勝利引き寄せる生討論 高市早苗氏

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

最新記事 by 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)

 自民党総裁選が9月17日告示され、4人の候補による本格的な論戦が始まった。そろってフジテレビ系のニュース番組に出演した4人だが、高市早苗氏の世論に阿ることのない主張、反射神経の鋭さが目立つ結果となった。過去に討論番組での出演が多い高市氏は公開の場での論戦は得意とするところ。勝利の予感をさらに高める状況となっている。

■アファーマティブアクションを否定

FNNプライムオンライン画面から

 自民党総裁を目指す4人は告示日の17日、フジテレビ系のニュース番組( news イット)に出演した(次の首相は誰? 初の生討論)。番組側の用意した質問に○か×で意思表示をして、意見を述べる形式。

 4人が特に違いの大きい女系天皇容認や敵基地攻撃に関する問題が出なかったのは不思議ではあるが、各質問に対する高市氏のポイントを的確に突く受け答えが目立った。例えば以下の2つの質問。

①首相になったら人事で世代交代をするか

②女性閣僚の割合を3割以上にするか

 この2つに対して答えは2つとも以下のようになった。

○河野太郎 ○岸田文雄 ×高市早苗 ○野田聖子

 問いに対する正解があるとすれば、「人事はあくまでも適材適所、年齢や性別で決定すべきではない」ということであろう。若い人や女性が能力もないのに「若いから」「女性だから」と重要なポジションを占めれば国政が停滞しかねない。よりよい政治の実現という目的のため、その実現手段として若い人や女性も能力があれば積極的に登用するのが、あるべき姿。登用そのものが目的化すれば、国政に悪影響が出る。

 ところが高市氏を除く3人は世代交代をして女性を3割以上にするという。これは質問の仕方が①については安倍・麻生の名前を出して世代交代をという意味を含ませたために○を出しやすかったというのもあるが、結果的に3人はこれまでの政治家がよく用いた「選挙前に耳障りのいい言葉で選挙民にアピール」という手法を踏襲したように見える。

 逆に高市氏は耳障りの良い言葉よりも、自分の信じる道を貫く姿勢を示した。たとえば②に対する答えは「非常に優れた専門性を持つ女性もたくさんおられますので、どんどん登用していきたいと思うのですが、内閣に関しては…適材適所で決めさせていただくことになると思います。もしかしたら半分以上女性になるかもしれませんし…3割に達しない場合もあるかもしれません」というものであった。

 さらに女性だからという理由で閣僚になることについて「自分自身閣僚になった時に『どうせ女性枠だろう』と周りから言われ、大変、辛いことがありました」と続けた。女性だからという理由で閣僚にするアファーマティブアクションの危険性や問題点を指摘したのである。文句をつけるところのない100点満点の回答であると思う。

 これだけ言われれば、○を掲げている3人は自分たちの答えが国政の機能を停滞しかねないアファーマティブアクションをしますと言っているように見えてしまう。

■高市早苗氏のアドリブ力

写真はイメージ

 ①、②の質問で自分の信念を貫き、結果として正解を答えた高市氏は、さらに抜群のアドリブ力を見せる。

 「決選投票までいくとみているか」という質問に「○」を示した上で、フジテレビの松山俊行政治部長の「2回目に行った時に2位3位連合はありうるか」というさらなる質問に対して、こう答えた。

 「難しい話ですねえ(笑)…。(政局に関する話は)一番苦手な分野ですが、それは(自分を支援する)それぞれの国会議員の方々がご判断されるのではないでしょうか。特に私の場合は無派閥でしたし、特に経済政策に賛同して集まってくださったた仲間が多いと思っていますので、なかなか私が誰にといってどうこうなる人たちではありません。」

