凶弾に斃れた安倍元首相と国民が負う課題

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 安倍晋三元首相が8日、奈良市内で街頭演説中に銃撃され死亡した。67歳。銃撃した山上徹也容疑者(41)は殺人未遂の容疑で現行犯逮捕された。日本の戦後政治に大きな足跡を残した安倍元首相の死は今後の国の行く末にも影響を与えることが予想される。

■日本にとって大きな損失

フジテレビ画面から

 安倍元首相は午前11時半頃、奈良市内の路上で街頭演説をしているところ背後から山上容疑者に銃撃され、午後5時過ぎに搬送先の奈良県立医大病院で死亡した。病院の会見では頸部に2箇所の銃槍があり、弾丸によるものとみられる傷は心臓に達していたという(カンテレ・【速報】安倍元首相が死亡 搬送先の病院で確認 奈良市で演説中に銃撃され 病院会見「弾丸の傷が心臓に」)。

 今年2月、ロシアがウクライナに侵攻し、日本でも従来の専守防衛で国が守れるかを真剣に考えなければいけない必要に迫られている。その大事な時期に安倍元首相がいなくなるということは、日本にとって非常に大きな損失であるのは間違いない。

 ロシアの侵攻から3日後の2月27日には安倍元首相がNATOの核シェアリングを引き合いに、日本でも核シェアリングを議論する必要性があると主張した。ひと昔前なら、非核三原則を見直す内容の発言をした政治家はメディアからの総攻撃を受けて釈明に追われていたはず。それを堂々と口にできるのは、世論に阿るのではなく非難を恐れずに自らの理念の実現を最優先にする元首相だからこそであろう。

 日本国憲法前文にはこうある。

 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

 憲法は「外国の人は公正で信義に厚い」から、それを信頼して日本国の安全と生存を保持しましょう、と言っている。これまでの中国・北朝鮮、そして今回のロシアの行動を見れば、憲法の理念が机上の空論でしかないかが解ろうというもの。「平和を愛する諸国民の公正と信義など信頼することはできないため、自らの手でわれらの安全と生存を保持しようと決意した。」というのが、これからの日本の生きる道であるのは容易に理解できる。

 子供でも理解できそうな理屈をなぜか見て見ぬフリをして、国を危うくする憲法9条に固執しているのが現在の野党(維新は該当しないと思うが)である。その根底には「外国が攻めてくるはずがない」「攻められないように話し合う」など、憲法の前文をベースにした考えがあるのは間違いない。

■核シェアリングを論じない岸田首相

 安倍元首相は元海上自衛隊員から銃撃を受けた。これまで総理大臣や総理大臣経験者が襲撃を受けて死亡した例は、同じ長州出身の伊藤博文元首相など6人(襲撃後1年を経て死亡した濱口雄幸元首相を含む)。5・15事件の犬養毅首相、2・26事件の高橋是清元首相、齋藤実元首相が殺害されたことが、結果としてその後の軍部の暴走を招き、大日本帝国の破滅へと繋がった。安倍元首相の死も同様に日本が誤った道へ進むきっかけとなるのではという不安を呼ぶ。

 なぜなら、安倍元首相が凶弾に斃れたことは話し合うことなど全く考えず、目的達成のためには手段を選ばない者、いわば憲法の前文に反する者の存在を示しているからである。これは個人だけでなく、国家レベルでも同様。国連憲章2条4項は、国際関係において武力による威嚇または武力の行使を禁じている。この重要な憲章を、国連の最高意思決定機関とも言っていい安保理の常任理事国のロシアが堂々と踏み躙っている。

 こうしたことを考えると、最終的に国家の平和と安全を守るのは国家間の信義などではなく、単純に攻撃されないような抑止力と攻撃をされた時に確実に反撃し、敵を撃退できる軍事力にほかならない。ところが、その当たり前のことをはっきりと口にすることができる政治家はほとんど存在せず、安倍元首相は数少ない1人であった。

