免職教師の叫び(33)札幌市教委の思惑
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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鈴木浩氏(仮名)を免職にした札幌市教委の対応に関する報告書が、近日中に公開されることになった。北海道新聞2月17日付け朝刊に記事が掲載された。2016年に写真家の石田郁子氏が市教委に被害を訴えた際に、法律の専門家らの協力を得るべきだったと指摘しているというこの報告書は客観性の欠ける性質の文書であることは明らかで、市教委の自己正当化のための文書を、第三者による客観性が担保されたものを装ったものと言える。
■難解な道新の記事内容
問題の記事はメイン見出しが「第三者調査 必要だった」、サブ見出しに「札幌わいせつ教諭問題 報告書で指摘」となっている。
28年前から教え子(石田郁子氏)にわいせつな行為をしたとして、2021年に懲戒免職になった鈴木浩氏の案件に関し、2016年に石田氏が市教委に処分を求めたのに処分がされず、東京高裁の判決(石田氏の請求棄却)が出た後の2021年に処分がされたことを問題とするもの。
つまり「被害を訴えたにもかかわらず処分を見送った2016年の市教委の対応を、第三者の弁護士が検証し、報告書にまとめた」ものである。
報告書は「発生から20年以上経過し、男性教員が全面的に否認したため事実認定が困難だったとした。その上で、証拠や証言の信用性を評価する際、『早い段階から法律の専門家を含む第三者の協力を得て調査を行うべきだった』と総括した」とされている。
さらに、市教委が最終的に2016年の判断と異なった判断を下した要因について「裁判では医療記録が証拠として提示されたため、との見解も示した」と記事は伝えている(以上、同記事から)。
■市教委がしたかったこと
この記事を読んで、(一体、市教委は何をしたいのか、北海道新聞は何を伝えたいのか)と理解に苦しんだ読者が多いと思う。順を追って説明しよう。
2020年12月15日、東京高裁の判決で請求棄却とされた石田氏の訴えであるが、当人の陳述も一切ないまま、高裁はわいせつな行為が行われたと判断。石田氏は敗訴したにも関わらず上告せず、高裁の事実認定を確定させた。それを受けて市教委は翌2021年1月28日に鈴木氏を免職としたのである。2月10日には長谷川雅英教育長が石田氏に謝罪し、そのことがニュースで伝えられたのは記憶に新しい。
鈴木浩氏は言う。「石田氏はそこで、今、免職するなら、2016年に処分をしてほしいと願い出た時に免職にしなかったのか、と市教委に激しく迫りました。第三者に調査させ検証すべき、と言っていたと聞きます。それを受けての市教委(札幌市)の調査ということです。」
市教委は2016年には石田氏の言い分を採用せず、石田氏が損害賠償請求を求めて提訴(2019年2月)した際には、鈴木氏と札幌市が被告として、訴えを棄却するように求めていた。それが高裁判決(石田氏の請求棄却)後に一転して鈴木氏を免職したのであるから、その変節ぶりは鈴木氏にとっても信じ難いが、逆の立場である石田氏からも信じ難いものと言える。
教育長が石田氏に謝罪した以上、その理由を説明すべきであり、そのために第三者である弁護士に依頼して報告書を作成したというのが、北海道新聞の記事になったのである。
■報告書の性質
ここまで読むと、報告書を書いた第三者の弁護士が証拠や証言を整理し、免職にしたのは正しかったと判断し、その上で「2021年になされた処分は2016年になされるべきであった。ところが、鈴木浩氏が全面否認したことなどが理由で処分できなかった。早めに弁護士を入れていれば、処分できたはず。それをしなかった上、2016年には石田氏の医療記録が出されていなかったが、裁判では出されたから、2021年に市教委が処分を行ったのだ」と結論付けたように思えてしまう。
ところが、この報告書は真実追求とは全く無縁。特に上記の赤の太文字で書かれた部分は、報告書の前提にはなっていないことに、多くの読者は気付いていないと思われる。
実はこの報告書を担当した弁護士は、鈴木氏にもヒアリングの依頼をしている。その依頼文書には「平成28年当時の札幌市教育員会(ママ)における対応についての検証に係るヒアリング調査協力依頼」とされている。
聴取者は「札幌市教育委員会から調査業務を受託した弁護士」であり、調査趣旨には以下のように書かれている。
