再考 非核三原則(終)小西洋之氏企て失敗

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 今年2月末、安倍晋三元総理は核シェアリングについて議論をタブー視すべきではないとテレビ出演時に提言した。非核三原則について、正面から議論をすべきことを提案したのは、この問題を考える上で持つ意味は極めて大きい。案の定、立憲民主党は政権担当時の岡田克也氏の発言との整合性に苦慮することになる。

■安倍元総理の核シェアリング発言

核シェアリングについて語る安倍元総理(フジテレビ画面から)

 安倍元総理の核シェアリングに関する発言が出たのは2月27日のこと。フジテレビ系の「日曜報道 THE PRIME」に出演し、欧州で独、伊などの核シェアリングの例を引き合いに出し、以下のように話した。

 「世界はどのように安全が守られているかという現実の議論をタブー視してはならない。日本の国民の命、国をどうすれば守れるか、さまざまな選択肢を視野に入れて議論するべきだ」これに橋下徹元大阪市長が「核共有の議論は絶対に必要」、非核三原則について持ち込ませずの部分を見直すように求めた(FNNプライムオンライン・「核共有の議論必要」で安倍氏と橋下氏が一致)。

 この連載を第1回から読んでいただいている方にはお分かりと思うが、両者の意見は佐藤栄作元総理が考えていた(三原則は米国の拡大抑止に依存することを前提とし、それへの依存が日本の安全保障上適切ではないと判断される状況になれば、見直されるべきことを意味する)という考えに沿ったものである(参照・連載(2)鳩山政権で佐藤栄作氏遺志)。

 これに対する野党の動きは素早かった。発言の翌日の28日、参議院予算委員会で田島麻衣子氏(立憲民主党)が質問し、岸田総理は以下のように答弁した。大事な部分なので、全文を示す。特に赤い太文字にした部分に注意していただきたい。

 「このご指摘のニュークリアシェアリングという課題ですが、その中身について、平素から自国の領土に米国等の核兵器を置き、有事には自国の戦闘機等に核兵器を搭載、運用可能な体制を保持することによって自国の防衛のために米国の抑止力を共有する、そういった枠組みを想定しているものであるとしたならば、これは今外務大臣から申し上げたように、この非核三原則を堅持するという我が国の立場から考えて、これは認められないと認識をいたします。」

 これは常時、米国の核を日本国内に置いて有事に備え、有事の際には自国の戦闘機等で核兵器を運搬、使用する、そういう前提なら、非核三原則に反すると言っているに過ぎない。問題は赤い太文字の部分。反対解釈をすれば有事に国内に置くタイプの核シェアリングは認められるのである。

 緊急時に核兵器を積んだ原子力空母を寄港させることは非核三原則に反しないというのが従来の政府の立場であるから、そこで持ち込まれた核兵器を日本の戦闘機等で運搬して防衛のために使用することは日本の個別的自衛権の範囲として認められる余地を岸田答弁は残している。

 そして、安倍元総理は非核三原則のあり方を議論すべきであると提言しているのであるから、「平素から」を認めるといった解釈の変更をしてもいいのではと言っていると考えられ、その部分の議論をする、しないには言及せず、「その前提では非核三原則に反するから認められません」と現時点での政府解釈を述べているのである。

■もし、こんな質問をしていたら…

 上記の答弁を考えた役人は何と優秀なことかと思う。佐藤元総理の考えを正確に言葉にしている。そして、質問者は「非核三原則を堅持」という答弁を引き出せたから満足するに違いない。実際、質問した田島氏は「はっきりとした答弁をありがとうございます。しっかりと元総理にもお伝えください、その考え方。よろしくお願いいたします。」と応えている。おそらく、これまでの政府の立場と何も変わることなく、緊急時には非核三原則が守られないことがあるという答弁であることに気付かなかったのであろう。

 もし、田島氏が次のように質問を続けたら、どうなったであろうか。

 仮定の質問A:日本の安全保障上、極めて厳しい状況が迫った時に核兵器を搭載した米空母が寄港を要請した場合、従来の政府見解からすれば認めることもあり得るはずです。それによって持ち込まれた核兵器を日本の戦闘機に搭載し、防衛のために敵に対して使用する場合、非核三原則に反しますか。

 岸田総理としては「我が国は非核三原則を国是としており、それに沿って適切に対処します」とだけ答えて、逃げるしかない。

 その辺りの仕組みを全く理解できていないであろう田島氏を小馬鹿にしているわけではない。同じ青学大で学んだ者としては、そこに気付くぐらいの注意力を発揮して欲しかったとは思うが、ほとんどのメディアも「非核三原則を堅持」の部分を強調し、安倍元総理の野望は直ちに否定されたというニュアンスの報道を行なっているので、仕方がないのかもしれない。

■食い下がる小西議員の思惑

 佐藤元総理の緊急時には守られないこともある非核三原則の考えをはっきりと口にしたのは民主党政権下での岡田克也外相(当時)である。前回も紹介したが、2010年3月17日の衆院外務委員会で「緊急事態ということが発生して、しかし、核の一時的寄港ということを認めないと日本の安全が守れないというような事態がもし発生したとすれば、それはそのときの政権が政権の命運をかけて決断をし、国民の皆さんに説明する、そういうことだと思っています。」と答弁した。