 そして、その安倍元首相はもういない。前述の核シェアリングについて岸田文雄首相は安倍元首相の発言の翌日(2月28日)の参院予算委員会で「非核三原則を堅持するわが国の立場から考えて認められない」と、核シェアリングの考えがないことを答弁した(核共有反対「広島出身の総理として…」に違和感)。

 政治家がこの状況では、国民1人1人が、国を守る意思を持って政治を動かすしかない。それが安倍元首相が我々に遺した教訓ではないかと思う。

■2022年の日本の危機

石原氏逝去を伝えるメディア

 個人的な見解であるが、多くの政治家が政治的な思惑を最優先に行動しているのに対して、安倍元首相は日本を誇りある国にする、この国を守るという理念に基づいて行動をしていた政治家であるという印象を持っている。

 伝えられる範囲での判断ではあるが、故石原慎太郎氏もそのような部分があったように思う。両者の違いは理念を実現するためには政局にも長けていなければならないと考える現実的な思考をするのが安倍元首相で、「言ってることが正しいのだから、他者に阿る必要などない」と孤高を貫くのが石原元都知事であるように感じる。

 いずれにせよ、理念的にも行動力においても傑出した2人の保守政治家が2022年に相次いで世を去ったことは、我が国にとって重大な危機が迫っていることを意味する。こうした危機から国を守るためには国民1人1人が論理的に現実的に物事を考え、それに従った選択をしていくしかない。

 7月10日投開票の参院選で有権者はどのような判断を示すのか。多くの国民が論理的に現実的に世の中を見て適切な選択をすることができれば、安倍元首相も草葉の陰で微笑むかもしれない。

 安倍総理、長い間ご苦労様でした。安らかにお休みください。

合掌

"凶弾に斃れた安倍元首相と国民が負う課題"に4件のコメントがあります

  1. 向日葵 より:

    あまりの衝撃に寝つけないでいます。私は自民党支持者というわけでも政治通でもないのですが、安倍さんは思いやりのある心優しい方との印象があります。他党議員が病気になった時に励ましメッセージを届けたり、ご自分の秘書官の仕事ぶりを批判された際は、一生懸命にやってくれていると反論されました。国会質問中、事務方でしたか安倍さんに何かお知らせした方を野党議員が声高に叱責したシーンを見たことがあります。その時も事務方を庇う発言をしています。立派な方だなーと思って来ました。
    亡くなられたのは午後5時3分であったと搬送先の院長が発表されました。
    婦人の到着を待って旅立たれたように感じ、涙が止まりませんでした。
    心肺停止状態であるとの報道でしたし、大変な状態であることは素人にも察せられ、なんとか頑張って!と私も祈り続けました。難しい状態であっても、最後の最後まで望みを捨てられないし、助かって欲しいと思うものです。そんな中、安倍さんが生きようと頑張っている中、医師も助けようと頑張っている中、日本中の誰もが助かって欲しいと願っている中、訃報のフライングを出すという信じがたい行動をした人間とメディアがありました。人の生き死を他社より先に出すことにどれだけの価値があるのでしょうか。そういう人間性だったんだな、、、あの人は。そう思いました。
    安倍さんは持病を抱えながらも、この国を良くしようと頑張って下さいました。感謝の思いで一杯です。どうぞ安らかにお眠り下さい。
    合掌

  2. 野崎 より:

    アベノセイダーズ アベ死ね!を連呼し続けた奴バラの想念が具現化したのである。
    いや、単なる個人の、異常者の思い込みによる犯行だ、との主張もある。

    確かに異常者は存在する。
    ネオファシズムを構成する要員達の想念は、社会にある空気を形成し異常者達をも包み込む。
    山口敬之氏が逮捕を免れたのは故安部氏が守ったからだと本気で信じ、故安部氏を憎む者達は多く多く存在する。

