令和電子瓦版に買収提案 2024年を振り返る

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 2024年も間もなく終了する。当サイトにとって今年1年の最大のニュースは某企業から買収の提案を受けたことである。赤字続きのサイトであるが、買収対象として検討されたこと自体が光栄と言える。当サイトにとっての2024年を振り返る。

◾️分析記事の当日アップ評価された

写真はイメージ

 買収の話が来たのは11月中旬のこと。都内に本社がある新興IT関連企業、仮にA社とするが、そこから問い合わせのメールが入った。「資本提携を含めたメディア協業」についての提案という内容であった。

 自サイトを運営しているとビジネスの提案を受けることは少なくない。たとえば、広告代理店から広告の導入システムの変更の提案、動画サイトから番組をやらないかという提案、ライターから執筆させてほしいという希望が入ることもある。買収の話はもちろん、初めて。メールの文章は定型文ではなく、令和電子瓦版を読んでいないと書けないものだったので「当サイトは運営は個人が行っており、法人化していません。資本提携を含めて現状では協業は難しいのでは?」と返信した。

 A社サイドからすぐに応答があり、法人化していないことは問題ではなく、まずは一度、話をしたいということであったので、オンラインで接触した。結果としてA社が設定する買収の基準に達していないということで話は成立しなかったが、将来の協業の可能性まで消滅したわけではない。

 この件で学んだことは、地道にコツコツと一定水準の記事を出し続ければ、そこに目をつけてくれる人がいるということである。こちらからなぜ当サイトに注目したのか聞くと、タイムリーな話題が出せている点を挙げてきた。ある問題についてネットで一報が流れた際に当サイトも分析記事を同日に公開しており、その点を評価してくれたようである。

 サイト運営をしていて感じるのは、記事が注目を集めるためには内容が一定の水準に達していることが前提となるものの、それだけではPVは限られた数値となりがち。PVの多寡は記事を出すタイミングが重要なファクターになる。ネット上でホットな話題になっている時にすかさず記事を出すことが重要。もちろん、メインメディアが流す情報のコピーなら、記事を出す意味がない。そこに独自の視点による分析や取材による新情報などを加えることが必要。当サイトではそうした点がクリアできているという評価をいただいたと思っていい。

 将来、外部の企業と提携する可能性はあまり考えられないが、可能性がないわけではない。外部の企業から評価されるようなサイトに成長させていこう、運営を続けていこうと気持ちを新たにするいいきっかけとなった買収提案であった。

◾️「生命と法」への関わり

 上記の買収提案が当サイトにとっては2024年最大のニュースと言える。それ以外に大きな話題と言えば、「生命と法」「分娩費用の保険適用化問題」を特集として記事をまとめたことであろう。

 生命と法については個人的に代理出産とその法的問題について興味があり、サイト開始時(2017年秋)から出稿できないかを検討していた。2024年3月から日本産婦人科医会の定例の記者懇談会に出席することが許可され、それ以後、毎回出席させていただいている。

 6月に特定生殖補助医療法案の要綱案がまとめられるというタイミングもあり、生殖補助医療の在り方を考える議員連盟(野田聖子会長)の古川俊治副会長(参院自民党)へのインタビューが実現した(代理出産より子宮移植 生殖補助医療の行方(前)(後))。

 また、記者懇談会に出席する中で、分娩費用の保険適用化が議論されていることを知り、そのことが日本の周産期医療体制に大きな影響を及ぼしかねないことから、厚生労働省の「妊娠・出産・産後における妊産婦等の支援策等に関する検討会」を毎回レポートした。

 世間での注目度はそれほど高いとは言えないが、周産期医療体制の今後に関わる問題であり、その点を報じることで社会に貢献する実感を得られている。結果的に閣議決定された2026年度を目処に保険適用化導入は立ち消えになったことを他の媒体に先駆けて報じることができた(分娩費用の保険適用化 26年度導入見送りへ)。2025年の遅くない時期にマスメディアも後追いしてくると思われる。

 生命と法に関して取材・出稿を続けたことで、年末に大騒動となった献体の前でVサインの医師の問題についても、医師の倫理という面からの分析もできたように思う(献体の前でVサイン医師「楽しくやってます」)。取材者の経験の積み重ねが日々の記事のレベルを上げるということを実感できた1年であった。

◾️報道から裁判の当事者に

 当サイトが独自の取材・出稿を続けているトピックは、札幌市の美術教師の免職事件である。2021年6月からスタートして足掛け4年にわたるロングラン(免職教師の叫び札幌・元教師の戦い 免職処分取消訴訟)。

 このシリーズにおいて、2024年には遂に当サイトも裁判の当事者となった。札幌地裁に免職処分の取り消しを求める訴えを提起した鈴木浩氏(仮名)の裁判で、4月18日に当サイトが作成した調査報告書2通が提出された(札幌教師免職取消し訴訟 当サイトが報告書提出)。

裁判所に提出した調査報告書で使用した3Dイラスト(作成・松田隆)

 オコタンペ湖の写真が石田郁子氏によって合成されたものであることを証明したもので、当サイトの記事(免職教師の叫び(19)影なき闇の不在証明 ほか)を見た原告弁護団からの要請で作成した。この調査報告書が判決にどの程度影響するのか予想はつかないが、真実追求に一定の役割を果たせると信じる。

 調査報告書提出にあたっては、ジャーナリストとして中立性をどう保つかという部分は考えさせられた。この点、真実追求に資すること、冤罪と言っていい被害に苦しむ原告の救済に役立たせることは、ジャーナリストとしての中立性を毀損するものではなく、自由、基本的人権、法の支配等の普遍的な価値の実現に寄与するものであることから、原告側からの報告書提出要請に応じたというものである。

 多少の葛藤はあったが、提出は社会正義の実現に資するものと、今では確信している。

◾️皆様に支えられるサイト

 こうしてみると、2024年は当サイトにとって大きな節目となる1年であった。来年はこの流れの中で取材を重ね、読者の方によりよい情報を提供していきたい。

 この1年、弊サイトを訪問の上、記事をご覧になり、コメントをしてくださった皆様、本当にありがとうございました。皆様の閲覧がこのサイトを支えております。来年もよろしくお願いいたします。

 皆様、よいお年をお迎えください。

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