菅直人氏の武蔵野市 左派の巣窟となった理由

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 東京都武蔵野市がおかしい。「外国人住民投票条例」騒ぎを起こした松下玲子市長など、政治家と周辺が引き起こす変な事件が続き、この1年繰り返し全国ニュースとなった。しかも騒動は市民生活の向上に役立たないものばかりだ。東京ローカルニュースだが、日本の戦後の悪しき歴史が見えるため、対処法を含めて考えてみたい。(元記事は&ENERGY東京・武蔵野市、「税金を食べる左派」の横暴はなぜ?

◆武蔵野市の政治に絡む「珍事件簿」

松下玲子市長(同氏ツイッターから)

 歴史的経緯から、この市には口やかましい左のノイジー・マイノリティが集住した。そのおかしさが、ネットで暴かれたのだ。

 武蔵野市では最近、次のような事件が起きた。

▶︎2021年12月に同市提案の外国人住民投票条例が市議会で否決された。市内に3カ月以上住む外国人に住民投票の投票権を与えるもの。採決前には左右両派が同市に集まり騒然となった。松下市長は再提出を検討しているらしい。彼女は、日本共産党、立憲民主党の推薦で、21年の選挙で当選し、22年現在2期目だ。

▶︎22年8月、元市長の土屋正忠氏らが市に対して住民訴訟を起こした。21年に吉祥寺駅北口の市営駐輪場を随意契約で市が業者に売却し、同業者の持つ土地を代わりに購入した。松下市長の主導という。この業者は海外ファンドが買収してしまった。私は現地を知っているが、市の持っていた土地の方が、駅に近く優良な物件だ。明らかにおかしい。

▶︎「女子貧困調査官」こと前川喜平・元文部科学事務次官が、立憲民主党系の武蔵野政治塾で22年11月に講演。7月に暗殺された安倍晋三氏に「お気の毒とは思ったが悲しいとは思わなかった」と発言。会場の人々は爆笑と拍手をした。参加した立憲民主党所属の五十嵐えり都議(同市選挙区)は大笑い。「ああいう形で裁きを受けるべきではなかった。政治的に裁きを受ける方だったと思う」と発言。映像が拡散し、2人と聴衆は大変な批判を受けた。噂だが、武蔵野市を地盤にする菅直人衆議院議員・元首相の引退後、松下市長が後任となり、五十嵐氏が代わって武蔵野市長になることを狙っているという。

▶︎22年7月に、武蔵野市の米穀店がツイッターに上記条例に絡んで「危険な特定外来種」と発言。それに「市民」と称する人が押しかけて抗議し、それを「営業妨害」とかばう人たちと店前でにらみ合う事態が起きた。そこで極左政治団体やれいわ新選組と関係を持つ山本ひとみ市議が「市民」と一緒に行動。批判を受けて炎上してしまった。発言は問題だが、営業妨害はおかしい。

▶︎武蔵野市は有料ゴミ袋で、市民にごみの分別を行わせている。ところがその袋がこの1年ずっと足りない。コロナの影響と市は説明する。同市は左派が市の西部、保守が東部に多い。東部では西部よりも品不足が続き、松下市長による嫌がらせかという噂が出ているが、これは真偽不明。

▶︎JR中央線武蔵境駅前で、市は官民共同の複合施設を19年に作った。駅前一等地なのに2階建てのしょぼい建物だ。儲からないためか、テナントが頻繁に入れ替わっている。

◆歴史の因果か-「利権」「左派」「菅直人」

菅直人元首相(同氏ツイッターから)

 これらの珍事件は、いずれも政治がらみのトラブルで、多くの住民と関係なく迷惑だろう。そして歴史が影響している。以下、東京の一つの市の話を長々書いて読者の方に恐縮だが説明してみる。私はこの市の隣にかつて住み、菅直人氏の関係者が知人にいる。

 太平洋戦争中に、中島飛行機株式会社が武蔵野市に大工場を作ったが敗戦後に空き地になった。少数の地主と寺が市の多くの土地を持っていたが、中島飛行機は購入せずに借りていたのでそのまま返し、市街地が混在していたために戦後の農地解放が行われなかった。そのまま地主が温存された。地主らは土地利権を保つため、また批判を避けるために、社会党・共産党や、吉祥寺周辺のやくざ組織と協力し、政治に介入した。旧中島飛行機関係の多くの土地を、市が公社を作って購入・管理をした。そこが縁故採用、不明朗な土地取引、社会党の利権となった。何度も汚職事件が起きている。

 自民党市議だった前出の土屋氏は1982年から2005年まで市長を続けた。連続当選したのは革新系市政の反動だった。「革新系」とは、今は死語になったが、社会党系、共産党系の無党派の政治家のことを言う。土屋氏がかなり浄化したが、前出の駅前土地転がしのようなことは、かつて武蔵野市政で頻繁にあった。