    空気、エートス、社会学者、故小室直樹氏の言葉、ルールー オブ ニューマがより適切な言葉だ。
    そして故小室氏はそれ故、社会にアノーミーが現出すると、そのアノミーは個人レベルでも起こると、
    ●アノミー
    個人または集団相互の関係を規制していた社会的規範が弛緩または崩壊したときに生ずる混沌状態。デュルケームが概念化した語。
    .
    何時もながらえらそ~に小難しい言葉を、、

    ネオファシズム構成員共が呼応し合う洗脳工作は着実にその効果を上げている。

    それが顕著に大きな社会現象として現れたのが40年代の大学紛争から赤軍に至る流れだ。
    社会に怨念を持つ者達への洗脳工作が成功裏に現れたのだ。
    支配と被支配の虚構をもって洗脳した、そして現れたあの憎しみ、暴力、

    それは今も続いている。
    その意味で赤軍、重信房子と今般の犯人は同類だ。

    今般の事は真に真に無念である。
    記事にある故石原慎太郎氏の逝去も同じくである。

    故石原氏が昭和43年、政治家を志した目的は日本を共産化から守るためだと公言された。
    あの極左の嵐が吹きすさぶ社会状況においてだ。

    これよりも、何としてもこの自由社会を、神より啓示された人類普遍の価値感に基づく、それすなわち近代国家を守らねばならない。
    基本的人権は神より啓示された価値感により確立されたのである。血の歴ををもって。

    追記
    あなたが不幸なのは全て今の政権のせいだ。
    税金を払うのは嫌だろう、その意味で減税しよう、我が党に投票すれば豊かにしてやる。

    今回の選挙で、この単純なフレーズを繰り返し用いる政党がある。
    古典的ともいえる言葉、資本家、搾取をも使う。
    そしてそれに強く共感する者達がいる。

    身体障碍者を利用するトリックスター山本太郎氏のれいわ新選組である。
    かれらは共産主義、ネオファシストである。

    ご返信は不要です。

  3. 野崎 より:

    先に故安部元首相へのテロはネオファシスト共にその所以があるとコメントした。
    その存在、証左の一環は以下である。

    仁藤夢乃なる者の論理、価値観は昭和40年代、いやそれ以前より連綿として現在に続いているのである。この論理を極めて単純化し洗脳工作として使っているのが山本太郎、れいわ新選組であるとコメントした。

    そしてその存在のみならず活動もしかり。
    こやつは韓国の反日団体と結託し日本における風俗問題を慰安婦問題と一体化させようとしている。
    そしてさらに、こ奴は政治、行政の内部に食い込まんとしているのだ。
    >第30期東京都青少年問題協議会委員に就任した。

    行政内部に仲間が存在するということだ。

    以下、コピペ

    活動家の仁藤夢乃氏が8日深夜、自身の公式ツイッターを更新。同日に奈良市内で演説中に銃撃され死去した自民党の安倍晋三元首相に対し、「今回のような事件が起こりうる社会を作ってきたのはまさに安倍政治」と厳しく非難した。

    一般社団法人Colaboの代表として、少女たちの支援活動を行っている仁藤氏は「暴力を許さず抵抗する活動を私も続けているが、今回のような事件が起こりうる社会を作ってきたのはまさに安倍政治であって、自民党政権ではないか」と、事件の原因は安倍氏自身にあるとの持論を展開。「敵を作り、排他主義で、都合の悪いことは隠して口封じをし、それを苦にして自死した人がいても自身の暴力性に向き合わなかったことはなくならない」と厳しく指摘した。

    さらに「立場にある人を追いやり、たくさんの人を死にまで追い詰める政治を続けてきた責任は変わらない。『誰の命も等しく大切』と多くの人が言う今、人の命の重さは等しくないんだなと感じさせられてしまう」とも発言。「参議院選ではそういう社会を変えるために活動する人や政党に投票したいが、どの政党も女の人権は後回し。家やお金や頼れるつながりがなく、賃金も安く社会構造の中で性売買に追いやられる女性の人権より、女の性を商品化する業者や買う側の『権利』を守ろうとする人が複数の野党から出ていて絶望する」と、10日投開票の参院選で女性の人権が軽視されてるとの思いをつづり、苦言を呈した。