「…平成28年に被害者(筆者註・石田氏のこと)から申し出を受け…たものの、その時点では非違行為の認定に至らず、懲戒等処分を行うことはありませんでした。当時、札幌市教育委員会が本件非違行為の認定に至らなかったことについて、その原因等を分析し、今後の調査方法に反映させること等を目的として…」
つまり、この調査は「最終的な処分は正しかった。その処分がなぜ、2016年の時点でできなかったか」を調べるものであり「鈴木氏はわいせつ教員である」ことを前提とした調査なのである。
■もし調査に応じていたいら
弁護士が調査して報告するからには、その処分が正しかったかどうか、事実関係を明らかにして、公平公正な立場から判断するかのように思えてしまう。実際、北海道新聞の記者は、その点を誤解して報じている可能性はある。
しかし、当該弁護士の依頼人は市教委であり、依頼の内容は「私たちの正しい処分が、なぜ、5年前にできなかったかを調査し、報告書にまとめてほしい」というものである。免職処分が正しかったかどうかを調査することは依頼内容に含まれていない。
つまり、当サイトが明らかにしてきた写真の偽造、交際期間に関して虚偽の事実、わいせつな行為をしたとされる日に鈴木氏のアリバイがあることなどは調査の対象外である(連載(4)疑わしい元教え子の主張、(5)まるでAV元教え子の証言、(12)CAN YOU CELEBRATE?、(19)影なき闇の不在証明 ほか)。
当然、この調査依頼に対し、鈴木氏サイドはヒアリングを拒否した。その理由を「調査の前提が、わいせつなことをしたというものであり、私はそのような事実は全くなかったとして復職を求めていますから、間違った前提の調査に協力する意味がありません」と説明する。
仮に鈴木氏が応じていたら、以下のようなやりとりが行われたことが考えられる。
弁護士:あなたは、石田氏の訴えた事実について、全面的に否認しましたか
鈴木:しました。
弁護士:そのことで市教委はあなたの非違行為を認定できなかったと思いますか
鈴木:石田氏の話は全くの虚偽ですから、当然です。
弁護士:あなたは石田氏にわいせつな行為をしたとする録音データを取られています。もし、あなたがそれを「その通りだ」と言っていたら、処分されたのではないですか
鈴木:居酒屋での会話は石田氏が精神的に不安定な状態が分かり、話を合わせて気分良く帰らせるのがいい、と思って相手の嘘に合わせただけです。嘘の話を調査に対して肯定するはずがありません。
弁護士:当時、弁護士から聞き取りなど、調査をされましたか
鈴木:されていません。ただ、市教委が処分を決める際には「法曹関係者の見解も聞いて決めた」という話が、報道用資料に書かれていました。
弁護士:あなたは弁護士さんから話を聞かれたということですか
鈴木:いいえ、直接、調査はされていません。市教委が処分を決める時に弁護士の話を聞いたとメディアに発表したということです。
ここで、北海道新聞に掲載された記事内容を、もう一度見ていただきたい。
「発生から20年以上経過し、男性教員が全面的に否認したため事実認定が困難だったとした。その上で、証拠や証言の信用性を評価する際、『早い段階から法律の専門家を含む第三者の協力を得て調査を行うべきだった』と総括した」
鈴木氏は懸命に自らの潔白を訴えても、報告書では一切触れられずに、市教委は上記の結論を導ける。しかも、市教委が報告書を公表する際に「わいせつ行為をして免職された元教師にもヒアリングを行った上での報告書である」と、その正当性、客観性を強調する材料にできる。
結局、鈴木氏が調査に協力するということは、わいせつな行為をしたという前提の補強材料に使われるだけのこと。こうした騙し討ちのような形で調査への協力依頼を市教委がすること自体、著しく正義に反すると考えるのは当サイトだけではないと思われる。
もうひとつ問題なのは、上記の記事を見る限り、読者は免職処分に至るまで弁護士は一切関与していなかったかのような印象を持つことである。実際には当時の報道用資料でも明らかなように、市教委は処分を決める際には弁護士の見解を聞いている。
また、札幌市にも顧問弁護士がおり、市教委は2016年には、全ての証拠を検討した上で弁護士の見解を聞いて処分はしないと決定していた。当サイトでは市教委は顧問弁護士から「処分は無理筋だよ」という趣旨のことを言われていたという証言を得ている。もっとも、当該弁護士に取材を申し込んだところ、「お話しすることはない」とのことであった。この点は弁護士の守秘義務(弁護士法23条ほか)にかかるところなので、明らかにされることはない。
