スシローで炎上の長谷川豊氏 致命的な資質の欠如

The following two tabs change content below.
松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 元アナウンサーの長谷川豊氏(47)が自身のツイッターで、回転寿司店で商品に唾をつけるなどした高校生の問題の投稿をつぶやき、”炎上”している。悪質な行為に対して「ゲンコツ3発と皿磨き1週間くらいで許してあげなよー」と寛容な姿勢を見せて、多くの人の反発を買っている。信じ難いツイートの数々は、同氏の情報発信者としての決定的な資質の欠如を示すものと言えそうである。

■理解に苦しむ高校生の行動

大迷惑のスシロー(写真はイメージ)

 岐阜県内のスシローで、高校生がレールの上を流れる寿司に唾をつける、備え付けの湯呑みの縁や、醤油の差し口を舐めて、そのまま置くなどの迷惑行為を動画サイトで公開した事件は、批判の声が上がっている。

 回転寿司のレーンに流れる寿司は衛生的であるという前提で多くの人が訪れている。そこに他の客が寿司ネタに唾をつけているかもしれない、という不安が全国的に生じるとどうなるか。レーンの下流の席に案内された客ほど強い不安を持つのは間違いない。備え付けの湯呑みや醤油も安心できないと思うと、自然と客足は遠のくというもの。回転寿司の店舗と客にとって、許し難い行為であり、それを動画に撮り、アップするというのであるから、全く理解に苦しむ。

 スシローを傘下に持つ株式会社 FOOD & LIFE COMPANIESでは、1月30日の開店前に当該店舗のすべての湯呑みの洗浄、しょうゆボトルの入れ替えを行い、同31日には警察に被害届を提出した。さらに当事者と保護者から連絡を受けて謝罪を受けたが、引き続き刑事、民事の両面から厳正に対処するとしている(FOOD & LIFE COMPANIES・SNSで拡散されたスシロー店舗での迷惑行為に関するお知らせ)。

 高校生の行為は器物損壊罪(刑法261条)、威力業務妨害罪(同234条)に問われかねない行為であるからと思われる。もちろん、高校生の行為は民法709条の不法行為であり、店舗や会社に生じた損害を賠償する義務を負うことになるのは間違いない。 FOOD & LIFE COMPANIESが刑事、民事の両面から厳正に対処というのは、まさにそのことを示している。

■めんどくさい世の中

 多くの人がこの問題について怒り、実行した高校生を許し難いと感じている中、元フジテレビのアナウンサーの長谷川豊氏は事件を報じるニュースを引用しながら、以下のようにツイートした。便宜的にナンバリングしていく。

<ツイート1>

 もー ゲンコツ3発と皿磨き1週間くらいで許してあげなよー

 めんどくさい世の中だなー 相手、子供だろ

 (2023年2月1日午後7時7分投稿

 このツイートに対して3日深夜の時点で1400を超えるコメントがつき、その多くが長谷川氏を批判する内容。さらに以下のようなツイートも行った。

<ツイート2>

 被害なんて一つも受けていない匿名の変な人たちがピーピー言ってますけど、こんなもんは悪ふざけのガキがいたずらしただけの話  第3者はほっとけばいいです

(2023年2月2日午前10時58分投稿

<ツイート3>

 巨悪に対してはダンマリ 勉強が必要な事は見ぬふり

 被害一つ受けてない人の不倫とかクソガキのイタズラには再起不能になるまでクソ叩き。

 でも反撃怖いから匿名で。キモい。

 怒る元気があるならもっとデカいもの相手に戦ってみろと言いたくなる。

(2023年2月2日午後2時39分投稿) 

