山本太郎氏被災地入り”善意という名の野心”

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 れいわ新選組代表の山本太郎氏が5日までに能登半島地震の被災地入りした。山本氏自身が、X(旧ツイッター)で、その事実を写真付きで投稿した。被災した自治体やその首長などは不要不急の現地入りを避けるように呼びかけているが、それを無視した山本氏の行動は強い非難に値すると考える。

◾️被災地で勉強させてもらう?

現地入りした山本太郎氏(同氏Xから)

 山本太郎氏は5日深夜に石川県の能登町に入ったとする投稿を行い、同時に4葉の写真を掲載した。被災地入りした理由は投稿の冒頭に以下のように示されている。

「この混乱状態も含めて国会議員に知ってもらいたい。」

「あまりの政府の後手後手に、命が蔑ろにされている」

電話ではなく、現場のNPOから直接話を聞くため、本日、能登半島は能登町に入った。

来週にも国会では災害特別委員会を開くような開かないような、生ぬるい動きがあるので、現場の声を、状況を知っておく必要がある。

明日は当事者に直接話を聞き、今、何が必要かをしっかりと勉強させてもらうと意気込み、車の中で眠ります。(1月5日午後11時33分投稿

 投稿を読む限り、現場の声を聞き、状況を知るために被災地入りしたようである。地震から4日、現場ではまだ救助活動が行われている真っ最中。5日朝には輪島市の坂口茂市長が倒壊した建物の下敷きになっている住民らが100人を超えるとの見方を明らかにしている(毎日新聞電子版・生き埋め100人超の見通し 石川・輪島市長が言及 能登半島地震)。

 救出の目処となる災害発生から72時間を過ぎ、一刻も早い救助が必要な時間、そして避難所に避難した人々も飲み水、食べ物が必要という時期である。それを国会の特別委員会があるようなので「現場の声を、状況を知っておく」「今、何が必要かをしっかりと勉強させてもらう」(山本太郎氏投稿から)ための現地入りに何の意味があるのか。

 現場の声を聞く、状況を知ることは必要ではあるが5日の時点での優先度はそれほど高くない。そうしたことが必要であれば、現場にいる地方自治体の職員や既に現地に入っているNPOに任せればいい。被災地は国会議員の国会対策や勉強のための場所ではない。

◾️被災者の命の関わる現地入り

 既にXなどで情報が拡散されているが、石川県の馳浩知事は5日午後に5日から8日までの間は「能登へ向かう道路が渋滞し、物資が届かない、患者の輸送回数が減っているなど救援部隊も大変困っています。…能登への不要不急の移動はくれぐれも控えてください。被災者の命に関わります。皆様のご協力を何卒お願いいたします。」(1月5日午後3時2分投稿)と、無関係の人が現地入りしないように呼びかけている。

 こうした現場の声を無視して現地に入るのは、自らが国会議員で特別な存在という驕りゆえではないか。2022年の参院選における同氏のポスターには「ここまで来たらコイツしかいない」というキャッチコピーがあるが、まさに「自分は特別」という驕りを感じさせるものとなっているのは偶然とも思えない。

 あくまでも一般的な話であるが、こうした大規模災害の時にはボランティアなどの救援活動をすることは、政治家にとって大きなポイントとなる。困っている人を救うために自分はこれだけ働いているということを示すのは自らの評価を高め、次の選挙結果にも大きな影響を及ぼす。そのため、被災地には善意という名の野心を持った政治家が集まる。先日紹介した募金活動をしながら自民党批判をする共産党県議(みわ由美氏)も似たようなものと考える人は少なくないはず(共産県議 ”被災者救援募金”に乗じ打倒自民訴え)。

 これは話題作りで広告収入を集めたいYouTuberなども同様の傾向がある。今回も早速迷惑系などと呼ばれたYouTuberが現地入りしている。

 こうした善意という名の野心、端的に申せば売名行為かどうかを簡単に見極めるのは、その事実をSNSに投稿しているか否かという点であろう。被災者の救援や、現場の状況を知ることが目的であれば、わざわざSNSで他者に知らせる必要はない。山本氏も国会の特別委員会に出席して、「現場ではこういう声を聞いた」「現場はこういう状況だった」と伝えて、災害救助のあり方を議論する材料とすれば目的は達成できる。

 山本氏は投稿で、自衛隊のキッチンカーについて触れている。2018年西日本豪雨の国会質疑ではキッチンカーを避難所に入れることを政府に要望していたことをリンク付きで示している。現場の声を聞き、現場の状況を知るための被災地入りを伝える投稿で、過去の自身の実績をアピールする必要があるのか、どうにも理解に苦しむ。

◾️江頭2:50氏と山本太郎氏

2022年参院選での山本太郎氏のポスター

 以上のことを考えれば、山本氏による投稿は、今回の被災地入りが「善意という名の野心」であることを自ら証明していることに他ならない。そのことに気付かずに現地での写真をアップする山本氏とその支持者は、観客の冷笑、嘲笑を「皆を笑顔にした」と喜ぶピエロに似ている。

 江頭2:50氏が東日本大震災時に救援物資をトラックで運び被災者を助けたことが大きな話題となった。この時、同氏はSNSなどには一切、アップせず、物資を受け取った人の間で話題になり、多くの人が知る結果となった。破天荒な芸風の同氏にとって善意の行動は逆の意味でイメージダウンになると冗談めかして語っていたようであるが、江頭2:50氏と山本太郎氏、どちらの行動がより被災者に寄り添っているか、答えは明白である(参照・ALT MEDIA 金額ではない!江頭2:50の寄付が日本中で称賛される理由とは)。

 山本太郎さん、見え透いたパフォーマンスはやめなさい。あなたの現地入りは被災地にとって迷惑でしかない。部外者は立ち入らないという不作為が、時として最大の支援・救援となることもあることを、いい加減、学んではどうか。

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