東スポ100人リストラ 去りゆく社員に贈る言葉
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵
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夕刊スポーツ紙の東京スポーツが全社員約350人のうち100人をリストラすることが20日、文春オンラインで報じられた。かつては夕刊の雄として知られたが、最近は経営状況が芳しくなく、社員は会社から「2、3年で潰れる」と言われたという。スポーツ新聞をやめた”先輩”として、会社を去る100人にメッセージを送る。
■6月末に100人退職予定の東京スポーツ
文春オンラインが公開したのは「東スポが社員100人リストラ “入社2年目で年収1200万円”高給で知られた会社が危機の理由」というタイトル。それによると3月末に45~59歳の社員160人を対象に希望退職者を募集する社内メールが届き、4月7日に説明会を実施。募集締め切りは5月14日、退職期日は6月末と設定されている。
社員の話として19年5月の決算で、純利益が約20億円の赤字、総資産は約65億円で会社側から「あと2~3年で潰れる」と告げられたことを紹介。同じ社員が90年代中頃は入社2年で年収1200万円あったものが、今はその半分程度になっていることをコメントしている。
160人のうち100人をリストラするとのことだが、退職希望者が100人に満たない場合はどうなるのか気になるところ。おそらく、100人は申し込んでくるという計算をしているのであろう。仮に100人辞めることになった場合、残るのは管理職が中心と思われるが、管理職も希望退職の対象になっているとしたら相当数が退職する可能性はある。その場合、紙面制作に支障が生じ、会社にとって致命傷になりかねない。いずれにせよ、歴史ある東スポも近い将来、消滅する可能性は否定できない。
■20世紀末は1に東スポ、2にスポニチ
記事で驚かされるのは、90年代中頃、入社2年で年収1200万円という記述。これがどこまで本当か分からないが、東スポの給与水準が高いことは僕も日刊スポーツにいた時代に感じていた。競馬担当時代は他紙の記者と接触することが多く情報も入った。聞いた範囲で、スポーツ紙で給料が良かったのが1に東スポ、2にスポニチ。
東京は朝刊スポーツ紙が6紙でシェアの奪い合いの状況であったが、夕刊スポーツ紙は東スポだけという状況も味方をしたと思う。また、90年代はインターネットも今ほど発達しておらず、新聞発行日の未明から朝にかけて行われる大リーグの日本人選手の試合、中田英寿選手ら欧州のサッカーリーグの試合の結果が朝刊スポーツ紙より早く、あるいは詳細に報じられるということで、仕事帰りのサラリーマンに人気になっていたという側面もある。
また、突如廃刊となった系列の競馬専門紙「レースポ」のスタッフをそのまま取り込み本紙の競馬面を充実させ、かなりの人気を博していたという要素もあった。
時代の要請にうまくマッチしていたとともに、経営方針も将来を見据えてデジタル化を促進する、あるいは自社ビルを構えるなどという当たり前のことに投資をせず、社員に還元する方向だったのも高給となった一因であると思う。
■90年代の競馬メディアは多士済々
しかし、そのような時代も長くは続かない。今回の記事で倒産前夜とも思える経営状況が明らかにされ、若手の年収も全盛期の半分程度に落ち込んでいることが記者の話として伝えられた。バブルの時代の東スポ社員を間近で見てきた者としては、信じられない思いである。
現社長の酒井修氏とは競馬担当時代に現場で数年一緒になったが、東スポらしからぬ品の良さが印象的だった。プロ野球から競馬に転属になったことで、馬を見る目という部分では根っからの競馬記者には勝てないと計算したのか、有力騎手に食い込んで取材源にしようと努力しているように見えた。
当時、サンスポに同じようにプロ野球から競馬に来た記者が、酒井氏と同じような手法で存在感を増していた。後に作家に転じる本城雅人(本名:楠山正人)氏である。そう考えると90年代の競馬メディアは多士済々と言えたのかもしれない。
本城氏と同様、酒井氏も記者としての勘どころの良さはあるように見えたが、社長にまで出世するとは思わなかった。しかし、今は同僚や後輩をリストラしなければならない立場。胃が痛くなるような日々を過ごしているのではないかと、他人事ながら心配している。
■久しぶりに読んだ東スポから感じたメッセージ
大リストラを敢行する東スポを何十年かぶりにコンビニエンスストアで買ってみた。全20ページで、90年代に比べ、かなり薄くなっているのを感じた。
1面は「嵐 大野(電撃)結婚(か)」。大スクープかと思いきや、記事を見ると20日発売「女性自身」が報じたという、又聞きの記事。夕刊スポーツ紙の1面に嵐の大野智氏をもってきても読者の反応は鈍いと思うのだが…。
2面には「五輪 アテネ永久開催へ」と、世界的大スクープとも思える記事を掲載。しかし、内容は五輪研究を専門とする教授が取材にそう答えたというものにすぎない。一教授の願望をニュースの体で報じる意味があるのか疑問であるし、ネタ的に東スポ的飛ばし記事ならではの面白みに欠ける、何とも中途半端な記事である。
