産経新聞一転して記者の賭け麻雀を公表

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 産経新聞が5月22日付け紙面で記者が取材対象者と賭け麻雀をしていたことを明らかにした。前日の紙面では「一切公表しない」としていたものが、一転して事実を認め読者に対してお詫びしたのである。

■21日付けは「一切公表しておりません」

産経新聞の賭け麻雀に関する紙面

 所属する記者2人が東京高検の黒川弘務検事長と記者が賭け麻雀をしていたことが週刊文春電子版で明らかになったものの、産経新聞は5月21日付け紙面では井口文彦東京本社編集局長名で「報道に必要な情報を入手するに当たって、個別の記者の取材源や取材経緯などについて、記事化された内容以外のものは取材源秘匿の原則にもとづき、一切公表しておりません」という見解を示した。

 ところが5月22日付けの紙面では一転して1面におわびを掲載。「…数年前から、特定の取材対象者と賭けマージャンを続けていたことが21日、社内調査で明らかになりました。今後、さらに詳しく調査し、処分する方針です。極めて不適切な行為であり、深くおわび申し上げます」とした。

 ただし、このお詫びは黒川検事長と賭け麻雀をしたこと自体には直接、触れていない。数年前から特定の取材対象と賭け麻雀をしていた事実を公表したに過ぎないことは注意すべきであろう。

 何れにせよ、1日で事情が変わったことは間違いないように思える。公表した点については「記事化した内容以外のことは、取材源秘匿の原則に基づき、一切公表しておりませんが、記者自身不適切な行為などについては必要に応じて公表しています」と理由を説明している。

 この説明も何とも腑に落ちない。なぜなら21日付け紙面では、取材過程での不適切な行為が伴うことは許されないという考えを示した上で、「そうした行為があった場合には、取材源秘匿の原則を守りつつ、これまでも社内規定に則って適切に対処しており、今後もこの方針を徹底してまいります」としていた。

 つまり、21日付けでは、「不適切な行為があった場合には、公表しないが(社内で)対処している」としていたものを22日付けでは「不適切な行為などについては必要に応じて公表」に変更しているのである。

■博多駅事件の判例も読むべき

 この点について、朝日新聞はすぐに自社の記者が黒川検事長と賭け麻雀をしたことを公表しているのとは対照的である。

 産経新聞は21日付け紙面までは「取材源秘匿」を金科玉条、不可侵のものと考えていたのではないか。賭け麻雀は賭博罪(刑法185条)に該当する場合がほとんどである(「一時の娯楽に供する物」を賭けた場合は除く)。その点は朝日新聞記者が「1回の勝ち負けは1人当たり数千円から2万円くらい」「13日は産経新聞の記者と朝日新聞の社員が数千円勝ち、産経新聞の別の記者と黒川検事長が負け、1日は朝日新聞の社員が負けた」(NHKのHP5月21日公開記事から)と明らかにしており、賭博罪が成立していることは濃厚である。

 そう考えると産経新聞は少なくとも21日付け紙面の段階では、記者が犯罪を通して取材したものでも取材源秘匿の原則が優先されると考えていると言ってもいい。その点を外務省機密電文漏洩事件(最高裁昭和53年5月31日決定)の判例を示して産経新聞の姿勢はおかしいと批判した(参考:賭け麻雀事件で問われる朝日・産経の報道倫理)。

 もう一つ、博多駅事件(最高裁昭和44年11月26日決定)の判例も示しておく。報道・取材の自由について考える際の大事な判例である。

 「取材の自由といっても、もとより何らの制約を受けないものではなく、たとえば公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは、ある程度の制約を受けることのあることも否定することはできない」。

 この判例を産経新聞の東京編集局長はしっかりと読むべき。「取材源秘匿は全てに優先されるわけではない」ということである。

■井口文彦編集局長は取材の自由を理解しているのか

 朝日新聞がどこまでこうした判例を意識したのか知らないが、直ちに黒川検事長と賭け麻雀をしていた事実を公表したのは、「取材源秘匿の原則」を産経新聞よりは柔軟に解釈していたからであろう。

 犯罪を通じて取材をした、そこで得られた情報まで秘匿されることは保障されないと考えたのだと思う。

 1日遅れで産経新聞が公表したのは自らの誤謬を認めたものと考えていいのではないか。21日付けは井口文彦編集局長名義の発表だったものが、22日付けは社としての発表となっているのも不自然に思える。本来なら編集局長が「昨日は私が会社の原則の理解を誤っておりました」というお詫びも出すべきではないのか。井口文彦編集局長には、博多駅事件の最高裁決定も読んで勉強することをお勧めしたい。

2 thoughts on “産経新聞一転して記者の賭け麻雀を公表

  1. この点に関してより悪質なのは主導者でもある産経の方ですね。朝日は対応早かったですね。不祥事慣れしていて火消しも慣れたものかもしれませんが。
    産経はネトウヨサイドは味方だとタカをくくっていたのかなあ。朝令暮改で右往左往がはっきり見てとれてみっともないですね。

    ところで弁護士ドットコムで新聞の押し紙認定問題について触れられていますね。
    https://www.bengo4.com/c_1015/n_11220/
    「予備紙2%以上は押し紙」とする判例が出たのだとすると、ほぼ全国の販売店が訴え起こせば勝てそうですね。
    この判決に対して大新聞社は総スルーのようですが。
    経営厳しい産経はついに引導渡される時かもしれませんね。
    不動産業で経営安泰な朝日も押し紙集団訴訟起こされたらどうなることやら。

    1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

      >>報道しない自由様

       コメントをありがとうございます。
       朝日は確かに不祥事慣れしているのかもしれません(笑)。

       僕も報道の現場にいて、産経新聞の「唯我独尊」的な姿勢には嫌悪感がありました。あれも会社の体質なんでしょうね。

       押し紙の問題は、産経新聞は他社に先駆けてやめたというのを聞いたことがありますが、どうなのでしょうか。それで一気に部数が減ったと聞いてはいますが。朝日新聞、読売新聞は押し紙が結構な量になると言われているようです。僕は真実は知りませんが。

       大手の押し紙が真実だとすれば、新聞販売店に負担をかけるやり方もそろそろ限界が近いような気がします。

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