台湾はワクチンの恩忘れず 能登半島地震「義氣相助」
葛西 健二🇯🇵 @台北 Taipei🇹🇼
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元日に起きた能登半島地震、同じく地震多発地帯の隣国台湾では今回の地震への関心は高く、台湾メディアは連日被災地の状況を伝え続けています。ニュースサイトのコメント欄には、速報で地震を知った人々からの「天佑日本(日本に神のご加護を)」「日本加油(日本頑張れ)」といった祈りや励ましの声が寄せられています(台視新聞、TVBSNews、ETTodayなどのYoutubeチャンネルなど)。
◾️金沢駅で地震に遭遇した台湾人の声
蔡英文総統は同日に、「心よりのお見舞い」と「必要な協力を提供する用意があることを日本側に伝えた」とのコメントをX(旧ツイッター)に投稿しました(※2 蔡英文氏の投稿)。台湾メディアは、地震や被災地の状況を伝えるとともに、地震発生時に迅速冷静な行動を取る現地の人々にも注目をしました。あるニュースサイトでは、金沢駅で今回の地震に遭遇した台湾人観光客の目撃談として、駅構内の人々がパニックを起こさず冷静迅速に避難したことを挙げ、「平時的地震演練也相當確實(平時の地震避難訓練が非常に的確である)」と述べていました(TVBSYoutubeチャンネル)。
また日本の地震警報システムの精度の高さを挙げ、能登半島地震では発生30秒前に警報が発せられたことで、的確に対処・避難を行える「保命的30秒(命を守る30秒)」が存在したことを伝えていました(華視新聞2024年1月2日)。
さらに別のメディアでは、この地震警報が日本語だけではなく他言語でも表示されたことに注目しました。1月3日余震に遭遇した記者が日本へ持ち込んだスマートフォンに中国語で緊急メッセージが記されていたことを挙げ、このようなシステムには外国人にも迅速な対応を促すことができ、「系統設計考慮到其他國家的語境,安排得很周到(警報システムが他言語も考慮し設計されていたことが非常に周到である)」と評価しています。
これに合わせ記事内では台湾の警報が中国語と英語の二言語しか表記されないことにも言及、若し日本人が台湾で地震に遭遇し英語のメッセージが届いたとして、即座に意味を理解できない為時間の損失が生じるのではと提起、「建議政府權責單位可以參考日本的做法(政府の責任部署は日本の方法を参考にしたほうがよい)」と論じています(MirrorMedia1月3日)。
1月9日15時過ぎ、中国から打ち上げられた衛星搭載のロケットが打ち上げられ台湾本島南部の上空を通過したことを受け、台湾国防部は15時17分国家級警報(防空警報)を台湾国内のスマートフォンへ一斉に届けました。確かにこの際の緊急メッセージは中国語と英語の表記でした。この二言語に不慣れな外国人では、咄嗟に意味を理解するのは難しく、迅速な行動をとる妨げになる恐れもあると思います。なおこのメッセージは、中国語は「衛星発射」となっていたのに対し英語では「ミサイル発射」と記されていたことで混乱が生じました。これについて同国防部は誤記であったとして謝罪を行っています。
◾️政府と民間で復興支援
蔡英文総統はX(旧ツイッター)にて、故安倍晋三氏の「台湾有事は日本有事」の発言を「日本有事はつまり台湾有事」と置き換え、台湾が官民ともに日本を支援することを表明しました(蔡英文氏の投稿)。
台湾政府は1月4日、能登半島地震の被災地支援と復興協力のため6000万円の寄付を表明しました。同時に民間からの寄付を受け付ける「賑災專戶(義援金口座)」を作ると告知し(衛生福利部1月4日)、5日から銀行・郵便局・ATM・コンビニエンスストアの端末を用いた受付けが開始されました。なおこのシステムは2023年2月6日のトルコ地震被災地義援金送付の際に構築されたものです。
民間からの義援金は受け付け最終日の19日までに約25億4500万円(約5億4159万台湾元)に達しました。このような台湾の人々からの手厚い支援は、1999年9月21日に台湾中部で発生した「921大地震」に端を発しています。921大地震に際して、日本は国際緊急救助隊として国際消防救助隊員145名(これは各国から派遣された救助隊の規模として最大)を最も早く現地に派遣、災害現場での救助にあたりました。
信義を重んじる台湾の人々は2011年の東日本大震災の際、250億円を超える義援金と600トン近くもの支援物資を送り恩義に報いました。当時台湾社会は一体となって日本への支援へ動きました。それが921大地震時の日本の支援に対する「報恩(恩返し)」と「互相幫助(助け合い)」の気持ちから起きたというのが台湾社会での共通認識となっています。
その後2016年の熊本地震、台南地震や花蓮地震に対する官民含めた相互の支援活動等、助け合いの精神が発揮されてきました。そして2021年、新型コロナウイルスの国内感染拡大によりワクチンの確保が喫緊の課題となっていた台湾に、日本からのワクチンが緊急提供されました(参考・友情のワクチン台湾熱狂「雪中送炭」「患難見真情」)。
当時台湾はこれを「及時雨(恵みの雨)」と称し、人々からは日本に対する感謝の声が湧き起こりました。台湾ネットユーザーからは、能登半島地震の被災地への支援をこの時の日本の善行に対する「報恩(恩返し)」「義氣相助(義侠心の助け合い)」だとするコメントが多く寄せられていました。
日本捐疫苗的救命之情,我也會記住的,互相幫助!
(日本がワクチン提供で命を救おうとしたその気持ち、私は忘れていない、お互いに助け合おう!)
日本慷慨贈送疫苗救了無數台灣人的寶貴生命,台灣人深深感謝
(日本が正義心でワクチンを贈ってくれて無数の台湾人の尊い命が救われた、台湾人は心から感謝をしている)
また、
我們很喜歡日本,因為日本人對我們也很友善
(日本が好きだよ、とてもフレンドリーだから)
我們都是隔壁鄰居,有災難時會互相幫忙
(我々はご近所さんだ、災難時には助け合わないと)
現在就是輪到我們,讓善的循環能夠繼續延續下去
(今度は我々の番だ、善の循環を続けていこう)
と、助け合いの心を重んじる意見も多く見られました(コメントはYahoo!台湾、YouTube、Facebook、Xから)。
能登半島地震に対する台湾の反応そして官民含めた被災地復興支援の行動、そこからは「良き隣人」としての日台の良好関係、そして「互相幫忙(相互扶助)」を基とする「善的循環(善行の循環)」を続けようとする、義理人情に厚い台湾の人々の姿が浮かび上がってきました。