ゴーン被告が出国 毎日新聞「これ以上、勾留の必要ない」報道の責任は?

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 日産前会長で、会社法違反(特別背任罪)などで起訴され保釈中だったカルロス・ゴーン被告(65)が12月30日に国籍のあるレバノンに入国した。メディアは大騒ぎだが、毎日新聞、朝日新聞は保釈に前向きな姿勢を示していたことはお忘れのようである。

■ゴーン被告12月30日にレバノン入り

今更、他人顔はなしでお願いします

 日産自動車の資金を私的に流用したとして起訴されているカルロス・ゴーン被告は、2018年11月19日に逮捕されている。2019年3月6日に1回目の保釈がなされたが、4月4日に再逮捕。同22日に起訴され、4月25日に2度目の保釈をされていた。保釈保証金は2度の合計で15億円。

 12月30日にトルコ経由でレバノン入りしたと伝えられ、同31日には広報担当者を通じて「私はいまレバノンにいます。もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し、基本的な人権が無視されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなります」という声明を発表した(NHKニュースより)。

 ゴーン被告が逮捕・勾留されている当時、毎日新聞は「人質司法」を批判していた。1回目の保釈の3月6日付けの社説で「起訴内容に照らせば、これ以上の勾留の必要性は認められない。」と断定している。

 また、刑事訴訟法が証拠隠滅すると疑うに足りる相当な理由があれば保釈は認めないとする規定を紹介しながら「ゴーン前会長が改めて証拠隠滅工作をする余地はもともと小さい。起訴後勾留が2カ月近くに及ぶ。やはり保釈が遅かったのではとの疑問が残る。」とまで書いている。

 4月4日の再逮捕の際には翌4月5日付けの社説で「逮捕や勾留は、あくまで容疑者や被告の逃亡や証拠隠滅を防ぐのが目的だ。その要件は厳格に判断すべきである。住居への監視カメラの設置など厳しい保釈条件下で生活していたゴーン前会長になぜ強制捜査が必要だったのか。これからの捜査や公判を通じ、それだけの内実があることを検察は示す責任がある。」と再逮捕への疑問を呈していた。

■”人質司法”以外に出国を防げたのか

 朝日新聞は1回目の保釈の翌日3月7日付けの社説でゴーン被告の問題を扱っている。タイトルは「ゴーン被告保釈 勾留のあり方見直す時」。事態がこうなった以上、確かに勾留のあり方を見直す時ではあろうが(笑)、この時、朝日新聞はこう書いていた。

勾留は、容疑者や被告が逃亡したり、証拠を隠滅したりするのを防ぐのが目的だ。その恐れがあるという検察側の主張を、裁判所は概して安易に認めてきた…」。

長く自由を奪うことで精神的に追いつめ、争う意欲を失わせる手段として、捜査当局が勾留手続きを利用してきたのは紛れもない事実だ。人質司法と呼ばれるこうした悪弊は、もっと早く是正されてしかるべきだった。」。

 一般論としては一理あるのかもしれないが、少なくとも今回は人質司法以外に被告人の逃亡を防ぐ手立てがなかったのである。安易な保釈が大事件を未解決のまま、誰の刑事責任も負わせないまま、終了してしまう可能性があることを朝日新聞はどう考えているのか。

 2回目の保釈の後、4月25日付けの紙面では「裁判所は『人質司法』という言葉に完全にひよっている。こちらが何を言ってもどうにもならない」、「これだけ証拠隠滅の恐れを立証できたのに保釈された。刑事司法の崩壊だ」という検察幹部の話を紹介している。こうした懸念が、まさに今回の件で現実のものになってしまったのである。

■毎日・朝日はメディアの責任を果たせ

 毎日新聞、朝日新聞はゴーン被告のレバノン入りを外電等を交えて淡々と事実だけを伝えている。これまで自分たちが書いたことについて、どのように釈明するのか。自らの不明を詫びることがメディアとしての責任の第一歩であると思う。

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