献体の前でVサイン医師「楽しくやってます」
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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解剖実習に参加した医師が2日、頭部だけの遺体を前に記念撮影でVサインをする画像などをSNS上にアップした。炎上すると当該医師は画像を削除、ブログ上で謝罪した。また、実習に関する動画の中で、解剖実習を「楽しくやってます」と語っており、信じ難い倫理観の欠如ぶりが明らかになっている。
◾️投稿を削除して謝罪
問題の投稿を行ったのは東京美容外科に勤務する黒田あいみ氏。「アスリート医師が教える 最強のアンチエイジング食事術51 運動術26」(文藝春秋社)という著書もある。黒田氏は2日に自身のSNS上で米グアム準州で実施された解剖実習について「いざ解剖研修@グアム!→打ち上げ☆」と題して投稿。
黒田氏は「いざ Fresh cadaver(新鮮な御遺体)解剖しに行きます」と手を振って仲間と一緒に記念のショットを撮影、さらに「頭部がたくさん並んでるよ」と解剖する頭部が並んだ室内の様子を紹介。その際には頭部にはモザイクがかけられていたが、一部、漏れており、そのまま見えてしまった。そして、頭部が並ぶ机の前で、仲間と記念撮影し、その際に黒田氏がVサインをして、少し笑みを浮かべているように見える(以上、J-CASTニュース・献体写真に「頭部がたくさん並んでる」と添え… 美容外科医の「解剖実習」投稿が波紋 より)。
この投稿がSNS上で炎上すると黒田氏は23日までに削除し、同日にアメーバブログにお詫びを掲載した。モザイクのかけ忘れを詫び、さらに「医師でありながら人としての倫理観が欠如した投稿をしてしまったことについて心からお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした。」と全面的に謝罪した。そして、投稿した経緯について説明し、医師として解剖の知識とスキル向上に役立つこと、そのことが患者の満足度上昇につながるなどの理由を挙げた(美容・アンチエイジング専門医 Dr. 黒田あいみ Official Blog Health & Beauty Room・グアムでの解剖研修の投稿について)。
X上では東京美容外科の麻生泰統括院長がJ-CASTニュースで報じられる前に対応したが、謝罪は一言のみで、「投稿は既に削除されております。この事で臨床医師が解剖できる火が消えませんように願います。 」と解剖実習の主催者として今後のビジネスを心配するかのような文言があり、さらに炎上するという悪循環に陥った。
23日にはさらにお詫びのポストを投稿。「今後、二度とこのような事がないよう倫理面においても話し合い、教育を徹底して参ります。本来、医学生にもわかるような倫理が抜け落ち、見本を見せるべき先輩医師が行った行為につきましては監督者である私に責任がございます。」とした上で、同院としては解剖セミナーに参加しないこと、自身も主催から外れるとした(麻生泰2024年12月23日20時56分投稿)。
◾️「楽しくやってます」
そもそもこの解剖実習は、黒田氏の投稿に「CSACグァム解剖研修」とあり、インディアナ大学医学部が主催し、11月23日にグアム大学内で行われたものと思われる。前日の22日には特別講義が行われたようである(インディアナ大学医学部・2024年11月23日 第8回 CSAC解剖実習開講について)。
その際にインスタグラムのアカウント「csac_iu」では参加した医師5名のインタビューが公開され、その中に「東京美容外科 黒田愛美先生」も含まれている。この人物が「黒田あいみ氏」であることは外形からも間違いない。そのやり取りは以下のようになっている。
黒田:よろしくお願いします
ーーフレッシュ解剖実習に参加するきっかけや動機は何でしたか?
黒田:美容外科を始めて20年近く経っていろんな症例を扱うことが多くなってきて、変な話、いろんな他院さんのトラブルとかも聞いたりするので、自分自身、もう一回ちゃんと自分の目で解剖を見たい、どういう風に糸とかヒアルが入ってるのかというのを見たいと思って、参加させていただきました。
ーー今回の実習や講義で特に印象に残った出来事は何かありますか?
黒田:今まだ、半日なので何とも言えないんですけど、私のご遺体様が結構脂肪がいっぱいあって展開が難しいんですけど、うまく走行(血管神経等)を見れたので、もうちょっとこれから、半分以上あるので頑張らないとですけど、楽しくやってます。
(以上、csac_iu・アスリート美容外科医に聞いた フレッシュ献体解剖実習の実態)
残る4人の医師も全般的にテンションが高い。ホルマリン漬けにされていない、死後間もないと思われる頭部を解剖するのは貴重な学ぶ機会であり、研究者としてそうした機会に興奮しているという印象を持つ。ただし、「楽しくやってます」などと口にしているのは黒田氏のみ。そして、1人として献体してくれた故人や遺族に対する感謝の思いは口にしていない。
要するに、参加した医師全体が献体に対する尊厳の尊重という態度を見せておらず(内心にはあったのかもしれないが)、中でも黒田氏は一本、ネジが飛んでしまい「Vサイン」に繋がったように感じられる。筆者は仕事で日本産婦人科医会の医師と接することが少なくないが、どの医師も妊産婦と胎児の命を第一に考え、何かあれば夜中に起きてかけつけるなど、精一杯の努力を続けている。そうした人々と黒田氏が同じ医師であるということが信じられない。
◾️自らの罪を理解していない?
黒田氏の謝罪を見ていると、自らのしたことの重大さを感じていないのではないかと思わされる。自身のブログに「医師でありながら人としての倫理観が欠如した投稿をしてしまったことについて心からお詫び申し上げます。」とあるが、投稿をしたことよりも、撮影されたような行為こそが問題となっている。献体の前でVサインをするなどの行為そのものが人としての倫理観の欠如であるということが、分かっていないのではないか。
黒田氏に聞きたいのは、献体が自身の両親だったら、同じような行為ができたか、解剖を「楽しくやってます」などと言えたか、という点である。死亡後、首が切り取られ、解剖の道具とされることに喜びを感じる人や遺族などいない。それにもかかわらず医学、医術の発展のために献体しようと決めた、そうした人々の心に思いを致せば、解剖の間、一瞬でも笑顔など見せられないと思う。
黒田氏自身が言うように、人としての倫理観が欠如したのは自らの解剖前後の行為と、それを投稿した双方であることが分かっていなかったら、この後、解剖実習で同じような行為をして投稿だけ控えるのではないか。そう疑う人は少なくないと思われる。
今回の解剖はグアムで実施されており、日本法は基本的には適用されない。参考までに読んでいただきたいが、日本で遺体の解剖を行う場合には、死体解剖保存法という法律が適用される。そこには以下のような規定がある。
【死体解剖保存法20条】
死体の解剖を行い、又はその全部若しくは一部を保存する者は、死体の取扱に当つては、特に礼意を失わないように注意しなければならない。
このようなことは、医学部では初歩の初歩として学ぶはず。学部1年生で覚えなければならないことを実践できないベテランの医師に存在価値があるのか疑問に思う。