そうした諸々の事情を踏まえての報告書であることに注意しなければならない。
■市教委に正義と真実はあるのか
市教委は石田氏からの「なぜ、2016年に免職しなかった」という追及から逃れるために、このような報告書を作成したのは明らかである。それに鈴木氏に協力してほしいというのも信じ難い。
現在、鈴木氏と市教委は処分をめぐって札幌市人事委員会で争っており、最終的な結論が出るのはもう少し先になりそうである。
この事件を取材して思うのは、市教委が正義の組織とは縁遠いものであるという事実。そもそも地方公共団体における教育行政は「教育基本法の趣旨にのつとり、教育の機会均等、教育水準の維持向上及び地域の実情に応じた教育の振興が図られるよう、国との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第1条の2)とされている。
公正かつ適正に行われるべき教育行政を担う教育委員会が、全く身に覚えのないことを理由に免職された教員について、真実はどうであったかを追求することなく、自ら下した処分と、その経緯に間違いがなかったことを主張立証するために、弁護士の力を借りて鈴木氏を騙し討ちするかのような方法で協力を求めている姿を見ると、果たして教育委員会に正義や真実はあるのか疑問に思う。
もちろん、教育委員会は捜査権限を有しないため、調査には限界がある。今回の報告書で『早い段階から法律の専門家を含む第三者の協力を得て調査を行うべきだった』というのはある意味、正論。もし、そうしていれば、2016年の時点で石田氏の申し出に対して、その虚偽を簡単に見破れたはずである。当サイトでさえ分かったものを、弁護士が分からないはずがない。
今回、市教委は弁護士に依頼するのであれば、石田氏が2016年に提出した証拠を徹底的に調査させるべきであった。それを、自分たちが2016年に処分しなかったことは間違っていなかったことを報告させるために弁護士に依頼しているのである。
それは市教委が対鈴木氏、対石田氏という対立する相手から、我が身を守る立場で弁護士を依頼したということである。それをあたかも免職処分の正しさを第三者に検証してもらったかのように報じさせていることは、見過ごすことはできない。
(第34回へ続く)
(第32回に戻る)
(第1回に戻る)
はっきり言います。 市教委に正義などありません。そして、非常に悲しむべきことに、正義は、裁判所にもありません。
先頃の伊藤詩織事件民事二審で「伊藤氏がレイプドラックを盛られたと言ったことは名誉毀損」とされました。その後伊藤擁護派のツイートの中に、こんなものがありました。
https://twitter.com/nako2013/status/1492718045206560769?s=21 「高裁の判決を受け入れると、レイプドラッグの被害者が今後声を上げることができなくなる。
山口敬之氏がレイプドラッグを使ったかどうかはどうでもいい。高裁の判決は後の裁判に影響を与えることを理解してください」
全ては、この考え方ですよ。
つまりは、鈴木先生が石田氏にわいせつ行為をしたのか、山口氏が伊藤氏に不同意性交をしたのか、もはやそれすらどうでもいいのかもしれません。そういう判例や事例を作り、片っ端から「それらしき人」を罰していく。それが目的でしょう。
先日、乳腺外科医わいせつ事件の上告審判決があり、懲役2年の逆転有罪判決を言い渡した2審・東京高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻しましたよね。この事件の結果がはたしてどうなるのかはわかりませんが、高裁の有罪判決後、医師の12歳の息子さんが自殺されました。もし最高裁で医師の無実が確定しても、亡くなった息子さんは二度とかえってはきません。山口氏のお父さんも失意の中、亡くなっていますよね。裁判所も周りの機関も、人を簡単に犯罪者にしすぎです。勿論、性被害を肯定してるわけではありませんが、女性が告発さえすれば証拠以上にそれを重視するなんておかしいです。女性の味方と言いながら、犯罪者とされた男性にも、妻や娘がいたりするのに。
でも私は、鈴木先生の為に、何もしてあげられません。ただこれだけは言わせて下さい。絶対に死なないこと。鈴木先生だけではなく、ご家族もです。そしてそれは、山口氏も、石田氏や伊藤氏についても言えます。このような事件で、絶対誰も死なせてはならない。その為には真実を明らかにし、治療をすべきなら、速やかに病院に連れて行くこと。それが大切なことだと思います。
鈴木先生、絶対に諦めないで下さい‼️一生懸命応援していますから‼️
