新型コロナウイルス、身を守る情報とその集め方

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 今回から、新興メディア令和電子瓦版で執筆する機会をいただいた。先の見えない時代に、この連載で進路を示す灯り(あかり)を、読者と共に灯したい。

 早速、私たちが直面している問題、新型コロナウイルス(COVID-19)について、役立ちそうな情報を紹介してみよう。これをめぐる情報は溢れているが、私たちに本当に必要な情報は少ないように思える。特に日本に住む人が触れる機会の少ない英語の医学情報から、役立ちそうなことをピックアップしてみる。

1.雑音を排して、専門家から学ぼう

【感染への防護】

医療用マスクには一定の効果が認められたとされる

 新型コロナウイルスは、それによる疾患を即座に完治する薬がない。そのために予防策が重要だ。SARS(重症急性呼吸器症候群)やインフルエンザでの感染防止策は、今回の新型コロナでも推奨されている。

 そうした対策67報告を調査した論文では、①手洗い、②バリア(医療用の遮蔽器具、手袋、医療ガウン、ゴーグルやシールドなど目と鼻の防護具)の使用、③感染者隔離、④清掃と消毒などの衛生措置、⑤医療用マスクの使用が行われ、効果があったとされる。(“Physical interventions to interrupt or reduce the spread of respiratory viruses” Jefferson T. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Jul)

 インフルエンザで「うがい」は、効果は出ていない。緑茶のうがいがインフルエンザの予防効果をみた報告5つを集めた論文では、すべてに有効性は示されなかった。(“Effect of Tea Catechins on Influenza Infection and the Common Cold with a Focus on Epidemiological/Clinical Studies” Fukushima D. Molecules. 2018; 23: 1795)

(筆者私見)日本の行政など推奨する防護策は妥当であり、上記の結果は個人の生活にも活用できるだろう。うがいの効果が統計的に見られないのは意外だ。適切なやり方のうがいではないのかもしれない。

【感染率と死亡率、なぜ日本は低いか】

ジョンス・ホプキンス大学の医学部サイトで、各国の感染累計が一覧できるようになっている。

 日本の感染者数は、5月22日時点で1万6513人と、世界180の国と地域で39番目と少ない。死亡者でも28位、796人だ。韓国や台湾も少ない。なぜ東アジア諸国で感染は抑制されているのか。明確な理由はわからない。ただし、大量に死者がでた国では医療体制が崩壊し、感染者が満足な治療ができなかった。

 5月22日時点で約3万7000人が亡くなったイタリアの現地の医師・公衆衛生の研究者が3月時点で医学誌ランセットに寄稿し、同国の問題点を列挙している。

① 医療費抑制政策が行われ、GDP比でEU中もっとも低い。 

② 国民の8割が使う公的医療制度と、民間保険会社による複数制度の併存で中央からの伝達が行き渡りにくく、制度の柔軟性に欠ける。 

③ 公的機関と医療機関の連携が不十分。 

④ 官民とも医療への長期ビジョンに欠ける。

 以上が指摘されている。

(”The Italian health system and the COVID-19 challenge“ Armocida B. Lancet Public Health. Mar 25, 2020)

(筆者私見)東アジア諸国の新型コロナウイルスへの抑制が成功した理由は、今後の解明が待たれる問題だ。もしかしたら遺伝的特質や予防接種(BCGなど)の影響かもしれない。

 ただし、医療崩壊が起きず、それが好影響を与えたことは確かだ。欧州の医療保険では保険料の低い公的保険と、高額な民間保険(国民の1~2割が加入するがサービスは良い)の併存が多い。今回のコロナ危機では各国で、公的医療保険に対応する病院に負荷が加わり、医療制度混乱の一因になった。

 日本の国民皆保険制度は、持続可能性が少子高齢化の中で困難な状況にある。そして自由度が少ない、国民負担が大きいなどの批判も多い。しかし、今回の危機では機能したと思う。東アジア、東南アジア諸国も、日本をモデルにした国民皆保険制度を採用している。それが感染者、死者抑制の一因かもしれない。