中央面は見開きでボートレースのカラー記事になっているが、これは記事広告であろう。ボートレースの主催者から記事の体裁で出される広告で、100〜200万円程度ではないか。そのページをめくると、地方競馬の出走表が載っており、ここも記事広告。こちらは30万円程度か。
20ページのうち3ページが記事広告、1ページ全面広告のため記事部分は16ページ。肝心の記事も1面が女性誌の引用、一教授の話をもとにつくったおよそ現実味のない五輪アテネ永久開催が2面と、これで150円出して買う人がいるとは思えない。ネットにはもっと良質な情報が溢れている。それと比べると東スポが大きなスペースを割いて報じたニュースは、お金を払ってでもほしいと思えるものではない。
久しぶりに読んだ東スポは、(もう終わりが近いです)とメッセージを発しているかのような貧弱さであった。
■第二の人生を始める東スポ社員100人へ
新聞業界はどこも苦しい。特にスポーツ新聞が提供する情報は我々の生活になくても、特に困らないものばかり。真っ先に淘汰されるのは間違いない。
僕自身、自分の人生をより価値あるものにしたいと考えて日刊スポーツを辞めたが、もし、日刊スポーツの経営状況が良く、将来性もあると感じさせるものであったら早期退職したかどうか。お金と割り切って仕事を続けていたかもしれない。
7月からは100人の東スポ社員が、第二の人生を始める。同じスポーツ新聞を定年前に去った者としてアドバイスするなら、職を失ったことの焦りよりも「これからは自分の人生を自由に描ける」という前向きな姿勢を持つことが大事だと思う。会社に縛られない人生の心地良さは確実に存在する。そこで自分の人生を自分で切り開く状況を楽しんでほしい。自らに可塑性が生じた事実を幸運と感じることができれば、見えてくる光景も変わってくるはず。
そんな前向きに生きようとする東スポ社員の人生に、幸多かれと願うのみである。
おはようございます。あの東スポまでついに・・・。という思いしかありません。ここで踏ん張ってほしいところですけれど、もうつぶれると言われたらどうしようもないのかも。
>>高山椎菜様
コメントをありがとうございます。返信が遅れて申し訳ございません。
東スポも時間の問題という気がしました。記事を見て、ほとんど手がかかっていない状況、これにお金を払う人はいないだろうなと思いました。
何より社員3分の1をリストラですから、延命措置に入っている状況のように感じます。
これも時代の流れでしょうか。寂しい限りです。
赤見出しの東スポと呼ばれていた頃が懐かしいですね。
今回のニュースは正直、私にはショックです。
理由は私はプロレスファンだからです。
日本のプロレスビジネスに東スポは積極的に関わってきた歴史があります。
力道山時代にグレート・アントニオというレスラーを「密林から連れきた」というフレーズで売り出し日本プロレスの興業、日本テレビの中継に貢献したことが有名です。
アメリカのWWEのテレビ番組が試合のストーリーを中心にしているのに対し日本のプロレスはそれをしていません。これも東スポがやってくれているからです。
東スポ、その他のプロレスマスコミで試合のストーリーを確認して試合を見る。これが日本のプロレス文化です。
これ以外にもプロレス界への貢献度ははかりしれないものがあります。
現在、私はサイトでプロレス関連のブログも書いていますが東スポの影響力には遠く及びません。もっと言えば長い歴史をかけて積み上げた信頼と信用は非常に大きものがあると感じます。少なくとも東スポのプロレス報道は高い信頼と信用があります。
リストラは仕方ないにしろ、なんとか会社存続をして欲しいです。
https://gavandynamic.com/2021/04/05/iwgp世界ヘビーという茶番劇/
>>一条寺烈様
コメントをありがとうございます。返信が遅れて申し訳ございません。
プロレスは全く知識がないので分からなくて申し訳ないのですが、ストーリー性が大事なのは分かっているつもりです。その役割を東スポが果たしていたわけですね。
まさに、東スポの存在価値。酒井社長も生き残りに必死でしょうから、一時期現場で一緒だった者として応援したいと思います。ただ、時代の流れ、簡単ではなさそうです。
》》ジャーナリスト松田様
新聞社の経営不振については、これまでも松田さんが記事で紹介されてきたところです。毎日新聞社が既に、資本金1億円の中小企業になったことにもビックリしました。朝日新聞社も今後は社員から自社の新聞購読料を徴収するみたいですしね。
ネットの普及やデジタル化などで時代の流れとは言え、夕刊紙の雄【東京スポ】については駅の売店から無くなることだけはあって欲しくありません。以前にもコメントしましたけど、2〜30代のサラリーマン時代に仕事で失敗したり、人間関係で落ち込んだ時に何度東スポの衝撃的な見出しで勇気付けられたことか。「ネッシー発見」や「UFOの地球征服計画」、「透明人間」「ツチノコ」「雪男」「地底人」などなど。東スポの歴史的な大スクープ⁈は枚挙に暇がありません。もちろんプロレスや競馬面の充実した内容は他社に秀でた存在です。
小生も最近はあまり購読しなくなりました。なので偉そうなことは言えませんが、同社の経営陣の方々には、どうか東スポと従業員を守って頂きたいです。そしていつかきっと、【ネッシー発見!!】のリアルガチな大スクープ記事で一面を飾ってくれると信じています。
がんばれ東スポ!
