大坂なおみ選手 全仏会見拒否の違和感

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 テニスの大坂なおみ選手が27日、ツイッターで全仏オープンの記者会見に参加しない意向を示した。「心の健康状態が無視されていると感じていた」などと理由を説明している。しかし、コート内でBLM運動に賛同する行為をしていた選手の身勝手な言動には疑問が残る。

■グランドスラムルールブック2021

大坂なおみ選手はツイッターで会見拒否を明らかにした

 大坂選手は27日に「Hey everyone-」という長文が記述された写真にリンクする形で30日開幕の全仏オープンの記者会見に参加しないことを明らかにした。

”…I’m writing this to say I’m not going to do any press during Roland Garros. I’ve often felt that people have no regard for athletes mental health and this rings very true whenever I see a press conference or partake in one.”

「全仏オープン期間中、いかなる会見にも行かないことを言うために、これを書いています。私はしばしば、人々が選手の精神的な健康を考慮していないと感じます。そして、それは会見を見たり、参加したりしている時はいつでも真実であるように聞こえます。」

 テニスの今年の4大大会では「グランドスラムルールブック2021(pdf)」が適用される。その中の選手の行動規範の第3条項、違反行為のH.記者会見で、選手の会見への参加義務が規定されている。

”Unless injured and physically unable to appear, a player or team must attend the post-match media conference(s)…”

「負傷して身体的に参加できない場合を除き、選手またはチームは、試合後の記者会見に参加しなければならない。」

 これに違反した場合、選手に最大2万米ドル(約220万円)の制裁金が科されるとされている。

■ルールは行動規範、義務の免除の条件ではない

 条文を見る限り、会見への参加が免除されるのは身体的な故障の場合のみである。大坂選手が「心の健康状態」が損なわれることを不参加の理由にしているのは、この条文を意識して不参加に正当な理由があることを示したかったからかもしれない。それが主催者から認められず、制裁金覚悟の不参加となったことが想像される。

 その点は想像でしかないが、ルールブックの会見の参加義務が「must」という強い表現になっていることは見逃せない。選手は行動規範に従う、即ち義務を負うことを了承して参加することが前提になっている。それを大坂選手が「制裁金を支払えば義務を免れる」と考えているとしたら、解釈を誤っていると言うしかない。

 この規定は選手の行動規範であり、義務の免除の条件を定めたものではない。大会前から行動規範に従わないことを明言する選手は、大会への参加を認められるべきではない。

■大坂なおみ選手の二重基準に感じる不快感

大坂なおみ選手は全米オープンでBLMに理解を示した

 何より不快に感じるのが、大坂選手の二重基準とも言える行動基準である。2020年の全米オープンでは、毎試合、異なる人名が書かれたマスクを着用してコートに登場した。マスクに書かれたのは警察によって命を落とした者などの名前である。これは当時、盛んだったBLM運動に賛同する行為であることは明らか。

 観戦に訪れた者だけでなく、全世界に対してBLM運動に賛同する意思を示したのは、政治的行為そのものである。大会の権威を利用して自らの政治信条を主張する行為は、テニスプレーヤーの行動の範疇を超えている。彼女の対戦相手が南部の英雄「Robert E. Lee」と書かれたマスクを着用してきたらどう感じるのか、聞いてみたい。世界のテニスファンが期待するのは、そうした場外の争いではなく、コートの上で死力を尽くして戦う選手の姿である。

 このように大会を利用して政治主張をした選手が、大会で定められた選手の義務を果たさないことは自分に都合のいいように選手としてのあり方を変える二重基準であると感じ、非常に違和感を覚える。

 確かに一部のメディアが意味のない質問(例:抹茶アイスを食べましたか?)や、アイデンティティーに関する質問をすることを本人は苦痛に感じているという考察もなされている。しかし、それはメディアと大坂選手の間の問題であり、大会関係者を通じて「試合に関係のない質問は控えるように」という通達を出してもらうなど、現場で解決が可能。

 何よりも、テニスに関係のないBLM運動への賛意を示していた本人が「テニスに関係のない質問をしないで」と言うのであれば、随分と虫のいい話と感じる人は少なくないであろう。

■大坂選手を素直に応援できない理由

 かつては日本人がテニスの四大大会を制するなど想像もできなかった。錦織圭選手が2014年に全米オープンで決勝戦に進出した際の盛り上がりはかつてないものであった。

 錦織選手を超える活躍をしている大坂選手に対し、その時ほどの盛り上がりがないのは国民が「優勝慣れ」しているという要素もあるかもしれないが、それだけではないと思う。肌の色を理由にする人もいるかもしれず、そうだとしたら残念なことであるが、それ以上に、大坂選手の場外での言動に違和感を覚えて素直に応援できない人もいるのではないかと思う。

 日本人として数少ない世界のトッププレーヤーには、残念に感じることが少なくない。

One thought on “大坂なおみ選手 全仏会見拒否の違和感

  1. アバター 高山椎菜 より:

    こんにちは。
    選手の記者会見出席は義務だというのは、この記事を読むまで知りませんでした。

    あのへんの人というのは権利は声高に主張するのに、責任や義務はイヤだという人が多いようです。しかし権利と義務ならびに責任は一揃えですので、それがイヤだというなら大会出場の資格はありますまい。

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