~

    引用此処まで
    つまり偽装難民の存在は日本が悪いと、
    偽装などせずとも済む様にすんなり移民を受け入れろと、

    東京新聞は現況を鎖国状態であると
    >2023年4月28日 · 入管法改正法案「命と権利」ないがしろ…衆院委で可決 「鎖国」状態~

    つまりコスモポリタニズム、ファシズムが実態なのだ。
    コスモポリタニズム
    全ての人間は、国家や民族といった枠組みの価値観に囚われることなく、ただ一つのコミュニティに所属すべきだとする考え方である 。世界市民主義・世界主義とも呼ばれる。

    移民を利用した破壊工作なのだ、LGBTも同性愛者を利用した破壊工作なのだ。
    武蔵野市における住民投票条例案(事実上の外国人参政権)問題はその破壊工作が、女性ファシストの稚拙な戦術のあやまりにより露呈したのだ。
    労働力不足などとは基本関係が無いのだ。

    ファシスト共のなんでも日本が悪い論(慰安婦しかり奴バラの戦略)に関し
    ファシスト故小田誠(べ平連、ベトナムに平和を市民連合を創設した、北朝鮮信奉者でありソビエト崩壊後、KGBより資金提供を受けていたことがソビエト公文書により露呈したスパイであった。)の主張を上げておく。

    ウィキより一部引用。
    >1963年に日本が韓国との国交正常化に歩み始めた時から北朝鮮とも国交回復していれば、拉致はなかった。
    ~~~~
    一方、日本は朝鮮半島を植民地化する国家犯罪を犯した。金正日(総書記)は少なくとも拉致について謝罪したが、日本は従軍慰安婦問題で謝罪も補償もしていない。今こそこれをすべきだ。日本が国家犯罪を清算せず、国交ができないために、北朝鮮の国家犯罪による自国の犠牲者を生んだ。

    引用此処まで。

    辻元清美の主張と同じである。

    70年代ベトナム戦争当時、毎週末新宿西口広場では反戦大集会が開かれた。
    自衛隊に入ろう!なる歌が大合唱され、べ平連も、自衛隊に入って死んじまえ!と歌った。

    奴バラは自分たちの意にそわない者は死ね!というのだ今も昔も、、
    又べ平連は当時からマリファナ解禁を提唱していた。
    マリファナ解禁はフリーセックス(現LGBT問題)と合わせて奴バラの望む世界の実現だ。

    ご返信は不要です。

  2. 野崎 より:

    久夫十蘭の小説を引用してのコメントがアップされず残念です。

    私は移民反対論者ではありません。

    日本人のブラジル、ハワイ移民や華僑のあり方などを上げ他国で問題を起こさず平穏に生きればよい、それだけこのこと、とコメントしました。

    久夫十蘭の小説は米国で戦前、戦中、戦後をやくざな生き方ながら、それでも問題を起こさず生き抜いた日本人移住者を描いて生々しいものがあり参考になるとおもいました。

    そして例のごとくファシスト~!とのコメントへ連なるのですが。

    ●他国で問題を起こさず平穏に生きる、暮らせばよい。
    それが出来ていない、積極的に行わない者達が存在する。
    よって問題が惹起している、ではどうすれば、、

    取り締まり、最終的には帰国させればよい。
    しかしそれも困難、出来ない、よって死亡したスリランカ女性の問題がある。
    という状況でありそれを望んでいる者達がいるということと考えます。

