「男だろ!」は良くて「お母さん食堂」はダメ?
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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コンビニエンスストアのファミリーマートの惣菜シリーズ「お母さん食堂」の名前を変更してほしいという署名活動を、関西の女子高生がChange.orgで行った問題はネットを中心に少なからぬ波紋を投じた。そのさ中に行われた箱根駅伝では優勝した大八木弘明監督(62)が自校の選手に監督車両から「男だろ!」と声をかけ続けた。件の女子高生、記事にしたビジネスインサイダーの竹下郁子氏はそれをどう聞いたのか。
■箱根駅伝で話題の「男だろ!」
箱根駅伝は3日に終了し、残り2km付近で駒澤大が首位を走る創価大学を逆転して通算7度目の総合優勝を果たした。前代未聞の逆転劇に大いに盛り上がったが、ネットで話題になったのは大八木監督の檄である。
「男だろ!」「お前は本物の男だ」など、「男」を強調する檄は昭和テーストの頑固親父風であり、監督の檄を受けると元気になるとする選手も少なくない(日本テレビ系4日放送スッキリなど)。
大八木監督が「男だろ!」という言葉を使う趣旨は(相手との戦いに怯んではいけない、最後まで闘志を持って戦え)というものと思われる。その背景には、人間を含む動物は縄張りをめぐって、あるいはメスをめぐってオス同士が戦うことが多い(多かった)という歴史及び現実があるのだろう。
通常、動物のオスはメスより大型であり、外敵と戦う役割を主に担ってきた、いわば生物学的な理由によって形成された社会的な共通認識である。現代社会もその影響が残っており、それを拭い去るべきものなのかも考え方が分かれるところ。いい、悪いではなく、それが性差であり、そういう歴史を我々は歩んできたのである。
この大八木節を多くのメディアは好意的に伝え、否定的な声は聞こえてこない。「『男だろ!』を男性優位の社会を肯定的に捉えるものなどと言うのは野暮」というのが大方の考えではないだろうか。
■ファミリーマートの「お母さん食堂」にクレームの女子高生
一方、「お母さん食堂」の名前変更を目指す理由として、女子高生らは「『お母さんが食事をつくるのが当たり前』という意識を植えつけてしまう『商品名』は、子どもをはじめすべての人に対し、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)を深刻にする原因にもなります。」(Change.org:ファミリーマートの「お母さん食堂」の名前を変えたい!!!)としている。
また、その問題を記事にした竹下郁子氏は、ガールスカウト日本連盟事務局の篠宮かおりさんの「性別役割分業を助長するようなネーミングが違和感なく受け入れられる社会であるということもまた事実。こうした社会の空気を作り上げるのは言葉であり、その影響力はとても大きい。私たちは言葉についてもっと敏感になるべきです。」という言葉を紹介している(ファミマ「お母さん食堂」の名前変えたいと女子高校生が署名活動、「料理するのは母親だけですか?」)。
彼女たちがどのように考えるのも勝手だが、こうした声によってメディアはこれまで性別に関する表現の一部を自粛してきた。記者ハンドブック(共同通信社)の差別語、不快用語には不適切表現として以下のものが挙げられている。
【女性を殊更に強調、特別扱いする不適切表現】
★男勝り・女だてらに・処女作品・才色兼備など
【男性優位社会などを背景にした不適切表現】
★夫唱婦随・売れ残り・男いらず・出戻り・オールドミス・女の浅知恵・女々しいなど
※いずれも抜粋
不適切表現はまさに女性を貶めるもの、男性に劣後する存在としての女性を表現するもので、不適切なものが含まれていると思う(微妙なものもあるが)。テレビや新聞ではこれらの言葉が出てこないのも当然と言えば当然である。
■不適切表現と「男だろ!」「お母さん食堂」との違い
では「男だろ!」「お母さん食堂」は不適切表現なのだろうか。どちらも性差に基づく特殊な表現ではあるが、前述の不適切表現と異なるのは、一方の性を貶めるものではなく性別による特性、もっと言えば特長を示している点にある。
「男だろ!」は動物のオスが持つ闘争本能であったり、外敵と戦う勇気や体力・知力を発揮しろというものであろう。いわばオスの特性に着目した言葉と言える。一方の「お母さん食堂」は、母親の持つ包容力、きめ細やかさ、子供に対する愛情の深さをイメージしたもの。男性を貶めるものでもなければ、女性の役割の固定化を図るものでもない。女性である母親の持つ男性よりも相対的に優位なイメージを利用したものであろう。それに惹かれるのは男性に限らない。
女子の駅伝を指導する大八木監督が「女だろ!」と檄を飛ばし、ファミリーマートの惣菜コーナーが「お父さん食堂」では性差に基づく特長を示すことができない。それらにどのような効果があると言うのか、竹下郁子氏や件の女子高生には考えていただきたい。
性による表現は時に一方の性を貶めるものになる場合もある。しかし、「男だろ!」も「お母さん食堂」はその逆、特定の性の特長を表現しているということを理解できないと、特性を無視して全て同一線上で語る論理的に整合性が取れない主張として軽蔑され、世論から反発を受けるだけであろう。
女子高生たちが本当に大人の介入なしに始めたのかは知らないが、悪い大人に騙されているとしたら、早めに手を引くことをお勧めしたい。
