「あなたを隔離する」北京在住の日本人女性いきなり自宅軟禁状態(1)
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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北京在住の日本人女性が3月8日、突然、北京市内の自宅での隔離を命じられた。夫が仕事で東京から戻った際、中国政府が指定する手続きを経たにも関わらず隔離を命じられ、同居する妻はずっと北京にいたにも関わらず同様の措置とされた。自宅ドアには周辺住民に「この住人を監督せよ」と書かれた張り紙をされ、夫婦は自宅から一歩も外出できない状況になってしまった。日本人女性に隔離に至った経緯を語ってもらった。その第1回をお伝えする。
■50代・夫は日中両国を行き来するビジネスマン
50代の日本人女性・加治なるみさん(仮名)は、仕事で日本と中国を行き来する日本人の夫とともに北京の1周50キロの環状線道路「三環路」の東側にある高層集合住宅内に住んでいる。外国人ビジネスマンなども比較的多く住んでいるエリアで、徒歩圏にインターナショナルスクールもある比較的裕福な層が住む地域だという。
加治夫妻が突然、隔離されたのは3月8日(日)のこと。夫が東京から戻った時に、騒動が始まった。
■町内会のような組織「社区」が行政の末端
私たちの住む集合住宅は、30階建ての高層住宅が10棟近くあり、敷地全体がフェンスに囲まれています。敷地内は住宅地の共同体組織かつ行政の末端組織的な役割も果たす「社区」と呼ばれる組織が管理しています。日本の町内会のような自治的なものではなく、行政組織の末端ですからかなりの権限を有しています。
敷地内には東西南北に6つほどゲートがあるのですが、新型コロナウイルスの感染が拡大した1月下旬からは南北の1つずつに限定され、それぞれをガードマンが見張る状況となりました。出入りする場合は、住民だけに与えられる「出入証」を所持しているかどうか、そして体温をチェックされます。
3月8日、夫が北京空港から自宅に戻るので、私は北側のゲートに迎えに出ました。ところが、ゲートに到着した主人がガードマンと押し問答しており、中に入れてもらえません。そこで私もゲートの外に出ました。それでもラチが明かず「責任者を呼んでください」と言ったところ、ガードマンが社区の担当者に携帯電話で連絡し、しばらくして担当者がやってきました。
担当者は主人に「どこから戻ったのか」と聞き、私にも「日本から戻ったのか、北京にいたのか」と聞いてきました。私は「北京にいました」と答えたところ、いきなり「あなたも隔離の対象になる」と言われました。
■「恣意的な判断など受け入れられない」と抵抗
私は新型コロナウイルスの感染が拡大する前からずっと北京にいたのに、いきなり「隔離する」と言われたのです。これが中国です。日本では有り得ない話ですし、考えてみるとバカバカしい話ですが、2週間も外出できないのは困りますから夫とともにこう言いました。
「私たちは中国政府からの情報に基づき日本大使館が発信した情報に従って、北京到着前に夫は指定のサイトにも登録を済ませるなど、貴国の要請に従っている。日本大使館からの情報には『本人の家族が隔離対象になる』とは記載されていない。あなたがこの場で恣意的に判断するのは到底、受け入れられるものではない。家族も隔離対象になるというのであれば、それを正式に命ずる書類、法的根拠を示しなさい」。
すると担当者は「それでは調べてみる」ということで、その場は収まり、私たちはゲート内に入って書類に連絡先などを記入し自宅へ帰りました。
■住人全てが隔離対象「嫌ならホテルに泊まれ」
自宅に戻って5分ほどすると、先ほどの担当者が自宅にまでやってきたのです。彼はこう言いました。
「やはり家族も隔離対象になる。それが嫌な場合は、本人(夫)が1泊600元(約9000円)のホテルに移る必要がある。あなた方の部屋はリビング1つ、トイレも1つなので、独立した空間で隔離したことにならない。同じ空間で暮らしている場合は、その住人の全てが隔離対象になる」。
私たちが「書類は?」というと、担当者がその場で上長らしい人に電話し「書類を見せろと言っています」と相談しています。そのやりとりの中で「北京で何をしている?」など細かいことを聞き出したので、私はこれ以上詮索されて何か自分にとって不利な処理をされるのも困るので、隔離を受け入れる判断をしました。
そのあとA4サイズの2週間分の体温記入表、ウエットティッシュ1パック、ごみ袋1枚を渡されました。その時に自宅の部屋に「この住人は3月22日まで自宅観察の状態にある。皆さん監督してください」という意味の文章、「社区」とその上級政府管理部門である「街道」の連絡先などが書かれた紙を、ドアにデカデカと貼られたのです。
【第2回に続く】