    仁藤氏は2011年5月に、明治学院大学在学中に学生団体「Colabo」を結成。15年1月には第30期東京都青少年問題協議会委員に就任した。19年にはフォーブスの「30 UNDER 30 Asia」の(社会起業家部門に選出された。実妹は元AKB48・仁藤萌乃。

    以上。

    ご返信は不要です。

  4. 野崎 より:

    警備の問題点を指摘する主張が多くある。

    いや、結果論だ、後からは何とでも言える、との意見もある。

    断じて違う、警備の大々失態である。
    後からは何とでもいえる、ではない、始めから解っているのだ。

    優れたる建築現場では作業開始前にKYを行う。
    危険予知の略だ。
    作業班ごとに当日の現場で起こりえる、可能性のある危険を予測、指摘し各自用紙に記入し
    貼りだす。

    以下コピペ
    KY活動と危険予知訓練
    職場で実践することをKY活動といい、危険予知訓練(以降KYTと記載)と区別
    していますが、職場のKY活動を高いレベルのものにしようとすれば、そのための根
    気強い毎日のトレーニングが必要となります。したがって、ここまでは訓練であとは
    活動というように、ハッキリ区別することはできません。
    なお、危険予知訓練のKYTとは、危険(キケン)のK、予知(ヨチ)のY、訓練
    (トレーニング)のTをとって、KYTと略称されています。

    1 みんなで危険を予知して「安全衛生先取り」の話し合い
    労働災害を防止するには、事故を起こして後悔する前に、職場のみんな(チームワー
    ク)で話し合って、危険を予知して「安全衛生を先取り」することが重要です。
    その安全衛生先取りのために・・・・。
    まず、業務を始める前に、イラストシートを使って、あるいは現場で実施したり、さ
    せたりして、その業務に「どんな危険がひそんでいるか」を職場でサッと話し合い、「こ
    れは危ないなぁ」と危険のポイントについて合意します。
    次いで、対策を決め、行動目標や指差し呼称項目を決め、一人ひとりが業務の中で指
    差し呼称で確認し、行動する前に危険を防止します。このプロセスがKY活動です。
    人間は誰でも、つい「ウッカリ」したり「ボンヤリ」したり、錯覚をします。横着し
    て近道や省略もします。このような人間の行動特性が誤った動作などの不安全行動(ヒ
    ューマンエラー)をもたらし、事故・災害の原因となります
    1 みんなで危険を予知して「安全衛生先取り」の話し合い
    労働災害を防止するには、事故を起こして後悔する前に、職場のみんな(チームワー
    ク)で話し合って、危険を予知して「安全衛生を先取り」することが重要です。
    その安全衛生先取りのために・・・・。
    まず、業務を始める前に、イラストシートを使って、あるいは現場で実施したり、さ
    せたりして、その業務に「どんな危険がひそんでいるか」を職場でサッと話し合い、「こ
    れは危ないなぁ」と危険のポイントについて合意します。
    次いで、対策を決め、行動目標や指差し呼称項目を決め、一人ひとりが業務の中で指
    差し呼称で確認し、行動する前に危険を防止します。このプロセスがKY活動です。
    人間は誰でも、つい「ウッカリ」したり「ボンヤリ」したり、錯覚をします。横着し
    て近道や省略もします。このような人間の行動特性が誤った動作などの不安全行動(ヒ
    ューマンエラー)をもたらし、事故・災害の原因となります

    以上。

    くどいコピペだが、これがプロというものだ。

    現場に関しド素人でもわかる。
    安部氏の周り円陣を組み結界を張らねばならない、ならなかった、、

    背後に立たれる事を絶対に許さないゴルゴ13を引用してのコメントがあったが、よき比喩と思うとともに悔し涙がこぼれた、

    これは一体なんとしたことか、何たる手落ち失態か、

    責任者たちはいかなる責任を取るのか、こまま口を拭いその席にとどまるつもりか、

    ご返信は不要です。

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