ウシュバテソーロBCクラシック勝てば年度代表馬?
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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米国の競馬の祭典ブリーダーズカップ・ワールドチャンピオンシップスが11月3、4日(日本時間4、5日)にカリフォルニア州のサンタアニタ競馬場で開催される。今年は日本調教馬8頭が6クラに参戦する(出走予定だったエコロネオは回避)。日本勢がどこまで活躍するか注目されるが、別の意味で注目されるのがJRA賞の行方である。
◾️イクイノックスとリバティアイランド
2023年のJRA賞の年度代表馬については、現時点(11月2日)で天皇賞・秋をレコードで制したイクイノックス(牡4、美浦・木村哲也)と、牝馬三冠のリバティアイランド(牝3、栗東・中内田充正)の2頭が有力と見られる。
前者は今年はドバイシーマクラシック、宝塚記念、天皇賞・秋とG1を3勝。特に天皇賞では2000mを1分55秒2という信じ難いタイムで圧勝しており、その能力は底知れないものがある。リバティアイランドも三冠がすべて圧勝の内容。ここまで直接対決がないため、11月26日のジャパンCで勝った方が年度代表馬というのが大方の見方であろう。
それを念頭におきながらG1ブリーダーズカップ・クラシック(以下、BCクラシック)を考えてみよう。仮にウシュバテソーロ(牡6、美浦・高木登)が勝ったとする。その場合、ドバイワールドCとBCクラシックという世界最高のダートレースを勝つことになる。これを同一年に達成した馬はおらず、まさに世界の競馬史上に残る快挙。ちなみに同馬は日本でも川崎記念、日本テレビ盃を制しており、BCクラシックを勝てば2023年は海外2戦を含め4戦4勝となる。
この場合、最優秀ダートホースはウシュバテソーロで決まり。問題となるのは最優秀4歳以上牡馬と年度代表馬である。仮にイクイノックスがジャパンCでリバティアイランドを下して優勝した場合、競馬担当記者はどちらに投票するのか。ウシュバテソーロが最優秀ダートホースの部門選出馬となるのは確実であるから、そのバランスから最優秀4歳以上牡馬はイクイノックスとする者が多いかもしれない。
そうなった場合、年度代表馬は各部門賞選出馬から選ばれるから、イクイノックスもウシュバテソーロも年度代表馬の資格はある。とはいえ、最優秀4歳以上牡馬でイクイノックスがウシュバテソーロを退けて部門賞に輝きながら年度代表馬の投票で敗れるとなると、結果そのものの整合性が取れなくなるように思われる。イクイノックスはウシュバテソーロより優れた4歳以上牡馬であるが、年度を代表する馬としてはイクイノックスよりウシュバテソーロの方が相応しいという結論をどうやって説明できるのか、ということである。
◾️JRA賞の趣旨
もし、ウシュバテソーロが最優秀4歳以上牡馬となれば、イクイノックスは部門賞を獲得できないから、当然、年度代表馬にもなれない。ドバイと府中で世界を仰天させたスーパーサラブレッドに何の表彰もないことに多くの競馬ファンは納得しないと思われる。
そうなると最も落ち着きが良いのが、ウシュバテソーロは最優秀ダートホースで、最優秀4歳以上牡馬と年度代表馬がイクイノックスという選択。ただし、ドバイワールドCとBCクラシックを同一年に制した馬が部門賞1つだけという不自然な結果となる。
その場合、イクイノックスは2022年に年度代表馬になっているから2023年は特別賞で我慢してよ、あるいは最優秀4歳以上牡馬にするから、年度代表馬はウシュバテソーロにという整合性が取れなくてもいいからバランスを考えてという”落とし所”も考えられなくもない。
以上はイクイノックスがジャパンCを、ウシュバテソーロがBCクラシックを勝ってからの話。そうした意味でも結果には注目している。
仮にリバティアイランドがジャパンCを勝った場合、最優秀3歳牝馬となり、年度代表馬はBCクラシックも勝った場合のウシュバテソーロとの争いになる。ただし、天皇賞・秋の衝撃的な内容に加え、ドバイシーマクラシックで欧州の強豪をまとめて負かした実績からイクイノックスにも票が集まり、三つ巴の争いになるかもしれない。
そもそもJRA賞の趣旨は「競馬と馬に関する特に優れた業績に対してその栄誉をたたえ、感謝の意をあらわすため」であり、「競馬と馬をファンやマスコミや競馬関係者の方々はもとより、一般社会へも広くアピールし、競馬の市民性やステータスの向上と馬事の普及を図ること」を目的としている(JRAホームページ・JRA賞)。
その活躍が国内外を問わずに競馬の業績やステータスの向上などに貢献した馬とその関係者に与えられるものであるから、JRAの競走で活躍したことが海外や地方での競馬での活躍よりも高く評価される根拠は見出せない。ダート競馬では世界一のレースであるBCクラシックに、それに次ぐ格を誇ると言っていいドバイワールドカップを同一年に勝つという世界的な偉業を果たした場合、最高の評価が与えられても不思議はない。
現時点での個人的な感想と断っておくが、筆者がJRA賞の投票権を有していれば、BCクラシックを勝った時にはジャパンCの結果にかかわらずウシュバテソーロを最優秀ダートホース、最優秀4歳以上牡馬、年度代表馬として投票する。
◾️デルマソトガケが勝てばどうなる?
