嘱託殺人山本直樹容疑者で思い出すClayton Univ.

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性から依頼され、同女を殺害したとされる2人の医師のうち、山本直樹容疑者(43)が医師免許を不正取得した疑いが浮上してきた。26日にメディアが一斉に報じた。そこで思い出されるのが、米国の”クレイトン大学医学部”である。

■山本直樹容疑者、海外の大学医学部卒業は虚偽か

写真は本文とは関係ありません

 報道によると、山本直樹容疑者は都内の医大に一時在籍後、約10年前に海外の大学の医学部を卒業し、医師国家試験を受験して合格したとされる。ところが、京都府警が大学に確認したところ、卒業を確認できなかったという。

 医師国家試験は海外の大学の医学部を卒業しても直ちに受験資格が得られるわけではなく、「当該申請者個々人の能力や、当該申請者が受けた教育等を審査」して、その当否が決定される。その場合の申請書類については、卒業証書の写し又は卒業証明書と、履修した教科課程及び時間数を明らかにした書類の提出が求められている(以上、参照・厚生労働省HP:医師国家試験受験資格認定について)。

 報道が事実であれば、山本直樹容疑者は受験の際に卒業証書の写し又は卒業証明書を提出していることになるから、私文書偽造等、同行使の疑いが濃厚(刑法159条、161条1項)。なお、外国の公務員の作成した文書も、私文書偽造の対象となる(最高裁決定昭和32年4月25日)。

■テレビ出演した「クレイトン大学医学部」の男性

 容疑の段階なのではっきりしたことは言えないが、学位の詐称と似た例としてディプロマミル(Diploma mill)がある。直訳すれば「学位工場」で、学位を売ることをビジネスとしていると言っていい。

 今から40年ぐらい前のこと。高校生か大学生だった僕は「プロポーズ大作戦」(ABC系、東京ではテレビ朝日系が放送)を見ていた。フジテレビ系の同名のドラマではなく、故横山やすしさんと西川きよしさんが司会をしていたバラエティー番組である。素人の大学生が出演して集団で”公開お見合い”をする「フィーリングカップル 5vs5」が人気コーナーであった。

 その番組にある男子大学生が出演した。その男性は「クレイトン大学医学部です」と自己紹介し、会場をどよめかせた。日本の医学部ですら、知力と親の財力が評価されていた時代、アメリカの大学の医学部に入学(予定)というだけで驚きの対象である。僕自身、「すごくお金がかかるのだろうな」「どうやって受験したのだろう」「なぜ、わざわざ米国の大学の医学部に行くのだろう」という疑問が交錯したので、よく覚えている。あまりに印象が強烈だったため、その後も「クレイトン大学」という名前だけはずっと覚えていた。

■米国にある3つの「クレイトン大学」

 当時、彼が言ったクレイトン大学がどのような大学か知る者などほとんどなかったであろう。今、調べてみると、それに該当しそうな大学、大学もどきはいくつかある。

①クレイトン大学(Creighton University)米ネブラスカ州の私立大学

②クレイトン州立大学(Clayton State University)米ジョージア州の州立大学

③クレイトン大学(Clayton University)非認定大学

 ①と②については実際に存在する米国の大学である。問題は③。これは現在は学位授与の許可、免許すらない団体とされ、ディプロマミルの1つのようである。15年ほど前、FNNの取材で、聖心女子大学の教授がクレイトン大学(Clayton University)の博士号を使用していたことが報じられ、有名になった。このあたりの事情は京都精華大学人文学部客員教授の内田樹氏のブログ「内田樹の研究室」の中の「博士号売ります」(2007年4月5日公開)という回で詳細に報じられている。

 もちろん、件のプロポーズ大作戦に出演した男性が、③の大学の医学部に進学予定だったかどうかは分からない。①か②の医学部だった可能性もある。ただ、今から40年ほど前に「クレイトン大学医学部日本人特別枠募集」という広告が出され、多くの日本人から大量の資金を集めた団体があったとされており、それが③ではないかという疑いは濃厚である。1980年代、日本で生まれ育った日本人がネブラスカ州やジョージア州の大学の医学部に進むルートなどほとんど考えられない。また、当時は③も大学としての実体があったのでは、という情報もある。

■嘱託殺人容疑と学歴問題の真相解明を

 山本直樹容疑者がどこの大学の医学部出身を名乗っていたのか分からないが(アジアの大学という情報もあり)、京都府警が実際に問い合わせたのであれば、③クレイトン大学(Clayton University)のような現在は実体のない団体ではなく、今でも実体のある大学だったのかもしれない。それは今後、明らかになってくるであろう。もし、ディプロマミルであれば、クレイトン大学以外にも存在する。

 今回のALSの女性への嘱託殺人容疑はその真相を明らかにして、必要であれば厳しい刑事責任を追及していただきたいが、医学に限らず、アカデミックな世界での学位商法にもメスを入れてほしい。何かと話題の小池百合子さんはどうなのか、知らないが(笑)。

 ちなみに僕が青山学院大学大学院法務研究科を卒業するためにかかった費用は●百万円以上、働きながら卒業したので、平日の睡眠時間は0~2時間という日が続いた。学位を得るためだけに学んだわけではないが、学位を得るには、それほど努力・労力が必要とされるのである。

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