武豊騎手に勝機 アルリファーで挑む凱旋門賞

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

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青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。
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 欧州チャンピオン決定戦G1凱旋門賞(芝2400m)が6日、パリロンシャン競馬場で開催される。日本からシンエンペラーが出走し、馬券発売も行われる注目の一戦は鞍上に武豊騎手を配した愛調教馬アルリファーに勝機十分。今回で11回目の挑戦となる武豊騎手の悲願の優勝に期待をかけたい。

◾️出走は16頭か

過去10年のベルリン大賞

 16頭が最終エントリーに名を連ねた凱旋門賞は、混戦ムードである。出てくれば圧倒的な1番人気と思われた英ダービー馬シティオブトロイはG1BCクラシックに向かうため回避。断然の主役不在の状況と言っていい。勝機がある馬が5、6頭いて、その中で状態がいい、馬場状態が合う、騎手が上手く乗ったなど、条件のそろった馬が勝つレースと言えるかもしれない。

 その勝てそうな馬の1頭が武豊騎手騎乗のアルリファー。8月11日のG1ベルリン大賞を制したばかりであるが、ブックメーカーのオッズは単勝9倍(Betvictor)~12倍(CORALほか)で5番手あたりの評価となっている。

 日本のファンにすれば、そもそもアルリファーというのはどの程度強い馬なのか、というのが分かりにくい。まず、考えたいのが前走ベルリン大賞の評価。過去10年の同賞の勝ち馬を並べて分かるのは、勝ちタイム2分30秒29が4番目に相当し、2着につけた着差5馬身は最も大きいという事実である。過去10年で最速だった2015年のセカンドステップは騸馬のため凱旋門賞に出走できず、その後もリステッドレースを3勝しただけ、ビッグレースに行くと全く通用しなかった。時計が速いからといって、必ずしも強いとは限らない例。軽い馬場専用のスピード馬だったのかもしれない。アルリファーもこのパターンかもしれないが、別の角度から見るとセカンドステップとは異なるタイプのように思える。その点は後述する。

 2018年のベストソリューションが2番目のタイムを記録している。同馬はベルリン大賞優勝の後、バーデン大賞、豪コーフィールドカップとG1を3連勝しており、それなりの実力を発揮したことが分かる。3番目のタイムが2021年のアルピニスタで翌年の凱旋門賞を制して繁殖入りしている。速いタイムで勝った馬はそれなりにその後実力を発揮しており、その点からはアルリファーもかなりの実力を持っていると思っていいのかもしれない。

◾️ベルリン大賞の結果を評価

 ベルリン大賞を勝った年に凱旋門賞に出走した馬は3頭おり、最も成績が良かったのが2017年のチンギスシークレットの6着。このチンギスシークレットは凱旋門賞の前に前哨戦のG2フォワ賞を優勝しており、この時にサトノダイヤモンド(4着)、サトノブレス(6着)の2頭の日本馬を負かしている。凱旋門賞6着もそれなりに実力を出したものと考えられる。

写真はイメージ

 このチンギスシークレットよりベルリン大賞で2秒6速いアルリファーなら、上位争いは可能と考えることもできそうである。問題は前述したスピード専門の”軽い”馬かもしれないという点であるが、それは当たらないように思う。英国の中距離戦の大一番G1エクリプスSで、今年のナンバー1ホースと言ってもいいシティオブトロイの1馬身差の2着と健闘しているのは見逃せない。

 また、あまり知られていないが、昨年8月のG2ギヨームドルナノ賞でエースインパクトの4分の3馬身差の2着になっている。エースインパクトは2023年の欧州年度代表馬で、通算6戦6勝、1度も負けることなく凱旋門賞を制して引退、種牡馬入りしたスーパーホース。キャリア6戦のうち、最も後続に迫られたのが、このG2ギヨームドルナノ賞で、凱旋門賞では2着のウエストオーヴァー(愛ダービー馬)に1馬身4分の3差をつけている。G1仏ダービーも後にG1クイーンエリザベス2世Sを勝つビッグロックに3馬身半差をつける圧勝だった。

 つまり、アルリファーはエースインパクトに最も脅威を与えた存在であり、シティオブトロイとも差のない競馬をしていることから、自身は年度代表馬級ではないが、それに迫るだけの力を持った一流馬というのが「どれくらい強い馬なのか」の答えであり、スピード専門の”軽い”馬などではないと考えられる。

◾️武豊騎手も「チャンス」

 今年は3歳馬が上位人気を占めているが、肝心のシティオブトロイは不参加。仏ダービー馬ルックドゥヴェガと、そのルックドゥヴェガを前哨戦のG2ニエル賞で破ったソジー(仏ダービー3着)が上位人気を占めるが、仏ダービー組はそれほど強いとも思えない。4着のゴーストライターがG1愛チャンピオンSで5着と完敗したことは見逃せない。また、3歳勢は愛ダービー馬ロサンゼルスも愛チャンピオンSで4着と敗れており、同レースを勝ったエコノミクスは参戦しない。それなら同レースで不利を受けながら3着に入った、日本から行くシンエンペラーで勝負になるというのは、誰しもが思うことであろう。

 G1ヴェルメイユ賞を制したブルーストッキングが12万ユーロ(約1920万円)の追加登録料を支払って参戦してくるのも、そうした相手関係を考えて、元は取れるだろうと考えたのではないか。

 このようなメンバー構成であれば、アルリファーで十分に勝負になると考えている。武豊騎手自身も「もちろんチャンスがあると思っています。日本馬の初優勝を邪魔してしまうことになるのかもしれませんが、10年後、80周年の記念式典のときに凱旋門賞を勝った映像が流れるように頑張ってきます。」(公式サイトTake a Chance!・凱旋門賞ウィーク)とコメントを発表している。大言壮語を言うタイプでないだけに、これは素直に受け取った方がいいと思う。

◾️ファンタスティックムーンも侮れず

凱旋門賞が行われるパリロンシャン競馬場(TIS提供)

 相手関係は難しいが、シンエンペラーも勝ち負けになると思うが、海外の大一番では消化不良のレースが多い坂井騎手だけに信頼は置けない。それなら昨年のG1独ダービー馬で、昨年の前哨戦のG2ニエル賞優勝、凱旋門賞11着のファンタスティックムーンの方が面白い。9月1日のG1バーデン大賞を勝っての参戦とローテーションも理想的。

 ブルーストッキングも有力な1頭で、初距離に不安を残すもG1を3連勝中のマルキーズドゥセヴィニエの勢いも見逃せない。ソジーも前哨戦優勝の実績から注意は必要であるが、ルックドゥヴェガは逃げて3着のニエル賞の内容が印象が悪く、人気ほどは評価できず、ギリギリ連下候補という感じか。

 アルリファーを中心として、上記の馬が圏内に入ってくるように思う。

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