コメントをありがとうございます。そして、返信が遅れました事、大変申し訳ございません。
東スポの冗談のような1面はそれはそれで需要はあったのかもしれませんが、やはりネットのせいで、そのために150円を出そうという人はいなくなったということでしょうか。ネットの方が笑える記事も多いように感じます。競馬についてはスポーツ紙でナンバー1でしょう。ただ、競馬もネット情報が充実してきましたから、わざわざ前日の夕方に東スポを買うまではないかなという人は少なくないのかもしれません。
そうやって考えると、これも時代なのかなという気がします。寂しい限りですが。
スポーツに興味のない私でも東スポは名前だけでなく色々と知っていました
中島らも氏のエッセイにも大スポ(東スポ大阪版)がよくネタ として登場していたし、東スポ一面見出し記事をまとめた本も出版されたくらいだったのに、まさかは廃刊の危機とは
プロレスファンの弟がよく買ってスクラップしてましたが、そういえば最近は買ってなかったようですし、いつの間にか往年のファンが離れていってたんでしょうか
>>通りすがり様
コメントをありがとうございます。返信が遅れて申し訳ございません。
プロレス自体、地上波から消えたようですし、需要が減っているのでしょう。当然、東スポの需要も減ったということなのかもしれません。
シャレで針小棒大の記事を出し、お金を出して読者が買うという時代ではないのでしょう。その類の笑ってしまう記事はSNS等でも楽しめますから。読者はSNSにはない、真実をメディアに求めるようになっているという事情が東スポ苦戦の背景にあるのかもしれません。僕の勝手な想像ですが。
松田様
こちらの記事から失礼致します。
紙の媒体が減少しつつ中での今回の夕刊紙の雄である「東スポ」がここまで追い詰められた状況とはと思う半面、数年来の記者能力低下と部門外の政治問題を力をいれすぎた結果では無いかと思います。
また、東スポだけでなくスポーツ紙全体も収入源である「競馬」の裾が広がりすぎてソッポ向いた感もあるのでは無いでしょうか?
学生時代はニッカン野崎さんの記事が好きで買ってましたし、読売一辺倒の新聞よりニッカンを購読してましたが、30代過ぎて吐き気する文を読んで辞めたのを記憶してます。
新聞を買わない理由って「ふとしたキッカケ」でアンチになるんでしょうか?
>>アツシ様
コメントをありがとうございます。そして返信が遅れまして申し訳ございません。
日刊スポーツの野崎さんの吐き気をする文はどんなものか想像はつきませんが、野球部の記者で気分が悪くなったことは僕もありました。東日本大震災の時に野球部出身の東北支社長が、「国難だから自民党は、民主党の政策に反対するな」みたいなことを書いていて、(正気か?)と思いました。
僕を含めてスポーツ新聞の記者のレベルはその程度ですから、読者に飽きられる、1つの記事をきっかけに読者離れを起こすということはありうる話だと思います。
東スポは先日読む限り、相当劣化したと感じます。Twitterの記事を読んでいる方が遥かに情報を得られますから、もう歴史的使命を終えたのではないでしょうか。
松田様
野崎さんの記事ではなく、サッカーの記者がある日本代表選手の結婚をその記者に知らせず紙面に愚痴書いたのを読んでしまい、「何様だ?」って思って止めました。
筋道を誤解を与えて申し訳ございません。
少し時が経ってしまいましたが。東スポ、100人も人員削減ですか。45~59歳の社員160人とのこと。記者の方も相当数含まれているのでしょうね。
東スポの印象的な記事は、マドンナのブロンドアンビションツアーの写真を掲載した「マドンナ痔だった」ですね。近年、昔の変な勢いがなくなりさびしく思っていました。