ディープ産駒 愛オークス8.5馬身差の圧勝

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松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

松田 隆🇯🇵 @東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

 ディープインパクト産駒のスノーフォール(牝3、愛A.オブライエン厩舎)が17日のG1愛オークス(芝12ハロン、カラ競馬場)で2着に8馬身1/2差をつけて圧勝した。日本産馬として初のアイルランドのクラシック制覇を達成し、英愛オークス優勝を果たした。

■4、5番手追走から直線独走

直線で抜け出すスノーフォール(Racing TV画面から)

 スノーフォールは、この日は同厩舎でペースメーカー役を果たすラジョコンダを前に見ながら内ラチ沿いをパーティーハウスと並ぶ4、5番手を追走する。直線を向いて残り400m過ぎに先頭に立つと、その後は徐々に後続を離し、最後は2着に8馬身1/2差をつける圧勝で断然の1番人気に応えた。

 勝ちタイムは2分34秒36。2着に英オークス3着のディヴァインリーが入り、A.オブライエン厩舎が1、2着を独占した。

 英オークスで16馬身差のレース史上最大の着差をつけて勝ったのに続く圧勝で、2017年のエネイブル以来4年ぶり15頭目の英愛オークス制覇を達成。現地報道では1905年のブレイクスタウンという馬が2着に10馬身差をつけて優勝しており、それに比肩する形で報じられている。日本産馬、ディープインパクト産駒の優秀さをあらためてアピールする形になった。

 この日はR.ムーア騎手が騎乗。英オークスでは単勝1番人気のサンタバーバラ(5着)をチョイスしたが、手放したスノーフォールがL.デットーリ騎手とのコンビで歴史的な圧勝劇を演じるのを20馬身以上後方で見る屈辱を味わった。自らの手に戻ったレースで負けるわけにはいかない一戦だったと言えよう。

■追加登録払っても凱旋門賞へ

 通算成績は10戦4勝、過去の3勝は全て稍重馬場でのものだったが、良馬場のクラシックも圧勝したことで、晴雨兼用の性能を証明したと言っていい。英レーシングポストによると、A.オブライエン調教師は「信じられない配合の、信じられない牝馬」と称え、「速い(時計の出る)馬場こそが得意だと思っていた」と話した(Racing Post:Sublime Snowfall records biggest winning margin in Irish Oaks for over 100 years)。

 この勝利で英国の各ブックメーカーは10月6日のG1凱旋門賞(パリロンシャン、芝2400m)のオッズを4~6倍とし、概ね、1番人気としている。これに続くのが同厩舎の昨年の英オークス馬ラブの5~6.5倍、今年の仏二冠+G1エクリプスSを制したセイントマークスバシリカの6~9倍、G1愛ダービー+G1パリ大賞を勝ったハリケーンレーンの7~11倍といったところ。

 もっともスノーフォールは凱旋門賞の1次登録を行っておらず、出走のためには追加登録料12万ユーロ(約1560万円)が必要になる。陣営では追加登録を支払っても出走させる意向と伝えられている。(そもそも1次登録をしておけば)と思われるが、締め切りが5月12日午前で、その段階でスノーフォールは1勝馬でしかなかった。同日午後にG3ムシドラS(ヨーク、芝10ハロン56ヤード)を制し、重賞初制覇を達成するという何とも皮肉な結果で、レースが1日早ければ、1次登録していたかもしれない。

■8/19ヨークシャーオークスから凱旋門賞

写真はイメージ

 注目されるのは今後のローテーションだが、A.オブライエン調教師は8月19日のG1ヨークシャーオークス(ヨーク、芝11ハロン188ヤード)への参戦を明らかにしている。ここをステップに凱旋門賞に挑むのは2017年のエネイブルと同じ。

 ただ、エネイブルの場合は、英愛オークスを制した14日後にG1KジョージⅥ世&QエリザベスSに出走、そこからヨークシャーオークスー凱旋門賞と進んでおり、それに比べると余裕のあるローテーションと言える。エネイブルの場合、愛オークス優勝時点でキャリアは5戦しかなかったこと(スノーフォールは既に10戦)から、陣営では(キングジョージを使っても大丈夫)という考えがあったのかもしれない。

 また、スノーフォールの場合はキングジョージに同厩舎のラブが出走するという事情もあるから、無理に行く必要はない。面白いのは英オークスを16馬身差で圧勝した時にL.デットーリ騎手が陣営に「古馬と早めに対戦させることを恐るべきではない」と語ったとされることである(Racing Post:‘Like a hot knife through butter’ – Snowfall routs Oaks field by 16 lengths)。

 この発言は具体的には「愛オークスより、キングジョージに行きましょう」という意味も含んでいると考えるのが普通であろう。もし、キングジョージに行けば、R.ムーア騎手にはラブというお手馬がいるから、デットーリ騎手にすれば(もう一度、自分が乗れる)という思惑、計算があったのかもしれない。それぐらい、デットーリ騎手もこの馬を評価しているということと考えられる。

■セイントマークスバシリカが最大の敵か

 今年の凱旋門賞は多士済々で、一筋縄ではいきそうにない。特にセイントマークスバシリカは勝ったエクリプスSでは昨年のG1英チャンピオンSを勝ったアデイブ、仏ダービー馬で、今年サウジカップとG1ドバイシーマクラシックを連勝したミシュリフに3馬身以上の差をつけて勝っており、相当強い。7月8日のワールドベストレースホースランキングではレーティング127で単独1位にランクされている(ミシュリフは122で4位タイ)。

 スノーフォールの愛オークスも強い内容ではあったが、2着が既に英オークスで負かした相手で、メンバーは強くない。通常の年の凱旋門賞より日本人には興味深いものになるのは間違いないが、凱旋門賞も楽勝などと考えるのは早計というもの。そこは冷静に相手関係を見極めるべきであろう。

"ディープ産駒 愛オークス8.5馬身差の圧勝"に1件のコメントがあります。

  1. アツシ より:

    松田様

    正直、日本馬が凱旋門賞勝利するのは余程のことが無い限り「目の黒い内」での事はないと断言しますよ。
    日本産まれの外国産馬が欧州のビッグレースに勝って何故?って言われるかもしれませんが、その辺は松田様でも重々承知であると思いたいです。

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