>>名無しの子様
コメントをありがとうございます。
>>市教委に正義などありません。そして、非常に悲しむべきことに、正義は、裁判所にもありません。
これは取材していて痛いほど感じます。市教委は真実なんてどうでもよく、自分が決めた処分が正しいので、都合のいい証拠・データだけ集めており、無実の罪で免職された教師のことなど何も思っていないというところでしょう。
山口氏の高裁判決も同様です。所詮は民事、真実追求より、足して2で割って…という感じがしました。
真実の声が届くことを期待し、これからも取材をして記事を書いていこうと思っています。
名無しの子 様
乳腺外科医師冤罪事件は、私も注目しています。
この患者の言い分は、術後せん妄としか思えません。患者のいた部屋の状況からも、科学的な検証からも、有り得ない話です。
この医師は、実名報道をされました。ご家族への影響も甚大だったと思われます。病に苦しむ人を救う医師が、何故、犯罪者にされなければならないのでしょうか。憤りで一杯です。
私はプライベートで医療教育に携わっていることもあり、この医師の窮地は他人事ではありません。私の目の前にいる医学生が、将来、同様の事件に巻き込まれるかもしれず、この事件は冤罪であり、一刻も早く医師の名誉回復がなされることを強く望みます。
訪問診療をしていた熱血医師も、身勝手な立てこもり犯から理不尽な形で命を奪われました。リワークに力を注いでいた大阪の心療内科が放火され、医師は炎の中で命を落としました。
一生懸命な方々が、どうして命を奪われなければならないのでしょうか。
石田事件にしろ、伊藤事件にしろ、相手方の職業人生を破壊したことを考えれば、この二人は重大な罪に問われて当然だと思います。仕事を奪われることは、命を奪われることと同等です。
免職教師の記事には、ほぼ毎回コメントをして来ました。それは、鈴木氏への応援でもあり、また冤罪事件を絶対に許してはならないという私の意思表示でもあります。けれども、今回は単独でコメントする元気が出ません。
正義は社会から消えたんだな…と思いました。
松田様、月の桂様
でも私は、諦めてはいませんよ!
今は時代の転換期なのだと思います。昭和の時代は、男尊女卑でした。女子高生コンクリート殺人事件のようなあんな悲惨な事件においても「女性に隙があったのでは」なんて酷いことを言うマスコミもあったりして、その時の私は今とは逆の意味で「この世界に正義はないのか」と思いました。
そして今、世の中は、極端に女尊男卑になっています。
フランス革命など世の中の価値観が大きく変わる時、人々の考え方が極端になり、その為、犠牲になる人も出てきます。それと同様に、男尊女卑から女尊男卑へと大きく変わる転換期である今、犠牲になっているのが、山口氏や鈴木先生なのでしょう。
しかし、完全なる犠牲には、絶対にしません‼️なぜなら私達のように「冤罪は許さない」という考えの人達が、たくさんいるからです。
フランス革命では、ほとんどの人々が王政を廃止しようとしました。でも今は、皆がほとんど同じ考えというわけではありません。時代の流れになんとか上手に乗り保身に走ろうとする人もいれば、時代の流れよりも一人一人の幸せの方が大切という私達みたいな考え方の人も、沢山います。
あちらが「声を上げよう」というのなら、私達も「声を上げ続けよう」ではありませんか。誰一人として、時代の犠牲者にはさせないためにも。
名無しの子さま
ずいぶん前のコメントに返信することをお許しください。
男尊女卑から女尊男卑へと大きく変わる転換期、そうでしょうか?
女尊男卑ではなく、性差別のない社会を目指しているのであって、誰も「女尊男卑」を求めていません。
彼らは、「ジェンダー平等」を振りかざし、合理性のない主張をしているだけです。そのために、獲物として利用しているだけです。
外側からの資金援助によって、弁護士の仕事を増やし、マスコミを乗っ取り、裁判所や公の機関も乗っ取ろうとしています。「おかしな事実」に気がつく人を増やすことが必要ですね。冤罪は絶対に許してはいけないです。
すいません、この場をお借りし、お知らせさせて下さい。
伊藤詩織事件第二審についての松田さんの記事に、今コメントを入れました。
二審ではカルテの内容が「伊藤氏の書き間違え」とされたこと。
そして、伊藤詩織事件と慰安婦問題のつながりについて。ぜひ読んでいただきたいと思います。
伊藤事件は、石田事件とともに、本当に闇が深いですね。
https://reiwa-kawaraban.com/justice/20220126/