『存立危機』の背景 岡田克也氏の”反”非核三原則答弁
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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高市早苗総理の台湾有事での存立危機事態に関する答弁をめぐり日中関係に摩擦が生じている。中国側から見ると、質問した立憲民主党の岡田克也・元幹事長は外相時代に核兵器の持ち込みを容認する場合もあることを答弁していることから、総理と野党議員がタッグを組んで強力な対中国への対抗策を描いていると判断しているようにも思える。岡田氏の自民党保守派も驚くような答弁を振り返ってみよう。
◾️北京政府の攻撃性
高市総理が7日の衆院予算委で、岡田氏の台湾有事では集団的自衛権を行使できる存立危機事態になり得ると答弁したことに中国側が激しく反発し、日本は外務省の金井正彰アジア大洋州局長を北京に派遣し、中国外務省との協議を行わせている(JIJI.COM・外務省局長、中国側に反論 台湾有事発言巡り協議―北京)。
中国側は薛剣駐大阪総領事が8日、Xに「高市首相斬首」を示す投稿(既に削除)を行い、また、中国外交部も「われわれは日本に告げる 台湾問題で火遊びをするな 火遊びをすれば必ず身を滅ぼす」というポストを、公式アカウントから赤い背景に中国外交部の建物と思われるイラストがついた画像で投稿した(CHINA MFA Spokesperson 中国外交部发言人 11月13日22:56投稿)。
これらの言動は台湾問題に対する中国の姿勢を示しているが、外交儀礼を逸脱しているのは疑いなく、多くの日本人の目には北京政府の攻撃性を感じさせるものに映っているのは間違いない。
こうした異常とも言える反応は、日本が与野党で裏で示し合わせて台湾問題で強硬な政策を推進していると、中国指導部が疑っているからと想像できる。なぜなら、質問者の岡田氏は高市総理と非核三原則の見直しについて同様の見解を持っていると判断できるからである。
◾️岡田克也氏の外相時代の答弁
岡田氏は民主党の鳩山政権下で外相であった2010年3月17日、衆院外務委員会で非核三原則にも例外があり得ることを認める答弁をしている。
「緊急事態ということが発生して、しかし、核の一時的寄港ということを認めないと日本の安全が守れないというような事態がもし発生したとすれば、それはそのときの政権が政権の命運をかけて決断をし、国民の皆さんに説明する、そういうことだと思っています。」
この答弁に対して、質問者の岩屋毅氏(自民党、後の防衛大臣)は「きょうは、そこまでの話が聞けてよかったなというふうに思います。やはり、その時の政権として、万やむを得なき場合には、非核三原則の一部にその例外が生じることがあっても止むを得ない、これは当然、そういう判断に立ってしかるべきだと私は思うんですよ。」と述べている(以上、第百七十四回国会 衆議院・外務委員会議録第5号 p6)。
このように岡田氏は外相時代に非核三原則について「持ち込み」に関しては、緊急事態が発生した際に、時の政権が判断すべきという表現で核の持ち込みが容認され得ることを明確に示したのである。この時の見解は、昨日18日の小泉進次郎防衛大臣の会見でも「『持ち込ませず』の部分については、2010年当時の当時民主党政権でありましたけれども、岡田外務大臣による答弁を引き継いでいく考えであります。」と明言されるなど、歴代政権にも踏襲されている(防衛省・防衛大臣記者会見 令和7年11月18日)。
この日本の安全保障上、極めて重みを持つ答弁から15年後、当の岡田氏は今度は野党第一党の元幹事長という当時とは逆の立場で質問し、高市総理から台湾有事は存立危機事態となり得るとする答弁を引き出した。
高市総理:台湾を完全に中国・北京政府の支配下に置くようなことのためにどういう手段を使うか…やはり戦艦を使ってですね、そして武力の行使も伴うものであれば、これは、どう考えても存立危機事態になりうるケースであると、私は考えます。(参照・中国外交部警告文の大喜利大会に参加 “春望”版)
これに岡田氏自身が明確にした非核三原則の例外の見解を加えると「台湾有事で存立危機事態に陥れば、日本は米国の核兵器の持ち込みを認める」という論理的帰結に到達する。なお、この時の外務副大臣は現在、国民民主党の榛葉賀津也幹事長で、この問題でも答弁している。実際にこの議論になった時には国民民主党も政府と足並みを揃える可能性はある。
台湾問題を核心的利益とし、統一のためには武力の介入も辞さないとする中国政府にとって、高市総理の答弁は日米が核兵器を背景に台湾侵攻を阻止する構図となる。そして、その画を日本は与野党で描いている、と判断するのは当然と言える。
◾️高市総理の思惑はどこに
高市政権下では非核三原則の見直しの議論がなされる可能性が14日に報じられた(産経新聞電子版・高市政権で「非核三原則」見直し議論へ 安保3文書改定巡り 実現なら戦後の安保政策転換)。
もともと、核シェアリングについては安倍晋三元総理がテレビ番組などで語っており、それを当時の岸田総理が否定している(参考・核共有反対「広島出身の総理として…」に違和感)。高市政権下で安倍元総理のプランが再び浮上する可能性は十分にある。
こうした背景を考慮して、高市総理の答弁、中国側の反応を見ると、これまでとは違った景色が見えてくるように思えないか。高市総理はおそらくこうなることもあると想定して答弁したのではないか。米国もバイデン政権下で台湾有事での軍事的介入を明言している。台湾危機が迫っているとの認識を政府・与野党が共有しているとすれば、高市総理が思いつきで反射的に言ってしまったことなど考えにくい。
日本国民も現在の台湾海峡が緊迫した状況になっていること、国際社会の現実に目を向けるいい機会になったように思える。
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