【PCR検査は重要か】

 日本は新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査が少ないとされる。医師が発熱者を選別してから、検査をする。4月ごろ、日本では、メディア(主にテレビのサイドショーだろうか)と野党議員が「他国に比べて少ない」と騒いだ。

 ただし、このPCR検査の数は、世界の医学界で大した問題になっていないようだ。

 英国インペリアル・カレッジ(医科大学)が検査対策のリポートを発表している。PCR検査などを増やしても、感染の拡大は避けられない。その拡大の抑制は潜在患者、医療従事者などの感染予防策を徹底すること。そして感染者の追跡と、その隔離や治療などの対応で効果が出る。

 ただし、検査の拡大は感染者の復職・社会復帰を早くさせる意味はある。また、人々が新型コロナウイルスの免疫を獲得するまで感染拡大を容認し、それを検査の拡大で把握する政策も考えられる(集団免疫戦略のことか。英国などで一時採用)。しかし、これは経済的、倫理的、法的問題など、なさまざまな課題に直面してしまう。

(“Role of testing in COVID-19 control”23 April 2020)

(筆者私見)PCR検査を増やすことは、重大な問題ではない。日本政府の行っている感染者の追跡、その隔離と治療という政策は、国際的に専門家に推奨されている方法で医学的に批判されるものではない。実際に専門論文を見ると、日本の政策を特に批判したものは見つからなかった。

【規制の適切な緩和方法は?】

 北半球の諸国では、感染拡大のペースが鈍化している。新型コロナウイルス対策で、社会活動の再開方法が問題になっている。

 中国の例で、社会的距離拡大策のような介入を緩和した場合の感染者の再増加に及ぼす影響を推定し、実効再生産数(Rt)と確定例致死率(cCFR)を慎重に監視する必要があると主張した。実行再生産数は再び罹患する人の割合、確定例致死率は死者数だ。中国では、2020年2月17日から、封じ込め策の緩和が始まっているが、その数値を参考にしている。

(”First-wave COVID-19 transmissibility and severity in China outside Hubei after control measures, and second-wave scenario planning: a modelling impact assessment” Leung, Lancet April 2020) 

(筆者私見)RtとcCFRは、日本政府が重視している数値だ。ただし、その推定モデルでは批判が出ている。各国が採用している方法を、日本も採用している。

 字数の関係で、以下短く記す。

【死亡率】新型コロナウイルスの致死率はそれほど高くない日本のクルーズ船では0.99%。SARSの9.5%、MERS(中東呼吸器症候群)34.4%よりは低いが、インフルエンザの0.1%より高い。中国の報告は集計中だが、観察対象ごとに15%-0.4%と差がある。ただし高齢の人のリスクが高く、クルーズ船死者は75歳以上だった。(Rajgor Lancet Mar27.2020)

【感染の形】感染者からの糞便でもウイルスは残る。糞便による拡散はありえる。糞便の陽性期間は7日という調査もある。(Nature Med,Mar13 2020 Xu)

 空気感染はありえる。実験で新型コロナウイルスは空気中では3時間、プラスチック、金属さらに段ボールの表面では、それぞれ72時間、48時間と24時間まで検出された。この結果は空気ないし媒介物による感染の可能性を示している。(Holbrook MG. N Engl J Med. Mar 17, 2020) 

 再感染もある。中国172例の感染者でPCR検査で陰性判定が出たのに7日後に再び陽性化したのは25例(14.5%)。症状は軽くなった。(Yuan J. Clin Infect Dis Apr 8, 2020)

【紫外線】紫外線による抗ウイルス効果はありそう。他のコロナウイルスは照射で同様の結果であった。(Bedell K. Infect Control Hosp Epidemiol 2016;37:598-9)

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