 1回目で1位の人が2、3位が手を組んでひっくり返すというのは、最も多くの支持を集めた、いわば党員の民意に反するものであるとも考えられ印象は良くない。自分はそういう次元での戦いではないことをアピールしつつ、生々しい話を冗談を交えてうまくかわす、これも100点満点の回答であると思う。

 同時に、自分は1回目の投票で決着させる自信があるから、2、3位連合は考える必要がないという意識もあるのかもしれない。「あんまり厚かましい人間ではないんですけど、できたら一発で勝ちたいな、と…」と話しており、今の勢いがさらに加速して1回目で過半数も夢ではないと考えているようであった。

■岸田文雄氏の自己矛盾

岸田氏(左)の「斜めです」に、同じ呼びかけ人の野田氏は失笑(FNNプライムオンラインから)

 このように高市氏が持ち味を発揮していたのに対して、全く良さを出せなかったのが岸田文雄氏である。

 「選択的夫婦別姓を認めるべきか」という問いに対して、「○」の札を斜めに掲げた。岸田氏は今年3月に「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」(会長:浜田靖一元防衛相)の呼びかけ人となり、自身も参加している。同じように呼びかけ人となった野田聖子氏は迷わず「○」の札を掲げたのに対し、岸田氏は斜めに掲げたのである。

 その理由を問われ「議論を続けるべきが、私の立場です」とし、番組から「賛成か、反対か」と確認されても「いや、議論を進めるべきと考えているが、まだ、整理がつかない部分が、少なくとも自分には残っているから、こういった対応をさせてもらっている」とかわした(同番組:選択的夫婦別姓認めるべき?)。

 賛成か反対かも言えないのに、早期実現のための議員連盟の呼びかけ人になったそうである。これは一体、何の冗談なのか。党内でも選択的夫婦別姓を認めるべきという声が強かったために呼びかけ人になって一定の勢力に秋波を送りながら、総裁選になったら保守層の票を失うことを恐れ、引き摺り込んだ仲間を屋根の上に残して梯子を外す。政策以前に、人として信用できないという評価をされても仕方がない。

 こうした戦いが投票の29日まで続く。告示日の様子を見る限り、喋れば喋るほど高市氏の勢いは増し、岸田氏の勢いは萎んでいくことが予想される。高市氏の勝利の可能性はさらに高まると感じさせられる討論であった。

■野田聖子氏出馬は決選投票狙い

 話は前後するが、今回、当サイトでは野田聖子氏は推薦人の20人が集まらず出馬しないであろうと予想していた(参照:高市早苗氏はダービー馬ロジャーバローズ)。野田氏が出馬すると正確に予想していたのは、ジャーナリストの山口敬之氏だけと思われ(参照:政局速報「野田聖子出馬」9月15日付け)、その取材力と分析力には「参りました」と言うしかない。同時に当サイトの分析・予想についてはその不明をお詫びする。

 それはともかく、その野田氏が番組内で面白いことを言っていた。松山部長の「2回目(決選投票)まで行くと見ているか」という質問に「そうでなければ、私が頑張って出た甲斐がございません」と答えたのである。現時点では野田氏の勝ち目はほとんどないと思われ、決選投票に持ち込むための出馬というのが大方の見方で、本人もそれを認めたに等しい。

 野田氏が1回目の当選を阻止しようとする相手は誰か。もしかすると高市氏を念頭に置いているのかもしれない。推薦人の出身派閥を見ても、そんな思いをさせられる。それだけ高市氏の勢いは無視できないものになっているように思う。

"勝利引き寄せる生討論 高市早苗氏"に3件のコメントがあります

  1. 名無しの子 より:

    野田氏が出馬した理由ですが、どなたかがおっしゃっていたのですが(確か、山口敬之氏か小川榮太郎氏だったような)「初の女性総理大臣」というインパクトを弱めるためだとか。
    それに対して、またまたどなたかが(うろ覚えですいません)「高市氏は、『女性だから』支持されているのではない。『性別なんて関係なく、実力がある』から支持されているんだ。国民も、そこまで馬鹿ではない」とおっしゃっていました。
    私がとっている地方紙ですが(何かと現政権を批判しています。でも地域の事故、災害などの記事は確かなので、一応読んでいます)、「岸田氏は印象が薄く、河野氏はコロコロ変わる(原発や皇室の考え)。自民党は、これで大丈夫なのか」と書いていました。さて、高市氏は?と思い、探してみたのですが、どこにも記事が見当たりません(野田氏は出馬前)。そこで私が考えたのは「本当は高市氏のことを、最も批判し貶めたいけれど、攻撃材料が見当たらないから、無視することにしたんだ」ということ。わかりやすいですよね。

    ところで、松田さんに「参りました」と言わせたジャーナリストの山口敬之氏ですが、いよいよ、例のあの事件の口頭弁論が、9月21日(火)に行われますね。傍聴ご希望の方の為に載せておきますね。開廷時間は11時(101号法廷)、抽選券交付は、10時40分までに2番交付所(正面玄関に向かって右側)へ。リンクも貼っておきます。https://www.courts.go.jp/app/botyokoufu_jp/detail?id=15364&list_id=6

    前回の民事一審の口頭弁論は、伊藤応援団で埋め尽くされ、鈴木裁判長は、その勢いに呑まれたという部分もあるのではと、私は思っています。だから、今回は、ご都合のつく山口派の方々に、できるだけたくさん傍聴していただけたらと思っています(もちろん、コロナ感染には、くれぐれもお気をつけてとは思いますが)
    もし私が、真のジャーナリストと呼べる人の名前を挙げろと言われたら、松田さんと、山口敬之氏しかいません。真実が明らかになり、山口氏が、一日も早く表舞台で堂々と活躍できる日を、心から祈っています。

  2. 小荷駄隊 より:

    >全く良さを出せなかったのが岸田文雄氏である

    今更感満載の岸田さん、“冷めたピザ”どころじゃない……

  3. MR.CB より:

    》》ジャーナリスト松田様

    メディアの露出度に比例して支持率も上がるなら、高市氏はプラスに働きそうです。逆に松田さんもご指摘のように、岸田氏にとっては徐々に馬脚を現すことになるかも知れません。多くの国民は首相にリーダーシップを望むと最近の世論調査で分かっています。岸田氏は他の3人の候補者に比べて良く言えば「穏やかで寛容」な反面、「優柔不断で弱腰」に映ってしまいそうです。現に出馬表明して上がった支持率がここに来て勢いを失いつつあります。
    河野氏は本命らしく強気に自分のレース運びに徹しているように見えます。一方で討論の場では他の候補の意見に耳を傾けずに、ただただ持論を展開する姿が気になります。トップになったとしても、官僚たちを使いこなせなかった民主党政権の悪夢が重なってしまいます。グリップをどう効かせるかが問題です。
    野田氏はいかにも泡沫候補(すみません)らしい戦い方です。捨て身のような戦術ですが、あわよくば有力候補にも一泡吹かせて国民に対してインパクトのある姿を残したいように思えます。次回に繋がる戦い方ですね。
    最後にダークホースの高市氏の人気が日を追うごとに上がってきました。競馬で言うところの「併せ馬で力を出す」タイプ。単走だと大したことのない馬が、自分の横に他馬が来ると通常以上に能力を発揮する馬がいます。高市氏の場合には誰かと討論することで、その類い稀な能力をより効果的に出せる方だと思います。ただ松田さんには申し訳ありませんが、どうしてもアンチテーゼが懸念されます。ネット上やコアな支持層には圧倒的な人気がある反面、中間層の警戒心を少しでも掻き立てるような言動があれば、一気に反発を買う可能性もあると思います。
    兎にも角にも素人目線でも十分に面白い自民党の総裁選です。枝野氏など野党にとっては面白くないでしょうね。

名無しの子 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です