規制委はもっと早く審査を 遅れる原発再稼働

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石井 孝明🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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経済・環境ジャーナリスト。慶應義塾大学経済学部卒、時事通信社記者、経済誌フィナンシャルジャパン副編集長、アゴラ研究所の運営するエネルギー問題のサイトGEPRの編集担当を経て、ジャーナリストとエネルギー・経済問題を中心に執筆活動を行う。著書に「京都議定書は実現できるのかーC O2規制社会のゆくえ」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。
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 「行政手続きに12年かかり、いつ結論が出るかわからない」。そんなことを行政機関が行ったら、日本でもどの国でも大問題になる。ところが日本の原子力施設の審査ではそうした状況が続き、原子力発電所が再稼働できない。もちろん遅れには事業者側の問題もあるが、原子力規制を担う、原子力規制委員会、規制庁の活動がおかしいと思う。考える材料として、日本原電の敦賀原子力発電所2号機の審査状況を紹介したい。(元記事はwith ENERGY遅れる原子力再稼働、なぜか-原電敦賀2号審査で考える

◆浮かび上がった原子力規制の問題

敦賀発電所2号機(原子力規制委員会HPから)

 原電敦賀2号機の審査は今年9月まで約2年にわたって中断していたが、その後は淡々と議論と確認が進んでいる。審査が少しずつ進んでいるのは良い状況だと思う。しかし、この審査期間の長さは問題だ。西日本の原発は稼働しているが、北海道、東北、東京、北陸、中部、中国、原電の各電力の発電所は、2011年3月の東京電力福島第一原発事故の直後から停止し、建設中の電源開発大間原発も地震動の審査で建設が止まっている。いずれも停止期間が12年以上、あまりにも長すぎる。

 原子力発電所は大量に発電でき、化石燃料を燃やさないために二酸化炭素を出さない。ところが、この原子力発電所の停止を一因に、2018年ごろから全国で電力不足が発生し、21年から電力料金が上昇している。それは原子力規制の問題が一因と思う。

 東京電力の福島第1原子力発電所の事故の後で、それまでの原子力審査体制が壊され、原子力規制委員会、実施機関としての原子力規制庁が2012年に発足した。そして同年、新規制基準ができ、規制が強化された。そして旧制度で一度運転と建設の認可が出た原発を、新規制基準に基づいて、審査をやり直させている。これは法律上に規定がないのに、当時の田中規制委員長のメモで実行している。

 安全性を高めようという、規制委の取り組みは評価されるべきだ。しかし、それによって審査が遅れて、原子力発電が動かない。特に地質の判定によって審査がどの原発でも遅れがちだ。これは問題だ。

 2012年に作り直された新たな「規制基準」では活断層の上に原子炉を設置することを認めないことが明文化された。ここで言う活断層とは、「将来活動する可能性のある断層等、後期更新世以降(12~13万年前以降)の活動が否定できないもの」としている。そのために、地質、地震動の審査が重要になっている。

 原電の敦賀2号機の審査では、原子炉近くを走る断層(審査ではK断層と呼ばれる)が活断層であるか。またそのK断層が原子炉の下の破砕帯(地質の歪み、地震が起きた可能性がある)と連動しているかが焦点になってきた。

 そもそも新規制基準がおかしい。活断層が事後的に見つかっても工学的な検証を重ねて、防御対策をすればいいだけの話ではないだろうか。実際に米国のディアプロキャニオン原子力発電所(カリフォルニア州)では建設後に活断層が見つかったが、補強工事をして運用している。

 原子力発電所の安全性を確保すること、そして10万年の間にあるかないかの活断層の運動を注目することは大切かもしれない。私はそれと同じように、今の日本の経済・社会を維持するために、安く大量の原子力発電の電力を供給することも大切だと思う。

◆規制委員会、審査再開認めるまでの経緯

 敦賀2号機は一度、行政の認可が出されて建設され、1987年から営業運転を開始し、運営されてきたプラントだ。そして規制委員会の依頼に基づく有識者調査団がやってきて2013年に、この敦賀2号機の下の破砕帯を活断層の可能性があると報告した。この調査団には、反原発を公然と唱える人も入っていた。この判定については、判断の妥当性をめぐり、地質学者や原電の強い批判が出て、審査会合の参考にするという位置付けになっている。