 以上のツイートから、長谷川氏の言いたいことは以下のようにまとめられる。

(1)スシローの事件は、子供の悪ふざけ

(2)ゲンコツ3発と皿磨き(皿洗いのことか)1週間程度で赦すべき

(3)事件と関係のない者が騒ぎすぎで、関係ない者は放っておけばいい

(4)子供のいたずらを叩く元気があるなら、巨悪に対して戦ってみろと言いたい

 長谷川氏はこのように考えているから、ツイート1~3をしたのであろう。

■昭和のスシロー事件を考える

 長谷川氏はツイート1~3の後で、以下のようなツイートをしている。

 昭和の時代とかはそうだったですよね。寛容な部分、多様性を認める幅のある世の中だったと思います。テレビの表現しかり。

 それを一部の「怒ってる自分大好き人間」がギャーギャー言い始めて変な風になっていって結局なんだかギスギスした感じになってるのがとても嫌です。

(2023年2月3日午前11時27分投稿) 

 同じく昭和の時代を生きてきた者としては、言わんとするところは分からないでもない。昭和の時代にも似たような事案はあったかもしれない。そして、そのような場合は、長谷川氏の言うようにゲンコツ3発と皿磨き1週間が落とし所になる可能性はあると思う。しかし、昭和と令和で決定的に状況は異なる。そこへの視点がスッポリと欠如しているから、長谷川氏の発言は炎上するものと思われる。

 まず、昭和の典型事例を考えてみよう。

<昭和のスシロー事件>

 家族で近所の寿司屋に行ったケンちゃんは、両親がトイレに行った時などを見計らってカウンターで隣の席に座っていた知らないおじさんの寿司ネタに唾をつけた。さらに湯呑みや醤油差しを舐めた。それを知らずにおじさんは美味しそうに寿司を食べた。たまたま、ケンちゃんを知っている近所のおばさんがそれを目撃。後日、ケンちゃんのお母さんにそれを伝える。両親はケンちゃんを問い詰め白状させる。怒った両親は(寿司屋に謝りに行こう)と、ケンちゃんを連れて寿司屋へと出向く。寿司屋の大将に事情を説明し、ケンちゃんに謝らせ、その場でゲンコツで三発殴った。ケンちゃんはあまりの痛さに泣き出してしまうほどだった。見かねた大将が(まあまあ、それぐらいで)と父親を宥め、「じゃあ、こうしよう。明日から1週間、学校が終わったらウチに来て皿洗いを手伝ってもらう。それで寿司屋がいかに寿司を大事にしているか、お客さんを大事にしているかをその目で確かめてもらう。それが分かれば、もうバカなことはしないだろう」と提案。翌日からケンちゃんは1週間働き、自分の行為がいかに愚かで、許されないことだったかを学んだ。

 長谷川氏はこんな昭和のスシロー事件を思い描き、当事者ではない人間があれこれ言うべきではないと考えたのかもしれない。しかし、この話は今回の事件に関しては全く通用しない解決法であることに気付いていないものと思われる。

■スシローが追及をやめない理由

 昭和の時代には回転寿司などなかったし、当然、全国チェーンの寿司屋も、小僧寿しなどの販売専門店以外はなかった。そして、動画の撮影機を高校生が持ち歩くことなど考えられず、まして、撮影した動画を簡単に世界中に公開する手段などもなかった。

 ケンちゃんも、今回の高校生も「悪ふざけで寿司に唾をつけた」という点では大差ない。しかし、動画に撮って、少なくとも日本中に拡散されたことで、両者の行為が社会に与える影響は決定的に異なってくる。今回の事案が昭和のスシロー事件と違うのは以下の点である。

①不特定多数の人が不快な行為が行われたことを知る。

②それらの人の多くはスシローを利用している。

③多くの人がSNSを通じて、高校生の行為に非難の声をあげられる。

④動画を見たことで模倣犯が出るおそれがある。

⑤回転寿司の危険性を認識した人々はスシローに行くことを控える。

⑥スシローに経営上の負荷が強くかかる。

投稿された動画から

 結局、SNSという情報発信手段を一個人が手にしたことで、同じ子供の悪ふざけが、昭和なら当事者だけの問題であったものが、令和の時代には大袈裟でなく日本全体の問題として認識されるのである。ここで、もし、スシローが高校生の謝罪を受け入れ、刑事・民事ともに責任を追及することをやめたらどうなるか。

