ゴーン前会長3度目の逮捕、特別背任罪って分かってる?(毎日新聞12月22日付け社説から)

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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今日は12月22日付けの毎日新聞の社説に一言申し上げよう。社説のタイトルは「3回目のゴーン前会長逮捕 急展開する特捜部の捜査」。

日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が21日に特別背任罪で3度目の逮捕をされたことについて論じている。報道によると逮捕容疑は、ゴーン元会長側は2009年から2012年の間に、知人の口座に16億円超を入金させたというもの。これが私的な金融取引の損失を日産に付け替えて損失を与えた疑いとされている。しかし、毎日新聞は特別背任罪をあまり分かっていないで書いているように思える。

毎日新聞は特別背任罪を分かっているのか?

まず僕の方で説明すると、そもそも背任罪は刑法247条で規定される犯罪。ただし主体が会社の取締役の場合は、会社法960条以下で規定される特別背任罪が成立する。背任罪の法定刑は5年以下の懲役又は50万円以下の罰金、特別背任罪は10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はこれを併科する。取締役の犯罪は非常に重くなる。

毎日新聞の書いた社説の中で気になったのは以下の部分。「特別背任罪は、会社の取締役らが自己や第三者の利益を図る目的で会社に損害を与えたかどうかが立件の要件となる。特捜部が、16億円の入金を私的流用と立証できるかが今後の捜査のポイントになるだろう」。

毎日新聞がいう「立件の要件」とは、構成要件該当性ということなのだろう。そうなると特別背任罪の構成要件は「取締役らが、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、任務に背く行為をして、当該株式会社に財産上の損害を加えたこと」である。

毎日新聞のように「自己や第三者の利益を図る目的」には限定されず、株式会社に損害を加える目的でも成立する。そうなると16億円の入金を私的流用と立証できるかどうかは必ずしも捜査のポイントとならない可能性が出てくる。私的流用ではなくても、その知人すなわち第三者の利益を図る目的、あるいは株式会社に損害を与える目的でも成立するからである。捜査機関でもない毎日新聞社がどうして犯行の形態を特定できるのかは謎(笑)。

多分、毎日新聞は背任罪と横領罪の区別がついていないのであろう。法律に明るくない人が書いたのだろうな、と感じさせられる社説である。実は朝日新聞はこのゴーン元会長の3度目の逮捕について12月21日付けの紙面で社説では論じていない。そのあたりがクリアにできなかったのではないかと個人的には思っている。

毎日新聞さん、もう少し勉強してから書きましょうね。

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