一方で、国政では別の動きがあった。菅直人氏が師匠の市民活動家の市川房枝氏関係の都議がいた縁で武蔵野市を含む選挙区から出馬。2度落選した後に1980年に初当選し、現在まで14期連続で当選している。

 1960-70年代の革新系市政が市民団体を援助したため、そうした団体が武蔵野市に乱立した。また都内では費用がかかるので、国鉄中央線で都心に移動でき、劇場のあった武蔵野市周辺に劇団や作家などの左派系文化人が、戦争直後から集まった。戦前は早稲田周辺や、文京区の谷根千地区などに作家や活動家が集まったが、戦災などのために郊外に逃げた。

 さらに中島飛行機の工場跡地は、都が購入して1960年代に都営住宅を建てた。こうした団地は住民追い出しができないのと家賃が安いので、住民は住み続けてしまう。1960年代から社会党、共産党の活動家の拠点になった。80歳以上になった今もいて、一人一票の投票の権利を必ず行使する。

 菅氏は、政治家としてあまり優秀とは思えないが、生き残りのための小知恵は回る。共産党、極左を含めてそういう勢力と連携をし、選挙に勝ち続けた。松下市長は菅氏が推しているが、共産党色が強いのは菅氏の作った、混成した左派勢力の支持基盤を引き継いでいるからとされる。松下市長も菅氏も問題あるのに、選挙で追い出せないのは、この理由だ。

◆「税金を食べる人」の所業を明らかにするのが対抗法

「赤い中央線」と呼ばれることもある(JR三鷹駅)

 吉祥寺駅には近くに井の頭公園があり、近鉄・伊勢丹(ともに既に閉鎖)、東急などの百貨店、成蹊大、武蔵野大などの大学が集まり、戦後に繁華街、学生街として発展した。乗り入れる東急電鉄グループの市街地開発も行われた。武蔵野市は豊かになり、市のイメージも「住みたい街アンケート」で上位になるなど、民間の力で向上した。

 政治活動には「人、金、場所」が必要になる。活動家がいて、補助金があり、便利でイメージの良い場所であるという3つが揃った武蔵野市は、左翼の牙城になった。政治は「市民の善意」だけが反映するものではない。コアになる政治集団「中核層」、またそれで利益を得る「利権層」、それに機会や印象でくっつく「浮動層」がいる。それが武蔵野市には全部揃ってしまった。

 同じような歴史の構図は東京の杉並区、世田谷区、国立市にもある。都営住宅が左翼の牙城になり、旧勢力が戦後に左翼と結びついた。そのためか、これら3自治体には、今も古めかしい革新系首長がいて「赤い中央線」と言われる。また左右逆転して、右側の変な利権構造ができ上がった場所も日本の各地にある。

 武蔵野市は、政治的な遊びをしている余裕はないと思う。井の頭公園や吉祥寺、住宅地を歩くと、街は1990年代のまま。かつて人を集めた駅前のマルイも古びている。ゴミゴミした駅前は、手入れ不足で汚れが印象に残る。休日に歩くと、日本の他の場所と同じように、若い人の数が減っている。国内でも、都内でも、街の競争が起きている。前出の武蔵境駅の公的施設の閑散さを見ても分かるように武蔵野市、吉祥寺は「勝ち組」とは思えない。

◆創造ができない左派政治活動家

 もちろん街の衰退は武蔵野市に関わる政治家だけに責任があるわけではない。ただし、菅直人氏、松下玲子氏が典型だが、日本の左派政治活動家は、政治活動や権力闘争ばかりに目が行き、現実を動かす、お金を儲ける、街を豊かにするということに関心がなさそうだ。「税金を食べる」ことはできるが、「創造」ができない。日本は韓国に平均所得が抜かれた。国全体が貧しくなる中で「税金を食べる人たち」が暴れることを止めなければ、私たち普通の日本人の生活がおかしくなる。おかしな政治家とおかしな支持者が、日本を貧しくさせている。

 今、「Colabo」と言う社団法人が東京都や国の公金をめぐって不適切な使い方をしたという疑惑で、1カ月以上騒ぎになっている。公金をいいかげんに扱う怪しい団体は、武蔵野市で見られたように、ずっと前からあった。武蔵野市でもColaboでも、「炎上」は効果があった。当事者は萎縮し、普通の人々の批判で闇が次々と暴かれている。

 「税金を食べる人」の横暴を止めるのは、まず敵を知り、情報を公開させ、批判することだ。歴史など根深いところから彼らが生まれている場合には、その発生原因を潰すことも考えなければならない。 これが私たち一般市民の最初に、そして簡単にできる対処法だ。※元記事は石井孝明氏のサイト「&ENERGY」に掲載された「東京・武蔵野市、『税金を食べる左派』の横暴はなぜ?」 タイトルをはじめ、一部表現を改めた部分があります。

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