このBCクラシックにはもう1頭、日本調教馬が出走する。G2UAEダービー優勝、G1ケンタッキーダービー6着のデルマソトガケ(牡3、栗東・音無秀孝)である。仮にデルマソトガケが勝ったとしよう。そうなると、最優秀ダートホースはドバイワールドCを制したウシュバテソーロとの比較になる。
ドバイワールドCとBCクラシック、どちらを格上と見るかという問題と言ってもいいが、普通は後者の方が格上であろう。勝った方が最優秀ダートホース戴冠となって然るべき。問題は、デルマソトガケが勝った場合、最優秀3歳牡馬はどの馬かという点である。
今年のクラシックを見ると、皐月賞:ソールオリエンス、東京優駿:タスティエーラ、菊花賞:ドゥレッツァと三冠すべて勝ち馬が変わった。この3頭の比較ではドゥレッツァが最も強いと思うが、どの馬もジャパンC、有馬記念を勝てなかったら、デルマソトガケが最優秀3歳牡馬に選出される可能性は出てくる。日本の三冠レースよりも、同じ3歳牡馬がBCクラシックを勝つことの方が遥かに難しいと考えることに合理性は認められる。
ただ、三冠を制した馬のどれかがジャパンCか有馬記念を制した場合には、難しくなる。たとえばタスティエーラがグランプリを制した場合、東京優駿+有馬記念の2勝と、デルマソトガケのUAEダービー+BCクラシックの2勝、どちらを上と見るかという問題。ダービーとグランプリを勝てば年度代表馬でもおかしくないので、この場合のタスティエーラには相当な票が集まると思われる。
しかし、UAEダービーはG2でしかないというのは減点材料としても、日本の3歳馬がBCクラシックを勝つなど、今後、何十年もないかもしれない。そう考えると、一概にタスティエーラ有利とは言えないと思う。
◾️米最強3歳の回避が混乱の原因
今年のBCクラシックは、最有力と目されていたアルカンジェロという米国の3歳馬が回避したことで、他の馬にも一気に勝機が出た。昨今の米国3歳戦線を見ると、真夏のダービーの異名を持つG1トラヴァーズSを勝った馬が最も強いという印象を受ける。
今年はアルカンジェロが三冠第3レグのベルモントSを勝ったのに続き優勝。ねじ伏せた相手を見ると、ケンタッキーダービー馬(三冠第1レグ)、プリークネスS(三冠第2レグ)優勝馬に、BCジュヴェナイル優勝馬(2歳王者)、ブルーグラスS(ケンタッキーダービーの重要な前哨戦)優勝馬など、ほぼ3歳のオールスター戦であった。その点からもトラヴァーズSの価値の高さはお分かりいただけると思う。その優勝馬が不在となれば、日本調教馬の勝機は広がる。
ここはぜひ、ウシュバテソーロかデルマソトガケに世界最高のダートレースを勝ってもらおうではないか。その効果として、JRA賞が史上空前のハイレベルの争いになることを一競馬ファンとして願っている。
早朝からラジコでラジオNIKKEIの競馬中継を拝聴していました。
ウシュバテソーロは残念な結果で終わりましたが、デルマソトカゲの大健闘には正直驚きました。
やはり本場アメリカの馬場をケンタッキーダービーで経験しているからなのでしょうか。
BCクラシックを制したWhite Abarrioの血統について調べてみたところ、少しだけ日本と縁がありました。
White Abarrioの母方の祖母であるGrand Breezeの10歳上の兄に1999年の根岸ステークス(GⅢ)で3着に入線したゲイリーコンドルがいます。
日米で供用されていた名種牡馬・アフリートのアメリカ供用時代の産駒の一頭で、所謂外国産馬でした。
デルマソトガケは惜しかったですね。解説の合田さんも言ってましたが、「日本テレビ盃を使えていれば」というところです。
多分、この後はサウジカップからドバイワールドカップだと思いますが、どこかで大きな仕事をするのではないかと感じさせられました。ホワイトアバリオの父はもう韓国に売られていて、ホワイトアバリオの日本との繋がりも驚かされますが、この馬自身、セリで7500ドル(約110万円)で取引されたことがあるという、とんでもない安馬であることもびっくりです。
競馬は下手なドラマよりも面白いと感じます。
ありがとうございます。
デルマソトカゲも日本テレビ盃を叩き台にして挑もうと考えていたのですか。
国内も寺島良厩舎のの二騎(キングスソードとセラフィックコール)がチャンピオンステークスの有力馬になっていますから、無理はせず来年のサウジカップまで休養にあてるか、東京大賞典を叩き台にするかもしませんね。
来年は日本国内のダートレースの体系が大きく変わりますしね。
最後にBCクラシックを優勝したホワイトアバリオは、セリで7500ドル(約110万円)で取引された安馬という事ですが、正にアメリカンドリームを体感していると言えますね。
こういうサクセスストーリーがあるので、競馬は本当に面白いですよね。