生徒を見せもの”モリテツ”に受験生の怒り

The following two tabs change content below.

• この記事を書いた人
• 最新の記事

松田 隆🇯🇵　＠東京 Tokyo🇯🇵

青山学院大学大学院法務研究科卒業。1985年から2014年まで日刊スポーツ新聞社に勤務。退職後にフリーランスのジャーナリストとして活動を開始。

最新記事 by 松田 隆🇯🇵　＠東京 Tokyo🇯🇵 (全て見る)

• 少子化対策の基本に還れ 保険適用化で医大教授発言 - 2024年12月16日
• マスメディア沈黙の事情 分娩費用の保険適用化 - 2024年12月15日
• 生徒を見せもの”モリテツ”に受験生の怒り - 2024年12月14日

　人気の英語講師のモリテツ（森田鉄也氏）が生徒を見せもののようにして動画配信している問題で、かつて同氏のプロジェクトに参加していた受験生が非難の声をあげた。当該生徒Ｘ君を再生数稼ぎの道具のように利用しており、年長者として、自分から動画に出演させるのをやめるべきなどの考えを当サイトに語った。

◾️取材を無視した森田氏

左が森田氏、右はＸ君（同氏動画画面から）

　現在、短大休学中とされるＸ君は森田氏や、同じ人気講師の松原一樹氏の動画に頻繁に登場する。過去の言動から虚言癖があると見られ、学力もコミュニケーション能力も通常人より劣る印象。何らかの障害を抱えているようにも見える。

　もともとは2021年12月にYouTube上で公開されている番組「受験生版令和の虎（Tiger Funding）」に志願者として登場。その後は医学部を目指して勉強を続けているとされるが英検３級に２度不合格となり、４級の合格も覚束ない状況で難関の医学部合格は不可能と言っていい。それなのに森田氏らはＸ君を動画に登場させ、明らかにされる学力の低さ、コミュニケーション能力の乏しさなどを見せものとするに等しい状況が継続している。

　当サイトではそうした状況はＸ君の今後の人生に決定的な不利益（デジタルタトゥーなど）を及ぼし、さらに障害・疾病を持つ人、それと疑われるような状態にある人への差別と偏見を助長しかねないとして批判した（参照・教育系YouTuber松原•モリテツ氏 生徒”見せもの”、生徒”見せもの”批判に松原氏「本人が公開希望」）。

　森田氏は取材に応じず、松原氏は本人（Ｘ君）が公開を望んでいるとの理由から自らの行為を正当化。両者はその後もＸ君を動画で使い続けている。

◾️森田氏主催プロジェクトに参加の受験生

　Ｘ君にとって好ましくない状態が続く中、かつて森田氏が主催する大学受験プロジェクトに参加し、松原氏、Ｘ君とも接点を持った現役の受験生・大久保友博氏（27）が今回、この問題に関して貴重な証言を寄せてくれた。同氏は早稲田大学政治経済学部を中退し、現在、家庭教師を続けながら東京大学文科Ⅲ類を目指している。

　2024年４月に行われた大学受験プロジェクトのオーディションに参加、その紹介動画では最前列に座って森田氏の話に聞き入っている姿が確認できる（Morite2 English Channel・大学受験プロジェクト第３期オーディション【東大志望・アイドルなど濃いメンツが登場】）。森田氏の指導を受けながら、松原氏ともオンライン上でやり取りをするようになった。

　また、６月29、30日に岡山県の無人島で開催された合宿に参加、そこでＸ君とも出会っている。その合宿でＸ君と小さなトラブルがあり、その処理をめぐって森田氏に強い不信感を抱くようになり、７月11日にプロジェクトを脱退した。その経緯は後日紹介する機会があればするとして、どのような形でＸ君の撮影が行われているのか、当事者はどのような意識で行っているのか、そもそも彼らはどのような人物なのかを聞き、問題の本質に迫ることとした。

◾️森田氏は”Ｘ君教えてない”

 ーー大久保さんは６月の合宿でＸ君と初めて会ったようですが、あまり会話が噛み合わなかったと聞きました

大久保：彼の印象はそんな感じです。（口喧嘩になり）僕も感情的になってしまって悪かったのですが、彼とは会話がうまく噛み合わない印象がありました。

ーー質問を理解できていない感じですか

大久保：話していて平行線という感じです。質問を理解していないというか、僕の投げかけた質問には何も答えずに自分の主張をしてくる。噛み合わない。合宿中に彼と話した中では、結構、そういうことがありました。

ーー森田氏と実際に接してみて、どんな印象を持ちましたか

大久保友博氏（撮影・松田隆）

大久保：根暗と言うと悪いですが、オーラが暗いと言いますか。Ｘ君とのことは、一貫して『Ｘ君は（自分の）生徒じゃない』、自分は教えてないというポジションに立ちます。僕だったり、大学受験プロジェクトのメンバーだったりに対して、一貫して自分は（Ｘ君に）教えていないという立場です。成績が悪くても『俺、教えてないから』『動画で使っているだけだから』と。