    移民による欧米での混乱は正にその証左でしょう。

    出来ない、のと、しない、行わない、は別であり。

    別記事
    ●厳重注意れいわ大石晃子議員 公安調査庁は監視を

    社民党こそ監視対象であったはず、それを行わなかった。(その根拠は長文となり割愛)
    ある意味の移民である在日朝鮮人の不法行為をあえて取り締まらなかった。

    この事実があると思います。

    現外国人犯罪への対応にゆるい、不可解なものがるとの指摘もあります。(ソースは割愛)
    社会は一次方程式では解けないということでしょう。

    相手を理解すること、互いに理解し合うことが必要だ、に対して。

    極端ですが、勝海舟の、皆敵が良い、という言葉があり、これはもちろん現実問題に敷衍すべきといういことではありません、ヒューマニズムの仮面を看破しての言葉でしょう。

    相手を敵と認識し、位置付けることでかえって上手くいく。
    日本人には敵ながらあっぱれ! 敵に塩を送る、欧米では、汝の敵を愛せよ、の次元があります。

    なお、私は東京町田市の生まれ育ち、朝鮮学校、朝鮮総連の支部、そして、町田、田んぼ、で検索すれば出て来る、かの有名な、朝鮮人が不法占拠して経営していた違法青線区域が存在した町です。

    そして在日も学ぶクリスチャンスクール、桜美林学園に学び、小学生の頃よりの在日の友人が何人かおります。
    今も音信があり忌憚なく問題を語れる者達です。

    数年前、時々TVCMに出る、川崎の部落出身の方とも知遇を得ました、この方も柔軟に問題を語れる人物です。

    ご返信は不要です。

  3. BADチューニング より:

    >今、入管からクルド人、トルコ人のリストを見せられたら、僕(=マヒルジャン氏)は「この人いらない」「その人も、あの人も」とチェックできます(笑)。日本の役に立たない人は、僕たちもいらないのです。

    それもどうだか。
    貴方=マヒルジャンさん、がクルド人の“代表”と言う訳じゃないだろうし。

  4. 野崎 より:

    ●賽銭箱を蹴り破壊する外国籍の男 毎日放送  5・23・ 19:20
    参拝者は
    神様イスラム教のアッラーしかいないから、ここに神はいないのでここで祈るな』と言われた

    私のコメント 

    ユーチューブ その他ニュースサイトでの難民、イスラム教に関する私のコメントは100%削除されている。

    以下は即刻削除された。(賽銭箱破壊に関しての)

    この男性個人の問題ではありません。
    イスラム教、イスラム教徒の問題です。

    エジプト考古学者 吉村作治氏は指摘する。吉村氏はイスラム教徒の女性と結婚し長年エジプトで生活した。

    ●イスラム教徒の頭の中 吉村作治著
    より引用。
    アラブ人の中のムスリムは(イスラム教徒)例えばISの様な極端な思想ではなくとも、
    イスラム教以外の宗教がこの世を悪くしていると本気で思っていること頃が怖いと言えば怖い。
    とにかく預言者ムハンマドを始めイスラム教関連の事を悪く言おうものなら、
    何をされるかわからないといっていい。

    引用此処まで。

    イスラム教の危険性は飯山陽しも指摘している。

    暗殺命令を受けての悪魔の詩翻訳者殺人事件(筑波大助教授殺人)は特異な例ではないと言ってよい。

    相手を理解すればよい、異文化共生、多様性などありえないのだ。
    ハンチントン文明の衝突の状況がいずれ也。
    そしてこの状況を望んでいる者達、実際に活動している者達が存在するのだ。

    ご返信は不要です。

  5. 畑のコチ より:

    始めての参加で、失礼致します。
    異文化共生、多様性、相手を理解…と美辞麗句を並べ立てるグローバリストの大声にはうんざりしています。
     ことの起こりは自己主張の集団にあり。空、空気、水、野菜一つ手作りできない者が偉そうに何いうか。自画自賛を止めて謙虚に。

  6. 匿名 より:

    日本が友好国としているのはトルコ。
    トルコと敵対するクルド人は自らの国家領土を持たず、トルコをはじめ他国を侵略する。
    歴史的にはオスマン帝国の崩壊によって居場所を失ったクルド人も被害者ではあるが、だからといってテロリズムで無辜の人々の平和を脅かす者を許すべきでは無いし、受け入れるべきでもない。

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