 そして2015年に審査が再開された。ところが、ここで原電がミスをしてしまう。

 敦賀2号機の審査は同社が2015年11月に原子力規制委員会に提出した「原子炉設置変更許可申請」で申請書を説明する審査資料に不備があるとして、2020年10月以降、約2年間中断した。これは東京電力の福島第一原発事故への反省から作り直された新規制基準に適合するための、原子炉設備の変更を申請、判定する手続きだ。

 規制委は今年(23年)4月に、原電に補正書の提出を求め、また文書不備の指導を行い、原電は8月31日に改善策と補正書を出した。規制委は、それを受理し、審査再開を9月6日に認めた。昨年(22年)10月の段階で規制委は意図的な書き換えなどはなかったと判断していたが、審査資料の変更が重なったために、これらを反映することを求めた。

 原電は審査のために、その地質をボーリング調査でとった。ボーリング調査の地層を図示することは、地質調査のために一般的に行われ、その図は「柱状図」(ちゅうじょうず)と呼ばれる。その図はそのままの形で評価者に提出されるが、原電は審査のために柱状図に記載していた肉眼観察に基づく評価結果を、より詳細な顕微鏡観察に基づく評価結果に変更したことが、生データを加工したと受け取られ問題視された。また資料の取り違えの箇所、誤記なども、申請書の中に多数あった。原電は修正が必要とされた約470ページの当初申請を差し替え、再提出分の補正書は1600ページになったという。

 さらに規制委員会も認識などの行き違いがあったことを踏まえ、合意事項と論点を審査会合ごとに文書化するようにした。現在まで、議論はK断層の評価をめぐって議論が進み、原電が提出した資料によって進められ、11月までに審査会合は2回行われている。そして今年12月までに現地調査が予定されている。

◆原電、再発防止に取り組み、資料はより詳細に

 原電は、規制委からの指導を真摯に受け止め、作成する書類の品質強化に取り組んだ。関係会社との協力を深め、社内の査読、チェック体制も、より細かくした。

 さらに補正書で、原電は新たな知見を書き加えた。地層の年代判定の新たな方法を複数取り入れ、K断層を判定した。その結果、「K断層は活動するものではないこと、敦賀2号機の原子炉建屋直下のいずれの破砕帯とも連続しないことを確認した。主張を新資料で強化し、規制委員会にも理解をいただけると思う」(担当者)としている。

 原電は審査書類の記載ミスなどをした。それは問題だし、当然是正をされるべきだ。反省してほしい。

 このように経緯を調べると筆者は工学、地質学には素人だが、審査が本当に安全を調べているのか疑問に思ってしまう。敦賀2号機の審査で問題になったのは、柱状図の書き方の違いとか、データの取り違えなどだ。プラントの安全性の問題ではない。書類の形などの形式に、審査のポイントがずれていないだろうか。

 また原電が提出した補正書は1600ページになったという。規制の手続きと審査が煩雑になり、書類が膨大で、審査が長期になっていることから、そうした間違いを誘発した面があると思う。書類の完成度ではなくプラントの安全性を審査することが重要なのだ。

◆経済低迷を原子力再稼働で解消してほしい

写真はイメージ

 行政庁は申請が到達してから、その申請の処分をするまで通常、要すべき標準的な期間をを定めるように努め、定めた時はそれを公にしなければならない(行政手続法6条)。しかし、敦賀2号機は10年以上も止まっている。このように原子力の稼働が遅れ、その結果、日本全国で電力不足に陥り、電力価格も上昇している。約116万キロワットの発電能力がある原電の敦賀2号機が稼働すれば、電力の需給問題の改善に役立つ。日本原電は早急にこの2号機の運用を始めてほしい。そして規制委は、その審査を速やかに行なってほしい。

 そして原子力規制委員会の誕生以来、多くのエネルギー関係者が要請していることだが、審査で無駄がないかを、規制委員会は検証してほしい。そして審査を速やかに行ってほしい。審査に手を抜け、安全をないがしろにしろとは誰も言っていない。原発再稼働の遅れによって、一つの行政機関が、電力価格の上昇と電力不足という、日本経済の混乱を引き起こしている。 

※元記事は石井孝明氏のサイト「with ENERGY」で公開された「遅れる原子力再稼働、なぜか-原電敦賀2号審査で考える」 タイトルをはじめ、表現を改めた部分があります。

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