　３年近く動画に出演させながら、自分は指導を担当していないという言い分には無理があるように思うが、その点は話を聞く限り徹底しているようである。大久保氏の話は続く。

大久保：それだけならいいんですけど、松原さんの下で（実際にＸ君を）教えている河井先生という、僕もお世話になった先生がいらっしゃって、（森田氏は）『河井先生が教えてる』と、（批判の矛先を）自分でない方向へ向けます。そうした責任を取らないところ、僕がプロジェクトを脱退した時もそうだったのですが、一貫して、自分が不利になることはしません。Ｘ君も森田さんが英語を指導を担当したということになったら結果が出ないことになりかねません。そうしたことから視聴者、受験生参加型の企画を取り扱う器じゃないなと、企画に出演した３か月の中であの二人と話してみてずっと感じていましたし、森田さんについていくという判断が誤っていたなと思うところもありました。そもそも人の目を見て話せない人ですし。

　大久保氏は自身のチャンネルで森田氏に関して「善悪の基準がずれている」と語っている（Ｘ君の名前等が推測されるためリンクは示さない）。この点はＸ君とのトラブルに端を発した問題に関することで語っているが、森田氏に対する評価としては興味深い部分である。

ーー森田氏に対して「善悪の基準がずれている」と、ご自身の番組内で語っていますね

大久保：それは人としてアカンだろ、ということを平気でやってくるタイプですから。

ーーＸ君に対しても悪いことをしているという意識はないのでしょう

大久保：そうですね。自分のチャンネルの再生数を考え、（彼は）収入に寄与するみたいな。

ーー当サイトでは森田氏や松原氏がＸ君を見せものにしていると批判した記事を公開しましたが、その点についてどう考えますか

大久保：大前提として大学受験プロジェクトを始めとする森田さんの主催する企画に参加するのは全て自己責任です。僕もデジタルタトゥーのようなものが残っていますが、森田さんや松原さんについていくという判断が間違っていた、その意味で自己責任だと思っています。今、Ｘ君は引くに引けないところに追い込まれている部分はあるように感じますが、動画に出続けている選択をしているのはＸ君なので自己責任だと思っています。ですから、森田さんのやっていることは道徳的には少しおかしいですけど、YOUTUBERとしてはギリギリ許容範囲内かなとは思います。ただ、森田さんも松原さんもＸ君のいないところ（他の動画など）でＸ君の名前を出したり、サムネにＸ君を置いたり、結構やるんです。それは陰湿ないじめでしょう。表現は悪いですが、あの２人、Ｘ君に関してコミュニケーションがちょっと性格の悪い中学生の陰口レベルで止まっています。そこは『違うだろ』と思います。そういうことはやめるべきだし、教育者以前に人間としてダメだと思います。

ーー大久保さんは今、27歳ですが、その年齢の男性から見ても、何で中学生みたいなことしてるんだという感じですか

大久保：それは思います。（２人が）Ｘ君とコミュニケーションをとっているところを直接見ても、動画を観ても、性格の悪い中学生の悪口レベルと感じます。自分としてはＸ君が動画に出ている部分、単体を見ればＸ君の自己責任ですが、Ｘ君がいないところで意味のない形で取り上げたり、再生回数のダシにしたりっていうのは明らかにやっているので、それについてはやめた方がいいと思います。

◾️Ｘ君と自己責任

　大久保氏の言い分はもっともと思える部分はある。そして出演するからには自己責任という考え方も一般には理解できる考えであろう。しかし、それは出演することによってどのようなリスクを負うことになるか、そのようなリスクと期待されるゲインを比較衡量した上で出演を決めることができる人にのみ言うべきことと思われる。

　そうしたリスクを理解しないまま、笑顔で近付いてくる大人に無条件でついていってしまうような人を出演させ、その後の人生に決定的な不利益を及ぼすことになりかねない状況に陥らせるのは、まさに生徒を見せものにして利益を得る非道徳的な行為。その点の認識を聞いた。

ーーＸ君の自己責任と言いますが、彼は出演することでデジタルタトゥーが残って不利を受けるということが理解できていると思いますか

大久保：これは僕の見立てですが、理解した上で引くに引けない状態になってしまっているんじゃないかと。本当はNOと言いたいと思います。NOと言いたいのにそれができない。最近の森田さんの動画でＸ君が舌打ちをしました。僕にはその気持ちが分かります。森田さんはデリカシーがない方で、僕も企画に参加していた３か月の中でイラッとしたことは何度かありました。だから、Ｘ君もそろそろ限界なんじゃないかなと。本来なら年長者として、30代後半（森田氏）、40代（松原氏）の人が『ここで終わらせよう』と言うべきなのでしょうが、そこが教育者としてどうなのか、という話になります。

ーーＸ君も引くに引けず、可哀想な部分があるのでしょうか

大久保：大いにあると思います。舌打ちしたという動画の概要を聞いた時は、本当に痛いほど気持ちが分かりました。よくキレなかったな、と。

◾️Ｘ君にかける言葉

大久保友博氏（撮影・松田隆）

　最後に今、３人に対してどのような言葉をかけたいかを聞いた。 

ーー森田氏、松原氏には何と言いたいですか

大久保：正直、関わりたくない、ノーコメントとしたいです。声をかけるとしたら『もう二度とかかわりたくない』でしょうか。

ーーＸ君にはどうでしょう

大久保：合宿でトラブルになった時は僕が不適切な対応だったので、自分の動画でも言ってますが、あらためて申し訳なかったと思います。（番組出演については）『取り返しのつかない状態になる前にちゃんとNOって言った方がいいんじゃないか』と言いたいです。最近の動画の振る舞いを見ていると、もう我慢の限界なのかなと思うことがありますので。僕は限界が来る前にやめていますから。