新型コロナウイルス、身を守る情報とその集め方

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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2.恐れることなく、リスクを減らす対策を

厚生労働省ポスターから

 こうした専門家の意見を集めると、以下のことがわかる。

(1)新型コロナウイルスは、致死率は低いが、感染力はインフルエンザ並みに強い。ただし、インフルエンザなどの呼吸器感染症の予防対策を参考にして対応することで、感染リスクは下がる。

(2)日本政府、行政の公衆衛生上の対策は国際的な専門家の知見に照らして、おかしなことはしていない。つまり医療の持続性を確保し、無闇に検査をせず、感染ルートを確認し、予防を推奨するという方法だ。

(3)WHOは、当初、人からの感染、空気感染はないと言っていた。それなのに、専門家の研究を見ると、早期から空気感染、人からの感染はあった。専門機関なのに、その分析力に疑問がある。中国への配慮で歪められた可能性を疑われかねないだろう。

 ただ問題なのは情報発信だ。英語圏の行政や専門家の発信する膨大な情報と比べると、日本の政府、行政、各団体の情報発信はネット上で見劣りする。また膨大な情報を、「解釈・編集」し、「使いやすい・見やすい」形で発信することが必要だ。これは各国・各機関が苦心しているところだが、日本の各機関は、改善の余地は大いにある。例えば米国保健省の特設サイト、 米国立バイオテクノロジー情報センターは学術論文から統計まで一覧できるようになっている。

 日本はこうした科学専門情報の活用が、社会的に、なかなか行われない印象がある。政策でも、企業活動でも、日常生活でもだ。これは専門家の問題、私たち国民の科学リテラシーの問題がある。しかし、それはもったいない。もっと活用をするべきだろう。

 私は、海外情報を集めることで、特に難しいことをしたわけではない。いくつかの英語圏の政府のポータルサイト、グーグル(特にその中のスカラーという論文検索サービス)、医学雑誌、学会のサイトを読み、引用数の多い論文を紹介しただけだ。翻訳でわからないところは、無料翻訳サービスを使った。

 同じことは、日本語の検索、厚生労働省の特設サイトでも行える。怪しい情報に飛びつく前に、冷静に情報を受け止め、検索して確かめる習慣を身につけた方がいい。

 そしてその際に、その情報を作った先人や専門家たち、現時点で医療に関わる方々、生活を支えて下さる方々への感謝の気持ちを持つと、真剣に情報に向き合えるし、その結果、効果的にその情報を扱えるだろう。

 私は核物理学を大きく進歩させた物理学者マリー・キューリー(1867―1934)の言葉を思い出す。

「人生において怖れることは何もない。ただ理解するべきことがあるだけだ」

 彼女はこうした態度で、女性・外国人(フランスにおけるポーランド人)という不利な立場にもかかわらず、科学の世界でも社会活動でも大きな業績をあげた。

 恐怖に右往左往し、不必要な行動を行って進むべき道を見失う必要はない。冷静に問題に向き合い、「理解」すれば、私たちはこの新型コロナウイルスを克服できるはずだ。

(注)上記の専門論文の紹介で私は中身まで精査していない。量が膨大であり、有意義な論文の見落としもあるだろう。そして私は専門家でないので誤訳などもあり得る。自己責任で、対応してほしい。誤りの指摘は歓迎する。

(本文に入れない追加のつぶやき)

 英語ができない私が言うのもおかしいが、新型コロナウイルス問題、日本から外国ヘの専門的な情報発信が少ない。専門論文で日本発のものがない。外国メディアの特派員と日本人による情報発信で、歪んだ日本像が拡散している。こうした問題も解決する必要があるだろう。

 また日本の凋落する既存メディアは、政府の批判を繰り返すのではなく、人々の健康や公衆衛生に役立つ有意義な情報の拡散こそ、するべきことだと思う。そのほうが存在感を発揮できるはずだ。しかし、不思議なことに彼らはしない。だから経営危機なのだろう。

石井孝明

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