「あなたを隔離する」北京在住の日本人女性いきなり自宅軟禁状態(3)

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 北京在住の50代の日本人女性・加治なるみさん(仮名)が北京市による新型コロナウイルス感染防止のために夫とともに自宅で隔離されて今日で6日目となった。連載の最終回の今回は、日々の様子とともに中国人の新型コロナウイルスへの向き合い方などを語っていただいた。

■中国は「総動員体制」 社区の取り組みが真剣な理由

感染者の数を伝えるアプリ(提供写真)

 隔離生活で最も気を使うのは食料品の仕入れであり、その方法としての外部との連絡です。注文した荷物の受け渡し場所になっているマンションの敷地の北側のゲートには山のように荷物が置かれ、宅配便の会社のスタッフが一日中詰めています。宅配員は敷地内に入れないため、隔離された私たちの荷物は管理室の人が受け取りに行き、隔離されていない住民は自分で取りに行きます。

 私の住む集合住宅内では一連のシステムは非常にスムーズに稼働しており、中国の都市部では既に「隔離インフラ」とでも呼びたくなるような体制を築きあげていると感じます。社区とマンションの管理室の連携もスムーズで、「総動員体制」とでも呼びたいぐらいです。私は仕事上、宅急便も良く使うのですが、配達員が北側ゲートに来ると管理室の人でなく社区の担当者が私の所に来て配達する荷物を受け取り、北側ゲートまで持っていき配達員に渡します。細かいことですが、社区と管理室で仕事の住み分けができているのでしょう。

 第1回でも述べましたが、中国の住民は社区の管理下にあります。感染者が出ると社区の担当者の責任が問われるようになっているのか、取り組みは真剣そのものです。中国共産党の人を管理するシステムは良くできていると思います。

 同じマンションの下の階に仲良しのご近所さん夫婦がいるのですが、夫のSNSで私たちが隔離されたことを知り、夫のスマートフォンに「大変だろうから果物を届けておく」というメッセージをくれました。ドアをあけたら箱が置いてあり、中に新鮮なマンゴーやリンゴなどが入っていました。その心遣いに感動しましたが、それでも接触しないようにドアの外に置くというのは徹底していると感じさせられました。

■中国人の伝染病への強度な恐れ

 今回の新型コロナウイルスの騒動が始まってから、中国の人々の危機意識は相当なものがあると感じさせられます。私が隔離される前からマンションの敷地内で見かける人は全員マスクをきちんとつけていましたし、エレベーターでも他人が先に乗っていると狭い空間で一緒にいたくないのか「先に行ってください」と言われ、後からは乗ってこないことがよくありました。

 今は、ほとんどの人がフェンスで囲まれた敷地から出ず、買い物も携帯アプリで済ませている人が多いようです。

 中国人のDNAなのか、伝染病に対する恐れ、警戒は日本人よりもずっと高いと感じます。隔離対象でもないのに、ドアから一歩も出ようとしない人も少なくなく、そこまで恐れる心的態度は、私にはよく理解できないほどです。

■情報源はアプリ 感染情報は刻々と更新

感染者が出た社区を示すアプリ(提供写真)

 人々の情報源はアプリが中心です。中国、海外の感染者数/重症者数/死亡者数などが刻刻と更新され、政府の情報管理が良くも悪くも一元化されています。北京市についても感染者の出た社区が逐一報告され、自宅から何キロ以内にそのポイントがあるか、などが位置情報とともに示されるので、一元化された情報が視覚化されているという意味では現況が整理できる安心感があります。

 SNSでは政府批判や風評も飛び交いますが、すぐ削除されます。政府批判のコメントを書くとSNSのアカウントが停止され通信・決済インフラを遮断された状態になるため、普通は書きません。当然、ポジティブなコメントがSNS内の支配的な空気感になります。このあたりも共産党の情報管理です。

 ちなみに日本に関する書き込みは多く、2月頃は日本のマスクなどの寄付に対する感謝と称賛のコメントが並びました。最近では日本政府の施策の遅れに対し、中国の優越を誇る投稿が目につきます。感染拡大防止に最も成功していると言われる台湾については、ほとんどコメントを見かけません。うっかり何か書くとアカウントを停止される可能性があるため、発言を控えているのかもしれません。

■隔離生活もう少しで折り返し点 皆さんの参考になればの思い

 隔離された生活も6日目に入りました。もう少しで折り返し点です。天気も良くなってきているのでドアの外に出られないのはつらいのですが、今のところ我慢できないというほどではありません。後半はストレスが溜まってくるのかもしれませんが、我慢するしかありません。夫とともに、この苦しい時期を乗り越えようと思います。

 日本もまだピークアウトが見えない状況にあるようですが、これをご覧になっている皆さん、どうかお気つけください。私の話が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

【終わり】

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