暴力行為の中田翔選手を「愛すべき」と書く記者
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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日本ハムファイターズの中田翔選手(32)が試合前に同僚に暴行したとして11日、無期限の出場停止処分となった。報道では相当程度の暴行があったとされるだけに当然の措置と思われる。信じられないのは、日刊スポーツ電子版に担当記者による擁護に近い文章が掲載されたこと。記者やメディアのモラルはどうなっているのか。
■キャラ作りと暴行の間の壁
これまで報道で伝えられたところによると、中田選手は8月4日に函館で行われたDeNAとのエキシビションマッチのウォーミングアップ後、ベンチ裏で後輩の投手と話していたところ、突発的に手を出した。偶然居合わせた選手が止めたが、球団はその事実を確認し、4番一塁で出場していた中田選手を2回表に交代させた。
事態を重く見た球団は関係者から事情を聴取した上で統一選手契約書第17条(模範行為)違反により、野球協約第60条(1)に該当すると認定し処分した。(参照・デイリー新潮:日ハム「中田翔」暴行事件の被害者は「27歳中堅投手」 後輩イジりが原因か、日刊スポーツ電子版:出場停止の中田翔 4日の試合前、突発的に腹を立て同僚選手に手を出す)
こうした破天荒な部分は中田選手も自身のキャラクターとして意識していたのかもしれないが、キャラ作りと実際に暴行に及ぶことの間には高い壁がある。それを越えてしまった以上、こうした処分は当然と思われる。
■愛すべき『やんちゃくれ』という見出し
事件を伝える日刊スポーツ電子版に12日、日本ハム担当の中島宙恵記者の記事が掲載されていた。タイトルは「愛すべき『やんちゃくれ』中田翔も32歳 今後どう信頼回復に努めるのか」。本文の冒頭に<こんな人>とあり、中田選手の素顔について書いたものであることが分かる。
暴行に及んだ加害者がどういう人物なのかを伝えるのはメディアの仕事の1つなのかもしれないが、暴行罪(刑法208条)の疑いが濃く、被害者は脳震盪になったという報道もあるため傷害罪(同204条)の可能性もある重大な事案について、「愛すべき」という見出し(本文にも出てくる)に違和感を覚える人は少なくないのではないか。
内容は「繊細で優しい人だと感じている」「子どもと動物には、すこぶる甘い」「情にもろく、かわいげがあるから、先輩たちにもかわいがられた」など。それが事実なら、そのように伝えるのもいい。しかし、中田選手が根が善人であったとしても、犯した行為の違法性が阻却されるわけではない。
原稿のまとめとして「今後、中田翔がどのような形で信頼回復に努めるのか、球団はどのように被害選手と中田の双方をサポートしていくのか、見守りたい。」としているが、それ以前に、中田選手や球団の責任について語ることをしないのか。責任を追及をすることなく中田選手の信頼回復、球団の今後の被害者・加害者へのサポートのみを語ることは、著しくバランスを欠くことに気付かないとしたら記者などやめた方がいい。特にプロ野球という青少年に与える影響の大きな競技であるから、それを取材するメディアとしての責任という認識がないのは残念と言うしかない。
この種の事案について記者がすべきことは見守ることなどではなく、不正義をただすことである。被害者は大ごとにしたくないと言っていると聞くが、加害者を「愛すべき」などと書く記事が出ることで、どれだけ傷つくか想像できないのか。
ついでに言えば、球団にも責任はある。現場で反社会的な行為が行われないようにすることは球団としての務め。選手と契約を取り交わす際に、他の契約選手から暴力などを受けないように、安全・安心な職場環境を提供する責務はあるはず。その視点もすっぽりと抜け落ちているのは残念と言うしかない。
中島記者もデスクから指示されたのかもしれないが「中田選手を擁護する前に、本件が社会的に決して許されないということ、被害者感情も考慮して厳しく批判すべきだと思います」ぐらい言えないものか。
■高校時代に先輩を乾燥機に
中田選手については以前から、こうした暴力にまつわる話は出ていた。今でもネットに残っているが、2016年1月に「ダウンタウンなう」(フジテレビ系)に出演し、高校時代に、気に入らない先輩を頭から大型乾燥機に入れたことを告白している(デイリースポーツ電子版:日本ハム中田がヤンチャ伝説激白)。
