JAL元CA「乗客の大半が日本人は大きかった」

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 日本航空機が海保機と衝突、炎上した事件で同社の元CAが乗員・乗客379人全員が避難できた点について語った。そこには多くの幸運が重なったとし、乗員の落ち着いた行動と的確な指示だけでなく、乗客や飛行機自体にも全員が助かる要因があったとする。

◾️素直に指示に従う乗客

羽田空港での日本航空機(撮影・松田隆)

 1月2日に羽田空港で日本航空機が海上保安庁の飛行機と衝突して炎上、炎が迫る中、379人の乗客・乗員全員が避難する奇跡的な出来事であったように思われる。YouTube上では乗客が撮影した動画の多くが公開され、緊迫した状況が伝えられている。

 そんな中、日本航空の元CAであるAさんが当サイトに感想を寄せてくれた。Aさんは40代、元CAらしくスラリとした長身と、穏やかな話し方が印象的な女性である。今回の避難が成功した原因について、報道ではあまり伝えられていない点について指摘をした。

 「避難前の機内を撮影した動画を見ると、ほとんどの人が乗員の指示に従って鼻と口を手で押さえて伏せていました。それによって乗員が落ち着いて避難のための行動が取れたと言っていいでしょう。外国人の乗客ばかりだと言葉の壁もあるでしょうし、パニックになって乗員に『ドアを開けろ』と迫るなど言うことを聞いてくれない場合もあるでしょう。そうなるとCAも的確な指示が出せず、開けるべきドアを開けることもできなかったかもしれません。全員が助かったのは、国内線のため乗客の大半が(日本語を理解し、乗員の指示に素直に従う)日本人だったというのは大きかったと思います。」

 こうした話は今の時代、誤解を招きかねず、テレビなどの報道機関には口に出して言えない部分。長期間、現場にいた人間ならでは、匿名だからこそ言える話であろう。

 実際、乗り合わせた英国人と思われる男性が以下のように語っている。

I seen also the passengers they were really disciplined literally in within few minutes 370  people got off the plane with just two exits because they were just the two front exit on the left and the right there were no other exits and astonishing work.(Sky News・Japan Airlines crash survivor recounts being evacuated from flight

(私はまた、乗客たちが非常に規律正しく、わずか数分で370人がたった2つの出口から飛行機を降りたのを見ました。機体前方の左右にある2つの出口だけで、他には出口はなく、驚くべき仕事でした。)<※筆者註・実際は後方のドアの片方も開いたようである>

 また、日本人と思われる男性の乗客がCAの指示に従うように『大丈夫、大丈夫。乗務員の言う通りにして大丈夫』と声を出している動画が公開されているが、この点について、動画内である関係者は「これが一番大事。…CAの代わりに言ってくださっているということが心強いですし。そういった方が増えていくと、みんなで助かろうという気持ちで、落ち着いて行動できるということにつながるなということを実感しました」と語っている(ANN news CH・「緊迫の8分間」 JAL機乗客が衝突から脱出まで撮影…機体に炎 「肺突き刺す煙」充満【羽鳥慎一モーニングショー】)。このように乗客が自らを助ける行動であったという点は見逃せない。

 乗客が集団パニックにならなかったという以外にも幸運はあった。機体の炎上までに一定の時間を要したことである。これは積んでいる燃料による部分が大きい。Aさんは言う。

 「10時間程度飛行を続ける国際線に比べ、国内線は概ね5分の1から6分の1程度の燃料しか必要ありません。しかも今回は着陸時の衝突であったために燃料の多くを費消していました。もし、かなりの量の燃料が残る状況であったら、大きな爆発が起きて機体が吹き飛んでいたかもしれません。」

◾️機長の許可なしでも扉は開く

 機体が止まってから非常扉が開くまでに時間がかかった点を指摘、非難する声もある。女児が「早く開けてください」などと声をあげるシーンを目にした人も少なくないであろう。時間がかかった理由を機長の許可を得られなかったからと考える向きもあるが、その点は否定する。

 「機長との連絡がとれなくなったと報じられていますが、その場合でも客室乗務員の判断で扉を開けることはできます。炎・煙・機体の大きな傾き、機体の破損、それらが確認できたら機長の許可は必要ありません。一刻を争う緊急事態に機長に聞いている暇などないということです。おそらく、どの扉を開ければ安全に避難できるかを検討していたのではないかと思います。」

 そのための訓練は入念にされているという。

 「1年に1回、安全のための訓練を受ける必要があります。それをクリアしないと業務を続けられません。1年ごとに運転免許を更新する必要があるというイメージです。全ての乗務員が『大変だな』と思いながらも、その訓練をしています。」

衝突・炎上した日航機と同型機

 実は今回の客室乗務員は若手が多かったそうである。A氏はそれが幸いした可能性もあると言う。

 「今回の事故の後に後輩に聞いたのですが、クルーは若手が多かったそうです。新人は安全のための訓練にパスしないと乗務できません。そして、その訓練に落ちる人もいます。つまり、彼らは訓練にパスしたばかりで、非常時の対応をどうすればいいのかが体に染み付いています。訓練を受けたばかりなので、こうした場合に自分が何をすればいいのか、咄嗟に反応できたのではないでしょうか。」

◾️海保機で落命の方のご冥福を祈る

 海保機に搭乗していた5名の方が亡くなったことは非常に残念であり、ご冥福を祈りたい。また、日航機に乗せられて落命したペットも同様である。

 同時に我々は乗員・乗客が全員避難できたことについて、乗員の責任ある行動、その乗員を信じた乗客に感謝すべきと思う。

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