全世帯に布マスク2枚配布に批判続出…百田尚樹氏の意見に疑義あり

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 安倍晋三首相は4月1日、政府が布製マスク約1億枚を購入し、全世帯に2枚ずつ配布する方針を明らかにした。これに対し作家の百田尚樹氏を中心に批判的な声も上がっているが、合理性を欠く意見と思える。

■百田尚樹氏ツイート「なんやねん、それ」

「いいね」が殺到した百田尚樹氏のツイート

 布マスク2枚配布は1日に官邸で開いた政府の新型コロナウイルス感染症対策本部会合で方針として示された。マスクの品薄状態が続いていることもあり、「布マスクは洗剤で洗うことで、再利用が可能なことから、急激に拡大しているマスク需要に対応するうえで、極めて有効」とした。

 これに対して批判的な声も起きている。作家の百田尚樹氏は1日夜、ツイッターで「なんやねん、それ。大臣が勢揃いして決めたのがそれかい!アホの集まりか。そんなことより、緊急事態宣言とか、消費税ゼロとか、金を配るとか、パチンコ店禁止とか、エイヤッ!とやることあるやろ。」とつぶやいた。これに対して賛同の意味を示す「いいね」が2日午前の段階で2万7000に達している。ツイッターには批判の声も並ぶ。

 しかし、考えてほしいのは感染症対策はその性質上、広く国民全体を対象にする点である。1人の感染者から感染が拡大し、ある時点を超えたら幾何級数的に蔓延していくものであることは、世界の感染者数、死者数の増加を見れば明らか。

 そうなると対症療法的な政策では対応しきれない。対象を選別せず、広範な人々を対象に政策を実施することが不可欠である。今回に関して言えば、既に必要なマスクを手にしている世帯では当然ムダと感じるはず。配達されても、そのまま埃をかぶってしまうかもしれないし、届いたらすぐにゴミ箱に捨てられてしまうかもしれない。

■1億枚の5%でも使用されれば感染拡大防止に役立つ

配布されたマスクがムダになっても…

 必要がなければ、使用されなくても、捨てられてもいい。大事なのは、配布した1億枚が実際に使用される場合が想定されることである。仮に総数の5%の500万枚が使用されたとしたら、マスクを使用しなければ感染が拡大したであろうところを事前に防止することができる場面も出てくるに違いない。それが仮に3%であったとすれば1万5000人の感染が防げる計算になる。

 全国で1万5000人が感染を拡大していたとしたら…と考えると、少なくとも感染の拡大の時間を遅らせる、あるいは規模を縮小することが多少なりともできる。それによって医療崩壊を防ぐことに資する効果が期待できる。

 費用との関係を考えれば希望者にだけ配布するのがベターであろうが、急を要する状況ではそのようなことはしていられない。ムダが出ることが分かっていてもやらなければならないのは、相手が新型コロナウイルスだからである。マスを相手にする行政は、そうした視点が求められると思う。

■感染予防策と経済対策の優先順位

 マスクを配布する効果としては、国民の間に危機感を喚起する効果も期待できる。3月14日、横浜で「自粛しねえぞ」とデモ行進のようなことをする若者の様子が伝えられたが、国民の中には危機感を感じていない人が存在するのは確かである。

 政府がマスクを配布することで一定の数の人の意識の変革ができれば、感染予防の行動が取られるようになるかもしれない。そうすれば感染拡大防止に少しでも役に立つ。その点でもマスク2枚配布は意味のある政策であると信じる。

 以上の点を考え上記で示した百田氏のツイートを検討してみると、合理性のない部分が見えてくる。「消費税ゼロ、金を配る」などをやるべきという部分は新型コロナウイルスに伴う経済悪化への対策であり、マスク2枚配布の感染予防策とは次元の異なる話。それはそれで進める必要があっても、性質上、感染予防策の方を優先するのは当然であろう。百田氏は政策の優先順位を考慮できていないように思う。

 パチンコ店禁止は予防策なので実施したいところだが、営業させないことまでは現行法では困難。新型インフルエンザ特措法の緊急事態宣言(32条1項)で禁止できるのは演劇やスポーツイベント等。興行場法1条1項の「興行場」にパチンコ店が含まれるという解釈は聞いたことがないから、営業側を含め個々の予防策を徹底することで感染機会を減少させる以外に手はない。当然、予防策の中にマスク配布が含まれている。

■「悪化しないならやる」単純な理屈に真理

 以上のように考えると、安倍首相の打ち出した全世帯へのマスク2枚配布は無駄も多いが、緊急時であることを考えれば、悪くない政策である。何より、それをすることで感染拡大防止にマイナスになることは考えられない点は重要である。

 まずはできることをやる。効果が出なかったとしても、それをやらなかった場合より悪化することがないのであれば、やる価値はある。この極めて単純な考えが緊急時には重要であると考える。

"全世帯に布マスク2枚配布に批判続出…百田尚樹氏の意見に疑義あり"に5件のコメントがあります

  1. 野崎 より:

    こんにちは

    私がネットで確認した限りにおいて、圧倒的に批判が多いですね。
    同じ状況認識かと思います。

    にも関わらず勇気ある記事であり、内容は松田さんの健全性、合理性を表すものとして頼もしい限りです。

    一対何を批判するのか、感染防止にマスクの有効性の評価はあるにせよ、今拡大防止に可能性のある事は一つでも行うべきでしょう。

    マスク配布に掛かるコストの批判など的外れもいいところです。
    その意味で感染拡大抑止効果の為だとの指摘は正鵠を射貫いています!!!

    それもマスク入手難の今においておや、です。

    他の施策は並行して進めればよいだけの話です。

    朝三暮四というか何というか、猿共め!

    御返信は不要です。

    1. matsuda より:

      >>野崎様

       コメントをありがとうございます。
       政府の対策を肯定したら、病気になるとでも考えているメディアが多いのでしょうかね。是非の判断より、対政府の立場を先に考えるメディアの姿勢は問題があると思います。

  2. 山口 秀明 より:

    私もマスク配布に賛成です。まわりのFBの人達は、安倍さんしっかりしてよって批判的ですが、布製で何度も使えるって良いと思います。何でも否定的に成らず、前向きで行きましょう。

    1. matsuda より:

      >>山口 秀明様

       コメントありがとうございます。
       この時期、やれることは何でもやった方がいいと思います。2枚のマスクで何が変わるかと言われますが、1億枚になれば、感染の機会は大幅に制約できるのではと思います。

       反対する人たちは対案を出してほしいですね。反対のための反対は、国民を不幸せにするだけだと思います。

  3. 匿名 より:

    百田ねぇ‥

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