これをダウンタウンをはじめ、ゲストの志村けん氏らが爆笑したとあるが、これを笑える神経が分からない。偉そうにして、後輩をいじめる先輩を気に入らないのであれば、それをやめるように言えばいい。報復としか思えない暴力行為が正当化されることなどない。
本人はかつての「義賊」と同じ気分で違法性が阻却されると思っていたのかもしれないが、鼠小僧も最後は死罪になっていることは覚えておいた方がいい。被害者の大阪桐蔭高校の先輩は今でも、この時のことが辛い思い出になっているかもしれない。
思えば東京五輪開幕直前に、ミュージシャンの小山田圭吾氏が過去のいじめを問題視され、開閉会式の音楽制作担当を辞任することになったのは記憶に新しい。日刊スポーツも小山田氏に対して批判的に報じていた。
それが中田選手に対しては、なぜ、腰が引けた対応しかできないのか。単純に野球記者が野球のことしか考えが及ばないという部分もあるだろう。あるいは中田選手が現場に戻ってきたときに「お前、好き勝手書いてくれたな、もう2度と話さない」などと言われるのが怖いという側面もあると思う。
■「やんちゃ」という軽い言葉
いじめという名の暴力を憎み、根絶することが多くの人の願い。それが噴出したのが小山田氏の事件である。
中田選手の事件もその延長線上にあると思われる。「やんちゃ」などという曖昧な言葉で語るべきではない。
暴力団組長の家のピンポンダッシュとかなら、武勇伝として成人後に語のもアリかもしれませんが、中田選手の先輩に対する暴行をテレビ番組で披露、それを笑う出演者も出演者ですし、善悪の判断、対応を検討するだけの知性がなかった局の製作スタッフにも呆れます。球団の処分、よくやったと思います。
当方、オリンピック直前まで小山田氏のことは知らなかったのですが、障害を持つ学友に凄惨な虐待を行い、受け取った自筆の賀状を笑いものにすべく雑誌に掲載。将来、自分が有名になった時に名誉棄損を働くため、何年も保管していたのでしょうか?。虐待の過去とそれを雑誌で披露し、清算もしないまま、オリンピック・パラリンピックに関与する決断をした50過ぎのオジサン。ネットで過去情報の発掘そして拡散等、火を見るより明らか。辞退という選択肢はなかったのですかね。
元相方の小沢健二氏も、1994年に雑誌のインタビューで、こんなことを語っています。「万引を繰り返し、K書店には非常にお世話になった」「いまでも売上げカードが、実家の机の片っぽの引き出しのギッシリ入ってる(笑)」。
※ 2021.7.20 アサ芸プラス ”小山田圭吾が東京五輪開会式の音楽担当を辞任 小沢健二の「万引き告白」に再脚光”
万引きは、書店経営の難しさの要因の第一位ともいわれていますが、小澤氏は売り上げカードの束を保存。トロフィーのつもりですかね。
出場停止期間、わずか10日間で終了。
大袈裟な処分をにおわせておきながら!
問題は巨人でしたね。
》》ジャーナリスト松田様
「やんちゃ」は好意的に使われる言葉でしょうね。書き手の意思によるものなので、それを読者がどう判断するのかだと思います。
五輪の代表選手が「子どもたちが自分にもオリンピックで金メダルを取ることができると希望を持ってもらいたいです」と言うコメントを何度か耳にしました。諦めなければアマチュアだけではなく、プロの選手にもなれるという希望に満ちた美しい意見です。
プロの野球選手として年棒3億円以上も貰っている中田選手の姿を見て少年野球に汗を流している子どもたちが何を感じるのか、私は心配でなりません。
スポーツ選手や芸能人は、いわば人生の成功者です。
もちろん、成功するということは、並外れた努力の賜物でしょう。それは、当然、賞賛に値すると思います。
しかし、他者に対する思いやりがあるかどうかは、また別問題です。
小山田事件の時、ネットにアップされていたのが、坂上忍氏の同級生いじめです。同級生をロッカーに入れて、階段から突き落としたと。MCのダウンダウンも、顔をしかめてはいましたが、笑っていました。
坂上氏と言えば、バイキングというワイドショー番組。あの番組は、ターゲットにする人物や事柄を決め、出演者全員で徹底的に攻撃する、いわば公開いじめ番組。そのMCである坂上氏がかつて、そのようなことをしたというのは、納得できますね。
また、メンタリストのDAIGO氏が「ホームレスや生活保護受給者なんて、社会に必要がない。命には優劣がある」とツイートして、炎上しています。松田さんはかつて、ホームレスの方の記事を書かれましたね。少年達になぶり殺しにされた方や、殴られて殺された女性のホームレスの方のことを。肩書きや名声にこだわらない、松田さんの優しいお人柄に感銘を受けました。
どんなに有名になっても、社会の勝ち組と呼ばれるようになっても、人を思いやり尊重する気持ちは、決して忘れたくはないですね。