いい記事ですね~。
監督の「男だろ!」の呼び掛けを耳にし、松田さんは記事にするかもしれないと思いましたが、当たりでしたね(笑)
言葉は大切ですが、その言葉の真の意味を理解することも大事にしたいものです。
言葉尻を捉えて攻撃するのではなく、差別と区別の違いを若い方々に伝えるのも大人の役割ですね。
>>月の桂様
コメントをありがとうございます。
>>いい記事ですね~。
お褒めいただき光栄です。そのように評価していただけると大変、うれしいです。ありがとうございます。
竹下郁子氏のように、もう凝り固まってしまったであろう人はどうでもいいのですが、関西の女子高生3人にはぜひ、もう一度、自分の頭で考えてほしいと思います。
しかし、記事にするのを読まれましたか(笑)。それもありがたいことです。これからも期待に応えられるように書き続けたいと思います。
松田さんの記事を拝見して「女々しい」という言葉を、思い浮かべました。女々しいとは、「男のくせに、男らしくなく、女みたいで見苦しい」という意味ですよね。
私は、フェミニズムの方々に問いたいです。お母さん食堂と、女々しいという言葉、どちらが女性差別かと。
お母さん食堂の、お母さんという言葉には、女性の持つ良さが感じられます。でも、女々しいという言葉は、女性の持つ悪い部分を意味します。
話は飛びますが、伊藤詩織事件において、当事者である伊藤詩織氏は、よく涙を流します。それを見て、かわいそうだと思う視聴者もいるかもしれません。でももし、山口氏が泣いたら、かわいそうだなぁと思う人はあまりいないと思います。
私ははっきり言って、数々の客観的証拠により、伊藤氏よりも、山口氏の発言の方に信憑性を感じています。でもそれは別として、女性の涙は美しい、男性の涙は見苦しいという、一般的なものの見方があるのも事実でしょう。
フェミニズムの方々が、本当に男女平等を目指すのならば、山口氏が記者会見で涙を流して、周りから失笑されたりしたら、「男女差別です」と抗議すべきだと思うのですが、それはしないでしょうね。フェミニズムの方々は、男女平等を目指しているのではなく、ただ女性にとって都合のいい世界を目指しているだけですから。
私は女性ですが、そんな世界は嫌です。もちろん、料理は女性の仕事だと断定するのは好きではありませんが、女性の権利ばかりを主張して、男性にプレッシャーをかけるのには全く抵抗がない、そんな世界は。男性も女性も、お互い思いやりさえ持っていれば、差別なんて言葉すらなくなるのにと、とても悲しい気持ちになりますよね。
松田さん、いつも、考えさせられる記事をありがとうございます。
>>名無しの子様
コメントをありがとうございます。
女々しいは共同通信の記者ハンドブックで使用禁止用語に指定されている、差別用語でしょうね。それとお母さん食堂を同一線上で語るのは無理があるというご意見は全くその通りだと思います。
伊藤氏・山口氏の件でも、女性の方から客観的な意見が出るのは嬉しい限りです。
>>女性の権利ばかりを主張して、男性にプレッシャーをかけるのには全く抵抗がない、そんな世界は。男性も女性も、お互い思いやりさえ持っていれば、差別なんて言葉すらなくなるのにと、とても悲しい気持ちになりますよね。
よくぞ、おっしゃってくださった、という気持ちです。
素晴らしいご意見をありがとうございました。
》》ジャーナリスト松田様
「お母さん食堂」関連の記事を読んでいて、ややこしい時代になってきたなと実感しています。差別やヘイトはもちろんのこと反対です。言葉狩りに近い書き込みや、記事を目にすることが増えたように感じます。松田さんの記事には救われる思いがします。
箱根駅伝の駒大・大八木監督の檄には、小生は違和感に近い感情を持ってしまいました。特に9区で創価大の石津選手に離される、駒大の選手に対して「(8区の)〇〇の走りを無駄にするな!」には不快な思いが込み上げました。
もちろん大八木さんの個性的な指導や、選手との信頼関係が十分に構築されているのでしょう。結果的には先頭を走る創価大の区間賞の走りで、本来なら(逆転は無理な)決定的と言っても過言ではない3分以上の差を付けられてしまいました。
みなさんもご存知のとおり、最終10区ではその「本来なら決定的な差」を、駒大は劇的にひっくり返すことになりました。
よって大八木監督を「男にした」駒大の快挙は美談で語られる…。大八木さんの〈微妙な檄〉を、駒大の選手たちが守ってくれたように感じています。
さておき、2020年の中央競馬に於いては男女の力関係は、圧倒的に女性上位です。ご存知の方も多いと思いますが、男女(牡馬と牝馬)混合のG1レース11鞍のうち、女子(牝馬)が9勝と圧倒しました。男馬は僅か2勝しか挙げられませんでした。20年前には考えられないことです。少なくとも競馬の世界ではしばらく女性の躍進が続きそうですね。
>>MR.CB様
コメントをありがとうございます。
正直、お母さん食堂にクレームをつけるとはクレイジーの一言のように感じますが、これが市川房枝氏から連綿と続く日本的な歪んだフェミニズムという感じがします。女子高生には早くこうした行為の醜さに気づいてほしいと感じています。
確かに中央競馬は女性上位でしたね。セックスアローワンスがなくても結果はそれほど変わらないのではというぐらいの差がついています。優秀な種牡馬が出ないのは少し残念ですが、牝馬のレベルがそれだけ上がったということで、優秀な牝馬からディープインパクトのような馬が出てくるのを楽しみに待ちたいと思います。