 これだけ世間から非難されることをしながら謝罪して済むのなら、まさに模倣犯が出る土壌が出来上がることになる。そもそもその高校生が同じことをやるかもしれない。そう考えるとスシローを利用する多くの人が人質に取られるようなもので、普通なら足が遠ざかる。スシローを楽しみにしている人にすれば娯楽を失うようなものであるし、スシローの経営そのものが危うくなる。

 そうなると、スシローとしては徹底的に責任を追及していくしかない。それは企業として存続していくために必要な行為である。また、そうした行為をしようかと考える犯罪者予備軍に「犯罪は割に合わないな」と思わせて発生を抑止するためにも必要である。当然、高校生への意趣返しなどではなく、多くの客に安心して食事をしてもらえる環境を整備するために責任追及するもので、企業の公共性に基づく社会的責務と言っていい。

■権力者だけが相手なのか

長谷川豊氏(同氏Twitterから)

 長谷川氏はこのことをどれだけ分かっていたのか疑問が残る。昭和の時代に同じことが起きて、多くの国民がそれを知れば、戦前生まれが多かった時代だけに凄まじいバッシングが起きたことも予想される。ただ、多くの国民が、そのようなことを知る術も、知った上で怒りを伝える術も持っていなかったから、そうならなかっただけのこと。要は当事者だけで完結できた昭和と、現代とは時代背景が全く異なるのである。それが長谷川氏の言う「ギスギスした感じ」の正体ではないか。

 スシローが責任追及をやめないのは、一言で言えばゲンコツ三発で解決できないからと言い得る。そのような分析もなしに、令和の時代は昭和の時代の寛大さがないと結論づけるのは著しく合理性に欠けることにいい加減気付いたらどうかと思う。それに気付かない、あるいは気付かないフリをするようであれば、致命的な資質の欠如と言われても仕方がない。

 最後にツイート3でつぶやかれた「怒る元気があるならもっとデカいもの相手に戦ってみろと言いたくなる。」という部分に触れておこう。

 正義や不正義の主張は、相手を選んでするものではない。たとえ行為の主体が権力者であっても、少年法で守られる少年であっても、不正義が行われたら等しく主張すべきである。逆に言えば、権力者ばかり選んで戦う人たちも相手を見て戦っているわけで、正義を為す者としては相応しくないと言えることにも気付いていただきたい。

    "スシローで炎上の長谷川豊氏 致命的な資質の欠如"に14件のコメントがあります

    1. 匿名 より:

      昭和の時代に回転寿司などなかったと書かれていますが
      地元の近鉄布施駅前には昭和33年から有りました

      1. 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵 より:

        昭和の時代に今のように全国展開して多くの庶民に親しまれているチェーン店はなかった、という意味が読み取れませんか?

        近鉄布施駅前にあったから、書いてあることの前提が全て崩れるとでも? もう少し考えてからコメントすることをお勧めします。

      2. 匿名 より:

        ほんと、つまんない言葉尻捉えて揚げ足取りする人ってしょーもないな。

    2. 通りすがり より:

      この男の言うところの「巨悪」とは恐らく「政権与党の政治家」=「悪しき権力者」という図式で言っているものと思われるが、どれだけメディアがエビデンスの欠片もない捏造や妄想に基づいて口汚く罵っても絶対に反撃してこない相手を選んで一方的に攻撃していることを以て「戦っている」などと思っているのなら、それは思い上がりも甚だしいというもの。

      なにも長谷川に限ったことではありませんけどw
      それにしてもこの男は自分に酔いすぎ。糖尿病患者に対する暴言も許しがたい。

    3. 剱崎 より:

      この輩は以前から炎上商法じみた言動が多くて嫌いでした。そこへこの発言ですからもう救いようのない、当にに付ける薬はない状態だと思います。ま、言った所でもういい年した年齢なのでじぶから落ちる所まで落ちて行くでしょうね

    4. 西川 より:

      長谷川氏曰く、「仲良し弁護士さんから連絡
      木村花さんの一件以来、一般のユーザーであっても誹謗中傷コメントは比較的簡単に特定できて賠償請求も出来るとの事
      面白そうなので来週にも事務所に行って相談してみます」

      ところが、長谷川氏は「スシローは実力があるので一年単位で見れば宣伝効果の方が強く出るはずです。」
      「大丈夫です。」などと言っていた。

      他人の損害は大丈夫とか言いながら、自分は、訴訟をちらつかせて、脅している。

    5. 匿名 より:

      そもそも拳骨は親が子の不道徳を叱るためにするものであって、他人が罰で与えるものではないですね。また相手への謝罪はもちろん行った上で、責任のとり方は相手様次第が当たり前で加害側から言い出すものではない。そこからして長谷川氏を始め擁護派は勘違いしているように思います。

    6. BADチューニング より:

      >ゲンコツ3発と皿磨き1週間くらい

      それは「溶けてしまった」100億円以上に見合うのだろうか?

      ※株価下落は“仕手筋”の問題で置いておくとしても、消毒&入れ替え(人件費も)に掛かった総費用は数百万円は降るまい。

      ところで、
      “ 例 ”がどう見ても『ケンちゃんシリーズ』w
      そのものズバリ『すし屋のケンちゃん』もあったww(ケンちゃんのお父さん=すし屋の大将=牟田悌三さん)

    7. 匿名 より:

      巨悪ってコラボだよね。

    8. 匿名 より:

      今はゲンコツ三発だと迷惑行為が打ち消された上に暴力で解決はどんな理由があってもいけない。
      ってスシローが完全に悪者になるよね。
      それこそ部外者のいらない助言ですね。

    9. 小田朱実 より:

      昭和のころは、今ほどチェーン店がなく、ケンちゃんのやらかした店のように、親父さんが一人で経営する個人店が多かったことも、問題が大きくなりにくかった理由だったのでしょうね。チェーン店なら、一店舗の問題が日本中の客足を遠ざけることになるわけですから。

      ただ、長谷川氏の言う昭和の寛容さというのは、本当に寛容だったのかというとそれは疑問です。
      というのは、私が中学生のころ、同級生から性犯罪の被害にあった事があるのですが、処罰の対象となる犯罪行為のはずなのに、単なる子どものイタズラとして処理されてしまった苦い経験があるからなのです。
      加害者はただ怒られただけで、翌日から普通に登校していました。

      このように、長谷川氏の言う寛容さとは結局、ナアナアで済ませるだけの甘さであって、ことの重大さに気づかないまま大人になるという点では加害者のためにもなっていないのではないでしょうか。

    10. 匿名 より:

      拳骨3発と皿洗い1週間について、ツイッターで
      影響のある店舗は全国にあるスシローの各店なので全部の店舗を回って毎回拳骨3発と皿洗い1週間をやるならいいんじゃないか
      というつぶやきがあったが、その通りだと思った

      1年で50店しか回れないので何十年も無休で皿洗いするレベル。

      でも長谷川氏は毎度のことだけどそこまで考えて発言してないだろうね。残念。

    11. 匿名 より:

      他人を不愉快にして注目を集める手口しか使えない哀れな御方ですからね。
      そもそも主張していること自体がリーガルマインドの薄っぺらさが目立つ取るに足らないもの。
      もはや腹立ちすら覚えないですね。

    12. 匿名 より:

      昭和はゲンコツしても許された。
      いまは、ゲンコツしたら傷害罪?で逮捕される時代

      だから、時代が違うのよ

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です