 この答弁は「持ち込ませず」については原則が守られない場合があるというもので、安倍・岸田両内閣が踏襲することを明らかにしている。そして、この岡田外相の答弁からしても、米国の核を日本が運用したからといって核兵器を日本が持っていると解釈できるかは微妙。ドイツなどの核シェアは最終的な使用の決定権は米国大統領にあるため、シェアの相手が運搬しても、それは民法で言うところの占有に過ぎないと考えるのが通常の解釈で、それを使用権を含めた「持っている」と解釈するのは無理筋であろう。

 仮に安倍元総理の核シェアリング構想が検討された場合、立憲民主党としては仮定の質問Aのような運用を政府が検討した場合、岡田答弁がある以上、それに反対できない。現在のように1週間に2、3回、北朝鮮のミサイルが飛んでくる状況は「平素」ではない、日本の安全が守れない事態になっていると解釈し、持ち込ませた場合、持ち込ませること自体は争えず、平素の解釈の違いだけで反対することになる。このように岡田答弁は現在の立憲民主党の政策を遂行する上で大きな重石となっている。

 そこで考えられたのが緊急時に核兵器を持ち込むことまでは認めるが、戦闘機等で運搬するまでの段階において三原則の「持たず」に反するというロジック。あるいは共有という言葉から、日本にも所有権の一部があり、「持っている」と解釈するものである。それらを政府が認めるなら、岡田答弁を党として認めても、「あれは持ち込ませずだけを例外としたもの」として、「『持たず』に反する」という理由で核シェアリングの構想に反対できる。

 それを国会で質問したのが同党の小西洋之議員である。3月7日の参議院予算委員会で、安倍元総理の核シェアリングの発言に関して、非核三原則の「持たず」に反するのではないかと食い下がった。

小西:自衛隊の戦闘機などが核を日本防衛のために使用するというケースですが、そうしたケースは非核三原則の何に違反するとお考えですか。

質問する小西議員(Nth国会画面から)

岸田:…少なくとも非核三原則の持ち込ませずとは相入れないと考えております。

小西:持たずはどうですかね。…国内に持ち込んでその運用の訓練を積んで、命懸けの訓練を積んで、いざという時には自衛隊が使うわけですから、これ核兵器もっていることと同じではないんですか、実態として。

岸田:…核共有…については…詳細について政府として、これ内容、この検討したことはありませんので、…一般論としましても持ち込ませずの部分にこれは相入れないのではないかと考えているところであります。

小西:いや、非核三原則の持ち込ませずに該当するのは、これは小学生でも分かることですね。検討したことがないんでしたら、今検討していただけますか。…実質的に持っているという、持たず、非核三原則の持たずに当たり得るとお考えになりませんか。

 この後、議論は平行線をたどり、小西氏は政府の見解の委員会提出を求めたが、委員長から拒否されている。

■残された時間は長くない

 小西議員は岡田答弁を前提にしても安倍元総理の核シェアリング構想、その議論の進展を何とか潰したかったに違いない。その食い下がり方は異常であったし、これらの答弁の前には岸田総理に「格調高い答弁をありがとうございます」などと煽てており、何とか口を滑らせることを狙っていたのかもしれない。そして、小西議員の質問の4日前に立憲民主党が核シェアリング発言に対する党の見解を政調会長の談話として発表したのは、核シェアリングが三原則の「持たず」に該当するという確証が得られなかったからと思われる。

 結果として岸田総理は従来の政府見解を後退させることなく、核シェアリングの議論を以後、可能な状況は残した。最低限の仕事はしたということであろう。

 北朝鮮の核の脅威が日々、強くなる中、日本は今、核政策を含む国防のあり方が問われている。その手始めとして、日本の防衛を縛る非核三原則の見直しは必要であり、そのためにも非核三原則がどのような性質を持っているのか、我々国民がその正確な理解をすることが重要である。我々に残された時間は皆が思っているほど長くないと思う。

終わり

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    "再考 非核三原則(終)小西洋之氏企て失敗"に2件のコメントがあります

    1. 匿名 より:

      彼は議論できないタイプの人間だよ…アベプラ出てた時も全然会話になってなかったし。
      自分が言いたい事だけ言って、他人が話してる最中にもヤジ飛ばしたり割って入って来たりして酷かったもの。

    2. 通りすがり より:

      >安倍元総理の核シェアリング構想、その議論の進展を何とか潰したかったに違いない。

      潰したかったのは100%間違いないでしょうけど、小西が計算高くロジックを立てていたわけではないと思いますけどね。
      小西は目的のためなら手段を選ばず、恫喝したり、嘘をついたり、ダイブしたりと悪いことなら何でもありの輩ですから。
      そのくせ自分に都合が悪くなるとコソコソ隠れる。
      なんでこんな控え目に言っても人としておかしい人間が、議員職にありつけているのか全く理解できません。

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